政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.61 若者の暮らしに変化(国土交通白書から) / 「郊外から都心へ、持ち家から賃貸へ」の動き

2013年7月25日

「逃げる中高年 欲望のない若者たち」とは、村上龍氏の指摘だ。若者の意欲や雇用という問題は、日本の今、そして未来を眺望する上でも最重要の課題である。

私の管轄する建設業関係でも、若者が入職してこない、技術者が育たない、高齢化が進んでいる、ということが深刻になっている。大学の土木学科や工業高校が減っている上に、卒業生が建設業界に就職しない。これは、産業の将来を脅かしかねない構造的問題だ。

今年3月に、16年ぶりに公共工事の労務単価を引き上げたところだが、私はその際、業界団体のトップに対し、単に職人さんの賃金の引き上げということにとどまらず、若者の雇用や保険加入という勤務環境の改善も促進してほしいと直接強く訴えたところだ。将来にわたる構造的な問題に対策を打っていくためには、若者の考えや行動を分析していくことが有効となる。

7月2日に24年度の国土交通白書を公表した。今年のテーマは、「若者の暮らしと国土交通行政」――。今後社会の中核を担っていく存在である今の若者の暮らしを分析することにより、将来を見据えて国土交通行政が取り組むべき方向性を論述したものだ。

ここで明らかになったことはいくつもあるが、「最近の若者は内向きだ」というような単なる抽象的な指摘にとどまらず、突っ込んだ分析を行って、将来について踏み込んだ考察を加えている。

まず「住まい方」について。地方圏でも都市圏でも、現在の若者は以前の若者と比較して、まちの中心部や鉄道駅近くに居住する傾向が高まっている。郊外で住むのではなくなってきている。このため、今後の都市政策の方向性としては、コンパクトシティの形成を促進することが必要だし、都市の内外の構造が変わるということだ。

住宅取得については、若者の持ち家率が減少傾向にある。郊外などでの30代の一次取得が減るということは、従来からの住宅取得サイクルが構造的に変わるということだ。また、若者の多くが住む民間賃貸住宅に対して不満を持つ者の割合が高いなど、若者が望む居住形態を実現できていない可能性がある。このため、良質な公的・民間賃貸住宅の供給支援が一層必要だ。

次に「動き方」について。若者の旅行回数は、国内旅行・海外旅行ともに減少傾向にある。余暇や趣味にかけるお金が不足していることや、他の趣味と比較して旅行の優先順位が落ちていることが原因だ。同様に若者の「車離れ」が進んでいるが、通勤や通学に自転車を利用する者の割合が増えているといった移動手段の変化が調査で明らかになっている。観光振興でも、車やインフラの対応でも、こうした状況変化を踏まえた新しい若者活性化のまちづくりが必要となる。

今の若者は、生まれてからずっとデフレの中で生活してきたので、経済が右肩上がりで成長していく時代を知らない。将来を担う若者が心の中までデフレになって、「諦め」と「しょうがない」症候群に陥ってはならない。若者が誇りと前向きな意欲をもって働き、住み、行動する――そのような国土づくり、まちづくりを実現できるよう、先手を打っていかなければならないと思っている。

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