政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO,81 インフラのストック効果に焦点/企業立地や観光など活発化

2015年4月28日

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公共事業は「選択と集中」が必要だ。財政制約がある中で、無駄なものは削り、必要なものはしっかり進めていく──。これが基本的な考えだ。特に私は、国交大臣に就任してこの2年余り、防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化を公共事業のメインストリームに位置づけて取り組んできた。さらに、景気・経済の再生や地方創生、都市再生にも対応していかなければならない。


公共事業の効果を論ずる場合、これまでは経済対策としての即効性、短期的なフローとしての効果が重視されてきた。しかし私が大事だと考えているのは、社会資本が本来持つ効果を発揮することにより新たな投資、成長を呼び込む効果、いわばストック効果だ。このストック効果に着目する視点がこれまでは欠けてきたように思う。


例えば、道路や新幹線など交通ネットワークの整備により、移動時間の短縮や輸送コストの削減など生産性の向上をもたらす。さらに、企業立地による民間投資や雇用の増加、新たな観光交流が生まれるなど、中長期にわたって経済を成長させる効果が発揮されるのだ。景気・経済の再生が大きな課題となっている今こそ、社会資本のストック効果に重点を置いていかなければならない。


そのストック効果は、実際にも具体的に現れてきている。


例えば企業立地の促進。一昨年11月に開通した秋田県の日本海沿岸東北自動車道(日沿道)の大館北・小坂間では、開通前から工場の新規立地や増設が相次いでいる。開通までの2年間で、27工場、200億円を超える設備投資が生まれた。新規の雇用も増え、大館市での高卒者の有効求人倍率は全国平均の2倍だ。日沿道では、新潟県村上市でも、航空機の化粧室や厨房など内装品を製造する国際的トップメーカーが全線開通を見越して進出している。

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三重県の四日市市では、東芝が半導体工場に約10年間で2兆円余りを設備投資。東名阪自動車道や北勢バイパスなどの道路ネットワークと四日市港により、企業の国際競争力が強化されている。


圏央道では、埼玉県で大変な勢いで次々と工場が立地している。さらに首都圏3環状道路(圏央道、外環道、中央環状)の整備が進んで物流施設も増加。通信販売で注文の当日又は翌日に配達可能なエリアが大幅に拡大し、消費者の利便性が高まっている。


この3月14日に開業した北陸新幹線でも、移動時間が短縮される北陸地方で企業立地が活発化している。YKKは本社機能の一部、社員約230人が東京から富山県黒部市に移転した。


道路だけでなく、防災・減災対策でもストック効果は発揮される。埼玉県春日部市では、首都圏外郭放水路の整備による水害リスクの減少により、工場や商業施設の立地が進んでいる。


観光での効果も大きい。圏央道は昨年6月に東名・中央道・関越道が結ばれたことにより、富士山と富岡製糸場という2つの世界遺産を結ぶ新たな観光ルートが誕生した。さらに今年3月、東名から藤沢まで開通し、群馬・埼玉・山梨という内陸地域から湘南海岸へのアクセスが向上した。圏央道は来年3月には一気に成田空港までつながる。海外からの観光客の流れもこれから大きく変わるだろう。


景気・経済の再生のためには、民間投資を喚起するインフラのストック効果が大きな役割を果たす。ストック効果という新たな視点をもって公共事業に対する見方を変えていきたい。

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