政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.75  豪雨は新たなステージに入った/命を守る"逃げるソフト対策"を

2014年10月 9日

この夏、広島などでの集中豪雨や御嶽山の噴火があり、多くの尊い人命が失われた。御嶽山では今もなお行方不明者の捜索が続いている。こうした異常な現象は世界的に起こっており、世界各地で豪雨や渇水、アメリカなどでは山火事が相次いでいる。我が国は災害が多い脆弱国土。私は10月8日に「新たなステージに対応した防災・減災のあり方に関する懇談会」を立ち上げ有識者から意見を伺い、対応を本格的に始めた。

雨の降り方が最近明らかに変わってきた。集中化、局地化、激甚化しているのだ。8月20日に広島市を襲った豪雨では、バックビルディング現象により積乱雲が次々と発生して線状降水帯を形成。3時間で217㎜という集中的・局地的豪雨により甚大な被害が生じた。全国で時間雨量50㎜の雨(車のワイパーは効かず、マンホールからは水が噴き出すほどの雨)の発生件数も年々増加傾向にある。異常気象が常態化し、雨の降り方が新しいステージに入ったことを認識して、危機感をもって取り組みを強化したい。

異常な豪雨から命を守るためには、ハードの整備だけでなくソフト対策が重要だ。危険な状況が迫っているという情報を的確に住民に伝え、適切な避難行動に結びつけていかなければならない。そのためにはまず、自治体の長が現場の状況を判断して発令する避難勧告や避難指示が重要になる。しかし例えば深夜の場合など、その判断はなかなか難しいのも事実だ。それがたとえ空振りになったとしても、「被害が出なくてよかった」と受け止められる意識の変革が望まれる。さらに、行政に頼るだけでなく住民が自ら判断して逃げるよう、これも意識を変えることが重要となる。そのためには、自分が住んでいる場所にはどういう危険があるのかを予め知っておく必要がある。ハザードマップを各世帯に配布するなど、地域の災害リスクの周知を進めることも必要だ。

ソフト対策の新たな取り組みとして、今年から国土交通省ではタイムラインの運用を始めた。台風では事前に進路の予測がある程度可能だ。このため台風上陸の3日前、1日前、12時間前といった時系列で、地方自治体や交通機関などがとるべき防災行動をまとめておくのがタイムライン。既にアメリカでは、一昨年10月にハリケーン・サンディがニューヨークを襲った際、事前に地下鉄を止めるなどして被害軽減に大きな効果を発揮した。日本でもタイムラインに従えば、余裕を持って昼間のうちに避難場所を開設したり、交通機関も運行見込みを予め知らせることで、スムーズに災害への備えができるだろう。

今回の広島市での災害を踏まえ、この秋の臨時国会では土砂災害防止法の改正を行いたいと考えている。砂防堰堤の建設も大事だが、今回の改正ではソフト対策を中心とした。

その柱は3点。まず第一に、今回の災害では警戒区域が一部しか指定されておらず、住民が避難行動をとれなかったことが課題として指摘されている。警戒区域の指定は、住民の合意形成を丁寧に行うので時間がかかっているのだ。土砂災害の危険性がある区域はできるだけ早く住民に示す必要がある。このため、都道府県が行う基礎調査の段階でその結果を速やかに公表するようにしたい。

第二に、避難勧告や避難指示を判断する市町村のサポートが必要だ。地方気象台と都道府県が発令する土砂災害警戒情報を法律に位置付けて、市町村への伝達を義務づける仕組みを構築したい。

さらに第三点として、ハザードマップに避難経路や避難場所を具体的に記載して周知するなど、住民一人一人が自分の具体的な避難行動を日頃から意識できるようにすることも必要だ。

「命を守るためにハードとソフトの両面から対策を総動員する」――新しいステージに入った豪雨災害に対して、危機感をもって取り組んでいきたい。

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