政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.58 今年はメンテナンス元年  「命を守る公共事業」こそ重要

2013年4月27日

3.11東日本大震災から2年余―。日本が"脆弱国土"であることを深く認識したはずだが、私から見て、まだまだその危機感が薄いように思われてならない。

社会インフラを考えた場合、大きな危機は2つある。

1つは、首都直下、南海トラフの巨大地震が切迫していること。そして、豪雪や集中豪雨の被害が最近特に目立つようになったことだ。

2つ目には、高度成長期に急速に整備されたインフラが今後、老朽化していくこと、経年劣化していくことだ。

"脆弱国土"ということに関して言えば、日本の高速道路において橋やトンネルの構造物が占める割合は24.6%。アメリカの7%、フランスの2.6%と比べると圧倒的に高い。よく日本の公共事業費が他国に比べて高いことが指摘されるが、地震がある国とない国とでは全く違うし、山の多い国と平野の国、海岸線が長い国と内陸の国とでは、かかる費用が全く違う。

"脆弱国土"である日本のインフラは、災害に備えた構造を持たせなければならないし、維持管理にも手間をかけていかなければならないことは明らかだ。

また、老朽化対策に関して言えば、道路の橋は全国に約70万橋あるが、1965年~80年が建設のピーク。橋の年間の建設数は、今は1000程度だが、ピーク時には毎年1万もの橋が建設されていた。建設後50年を超える橋の割合を見ても、現在は16%だが20年後には約65%になり、これからメンテナンスのピークの山を迎えることになる。

この山を乗り越えていくためには、点検や修繕を効率的に行い、長寿命化を図りながら、ピークを平準化していかなければならない。点検から修繕に至る工程の中で、技術革新を図り、かかる費用を押さえ込むことが重要だ。

このような危機を克服していくために、いま、公共事業に求められるものは、「命を守る公共事業」であり、防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化ということだ。

我が国の公共事業は、昭和30年頃からは産業基盤の整備に力を注いだと言ってよい。そして、昭和50年頃からは住宅、下水道や公園などの生活関連基盤の整備に重点を置いていた。

しかし今、防災・減災、老朽化対策という新たな角度が必要になる。インフラのメンテナンスの重要性に初めて焦点を当てることになる。我が国の公共事業は今、新たな第3のステージへの転換点に立っているのだ。その意味で、私はまさに今年を、家田仁東大教授が指摘しているように「メンテナンス元年」と称したい。

そしてさらに、このメンテナンスを防御的なものに終えてはならないと思う。徹底的に、防災・減災、老朽化対策を技術的にも磨きあげることが大切だ。

土木工学は「シビルエンジニアリング」という。しかし、今後のことを考えると、私は、従来の土木工学にとどまらない、「メンテナンス・エンジニアリング」とも言うべき技術工学を、この国の先進技術として構築したい。この"脆弱国土"に手を加え、よくぞここまでと言われるほど、安心で快適な魅力あふれる都市をつくりあげたいものだ。その時は、この世界一優れた技術を海外に輸出することも可能となる。公共事業のステージは今、全く変わっている。

facebook

Twitter

Youtube

トップへ戻る