政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.68 「現場力こそが日本の底力」 / 若い技能労働者を育てよう

2014年3月 5日

「現場力」「現場の強さ」――これが日本の底力だと思う。

ところが、様々な分野で、専門技術を持って現場で働く技能労働者の不足が問題になっている。例えば建設業の技能労働者――。いわゆる職人は、平成9年のピーク時には約445万人だったが平成24年には約335万人。15年間で110万人も減少した。しかも工業高校や工業系の専門学校が減り、建設業に就職する若者が減り続けている。29歳以下の職人の割合は約1割までに低下し、職人の高齢化が著しく進行している。このまま現在働いている高齢の職人が引退してしまえば、インフラの整備や維持管理、災害対応に支障が生じかねない。さらに他の職種でも、電気や機械などものづくりの現場、介護・看護・医療の現場、農林水産業の現場など様々な現場で、技能労働者不足が言われている。

その要因はいくつかある。第一に高齢化の進行。少子高齢化・生産年齢人口減少の影響で、建設業以外でも、技能労働者全般に高齢化が進行している。第二に処遇の悪化。過酷な勤務環境に加えて、長引くデフレの影響で賃金が下がり、以前に比べて処遇がかなり悪化している。そして第三には、仕事に対する誇りと自信が失われかけていること。以前は、「手に職を持っている」「腕がいい」といえば、皆があこがれる良いイメージだったが、今では金融やIT、サービス業などソフトな仕事の方が人気。現場で身体を使って働く仕事のイメージは悪くなっている。

このような要因を克服して建設業の職人を確保していくため、私は昨年からいろいろと手を打ってきた。技能の習得にはある程度時間が要る。中長期的な視点に立って早く対策を打たなければ手遅れになる。

まず、賃金の引き上げ。公共工事の労務単価を昨年4月と今年2月の2度にわたり、全国平均で合計約23%引き上げた。16年振りの大幅な引き上げで、業界からは大変喜ばれている。これを現場の職人の実際の賃金に反映させれば、処遇改善が大きく前進する。

また、地元の中央工学校や静岡県富士宮市の富士教育訓練センターに行って講演し、そこで学ぶ若者たちを直接激励した。土木や建築の仕事は、脆弱国土から国民の命を守る大切な使命を持った誇りある仕事。地域の守り手として、「きついけれどもやりがいがある仕事。誇りと自信を持ってほしい」と訴えたところだ。

また、将来にわたって仕事が安定的にあることをはっきり示すことも必要だ。公共事業予算を安定的に確保し、インフラの整備や維持管理の仕事が継続的に続いていく見通しを示す。そうすれば、建設会社としても、「雇用を増やそう」「若い人材を育てよう」という方向に向かっていくはずだ。職場が安定しなければ、若者が就職してくるはずがないし、育つはずもない。

現場力こそが日本の底力――身体や手足を使い、身に付けた技能を使って現場で働く人たちによって我が国は支えられている。「技術立国・日本」「人材立国・日本」の強みを維持していくことが、これからの日本の成長の鍵を握っている。その現場力を失ってしまっては日本の将来は危うくなる。

現場力を担う人材を将来にわたって確保・育成していくために、関係者が連携して総合的な対策を打っていかなければならない。

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