政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.36 選挙制度の抜本改革が重要! 露呈した二大政党制の限界

2011年11月 8日

最近、政治の劣化、政治家の劣化がよく指摘される。「政策通だと自慢してテクノクラートのような態度を取る。まさに政治家の官僚化現象だ。今、必要なのは、政策通よりも『政治通』である」(ジェラルド・カーティス氏)という指摘もあれば、「ひ弱で人間力がない」「リスクを負ってもやり抜く胆力がない」という声もある。「信なくば立たず」「教養人(君子)であれ、知識人(小人)にはなるな」――外交も経済も大震災も、大変な国難に直面している今、日本政治の正念場だ。

政治や政治家の劣化を阻み、いい政治家を生み出すために何が必要か。その一つが今、再び焦点となっている選挙制度改革だ。現在、選挙制度改革の機運が高まっているには、二つの理由がある。一つは、「一票の格差是正」だ。最高裁は今年三月、「一票の格差」が最大2.30倍となった2009年の衆院選について、「違憲状態」の判断を下した。参院でも、昨年の参院選について、各地の高裁で「違憲」もしくは「違憲状態」の判決が相次いでいる。投票価値の平等は、最重要のことだ。

もう一つは、現行の衆院小選挙区比例代表並立制は、5回の選挙でその限界が露呈しているということだ。選挙制度の最も大事な民意の反映が不十分で、制度疲労がハッキリしてきた。最近の日本の国政選挙に顕著なのは、民意が政策というより感性で大きく動き、選挙制度によって得票差以上に議席の差が拡大する(2009年衆院選小選挙区では民主党が47%の得票で74%の議席を獲得)こともあいまって、極端なスイング(振れ)を生む。政治家が資質を高めたり、鍛えられない人気取りの傾向が加速し、結果として政治の安定を損なっているということだ。つまり政治と政治家の劣化である。

衆院においては、1994年、「改革」か「守旧」か、などというバトルの果てに、それまでの中選挙区制を変え、小選挙区比例代表並立制が成立した。

当時、中選挙区では、「過剰なサービス合戦に陥る」「政党、政策本位の選挙にならない」「自民党の派閥同士の激しい骨肉の争いとなる」「政権交代がない」などということが主な理由であった。さらに、その根底には「アメリカやイギリスがもつ二大政党制こそがデモクラシーの王道である」「比例代表制の選挙は多党制となり、連立政権は不安定なものだ」という考えがあった。

しかし、それ以来5回の選挙をみると、「政党・政策本位の選挙とはなっていない(逆に政策論争よりも政権選択ゲームと化すと指摘する学者もいる)」「政治とカネの問題は相変わらず続き、選挙制度とは別次元の問題」「選挙制度によって人為的につくる二大政党制は、政争主義や対決至上主義を生み出し、限界を露呈している」「連立政権はむしろ政治を安定させる」「政権交代は、人為的に行わなくとも、起きるべき時には起きる」などが明らかになった。勿論、時代・社会の価値観の多様化や「日本人は黒か白かの二項対立にはなじまない」という、日本人の意識構造も常に指摘されるところだ。

現実に、政党は首尾一貫した綱領や政策に支えられるのではなく、政権政党への批判を軸に政策が組み立てられたり、世論調査に振り回され、人気取りに走る傾向が出ていることは否めない。そうなったら政党や政治家は軸とか芯を失いがちになる。劣化である。

選挙制度の基本はあくまで民意の反映だ。今、選挙制度の抜本改革が大事だし、政治全体の改革が求められている。

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