政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.50 際限なき大増税路線はダメ まず経済成長、そして財政規律意識を

2012年7月23日

「社会保障と税の一体改革」は、日本の少子高齢化の中で、持続可能で安心できる社会保障を確立するという目標があるが、その背景には国家予算の半分を赤字国債で賄っているという財政構造の改善という課題がある。累積した国債等は、内容的には指摘すべきところが多くあるにせよ、GDPの2倍に及ぼうとしている。しかし、民主党政権になって、この財政規律に対する姿勢がきわめて緩く、今回の論議でもその詰めの甘さが目立つ。

安住財務大臣は、20日の参院特別委員会で、2020年までにプライマリー・バランスの黒字化をするという政府目標のためには、「足りないところは税負担をどういう形でお願いするか、示さないといけない時期がくる」と再増税は不可避だと言った。現在、10%消費税論議がされている最中での発言だ。従来の国会論議では、大問題となるところだ。これでは増税先行どころか、足りなければ増税、増税という締りのない際限なき大増税路線になる。歯止めをかけなければならない。今こそ「経済成長による歳入増戦略」と「歳出面にメスを入れての財政健全化計画」をはっきり示すべき時ではないか。

民主党政権は景気・経済には無関心とも思える経済無策、円高・デフレの放置、アンチ企業ともいうべき産業支援の欠如を繰り返してきた。金融政策も後手・後手で、世界から円が標的にされてきた。そうした無策ぶりは、財政規律という点でも全く同様のありさまだ。

この10年間の各年度の当初予算の一般会計予算を見てみよう。15年度81.7兆円、16年度82.1兆円、17年度82.1兆円、18年度79.6兆円、19年度82.9兆円、20年度83.0兆円、そしてリーマン・ショックのあった翌年の21年度当初予算が景気対策を入れて88.5兆円。それが民主党政権になって22年度92.2兆円、23年度92.4兆円、24年度90.3兆円(粉飾の交付国債を加えると92.9兆円)だ。平均すると民主党政権はそれまでに比べて約11兆円増の水ぶくれ予算。国債費3兆円増を除いたとしても8兆円増の水ぶくれ予算だ。消費税3%分に当たるのだ。

しかも、予算は3年連続で赤字国債が税収を上回った。こんなことはこれまで全くなかったことだが、それが平然と続けられている。小泉内閣時代には赤字国債を30兆円を超えないように努力し、安倍内閣時代には26兆円まで押えた。社会保障が毎年1兆円の自然増となり、毎年、せめて2200憶円は削るという努力をした。批判を浴びたが、財政構造改革、財政規律には心を注ぎ続けた。そのことは、プライマリー・バランスのGDP比を見ても、2007年度は▲1.8%まで来たことに明らかだ。しかし、2011年度は▲6.3%と大きく悪化してしまった。リーマン・ショックへの対応というより、手当などのバラマキ予算と財政規律意識の欠如によるものだと思う。

「増税先行によって、財政再建が果たされた国はない」といわれる。経済成長の波があってはじめて、財政再建の道に入ることができる。経済成長がまず大事だ。そして常に財政の規律、歳出の抑制・削減への取り組みが意識されること、厳しい財政状況であればこそ、成長につながる財政出動をより緻密に工夫しなければならない。当然のことである。

経済成長戦略は無策、歳出の抑制・削減への取り組みは不十分――。こうした民主党政権の行なった経済・財政運営は普天間と同じく取り返しのつかない失政というほかない。

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