政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.35 欧州の金融危機の構造と"赤壁の戦い"――腹を決めた円高対策を

2011年10月29日

超円高が続き、10月27日も75円台、戦後最高値を次々と更新している。大企業・中小企業を回ると悲鳴が聞こえる。TPP論議が盛んだが、現場で今、大きな影響を与えているのは、この円高だ。原因は明らか。一つはギリシャ危機・欧州の金融不安・財政危機、第2に米国の景気低迷、第3に日本がボーッとしていて手が打たれない。各国が巧みに通貨切り下げ策をしているなかで、断固たる姿勢がなく標的になっていることだ。

ことは構造的なものであるだけに、本格的に腰をすえた対応が大切となる。

リーマン・ショックから3年――。今、国際金融危機の第2幕に突入した、非常事態という腹を決めた覚悟が不可欠だ。その都度の事態に一喜一憂している局面ではないが、どうも政府は"仕方がない"症候群にかかっているようで、動きがにぶい。

EUは今どうなっているか。26日のEU27カ国の首脳会議での焦点は2つ。1つはギリシャ国債の借金の棒引きをどこまでやるか。第2は、欧州銀行の資本増強をいかにしてやるか、資本注入や欧州金融安定基金(EFSF)の仕組みをどうつくるかだ。

第1の点は、日本時間の27日午前、50%棒引きが合意された。第2の点は、ドイツなど各国がどう原資を出すかだが、思惑がバラバラで難航している。ドイツの踏み込み如何が注目されるところだが、サルコジ仏大統領とキャメロン英首相が怒鳴り合いをしたという報道もあるとおりで、深刻だ。

EUは27カ国、そのうち17カ国がユーロで統一。そもそも経済統合は善という思想からEUは出発しているが、ギリシャ危機、南欧などのPIIGS(ピーグス=ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の危機で、市場にはベルギー、フランスまでも疑心暗鬼が漂っている。ユーロで統一して金融はやる。しかし一方で財政は各国に任せる。この構造的な問題で、身動きがとれなくなっている。例えばアイルランド経済が過熱した時、金利を上げたくても統一しているので上げられなかったなど、金融政策が機能していない。

 私は三国志の赤壁(レッドクリフ)の戦いで、曹操軍が船同士を鎖でつなげる"連環の計"をとったために、船の切り離しができず孔明の火計に次々炎上したことを想起してしまう。このように通貨ユーロに内在する各国の不均衡問題という構造的要因があり、それが解決しない以上、その都度、対応をしても、構造的に打ち続くことが考えられる。ユーロをやめるという選択がない以上、金融と財政を統一しようという動きがあるが、加盟17ヶ国と非加盟10か国の足並みは簡単ではない。

米国と中国の状況は常に注視していかなければならないが、世界各国の動向をよく見ての対応を考えなければならない。

そこで日本だが、対岸の火事ではない。他国にはないデフレ・円高・不況のうえに東日本大震災の国難に直面し、財政もきわめて悪い。とくにこのなかでの超円高は深刻だ。円高が収まらないため、当局はいろいろ口先介入をしてきたが、効き目なし。政府・日銀は追加金融緩和策を腹を決めて、やれるかどうか。本当に正念場に差し掛かっている。シャビーな対応ではなく、危機感を持って断固たる姿勢を見せよと言いたい。日銀は27日、「資産買入等の基金」を5兆円増額し、55兆円にすること、追加の5兆円は全額長期国債の購入に充てることを追加金融策として決めた。タイミングはいいが、5兆円ではあまりにも力不足と言わざるをえない。

民主党政権はこの2年。経済・景気に目を向けず、デフレを加速する逆噴射政策を続けてきた。短期、中長期をにらんでの本格的経済・財政・金融政策の確たる筋道なくして日本の建て直しはできない。

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