政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.117 10年後の危機を見すえ、働き方改革を加速/建設業の担い手対策をレベルアップ

2018年5月 1日

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 建設業は国の礎である。頻発し、激甚化する災害への対応、国民の生命、財産を守り、国土の生産性を向上させる社会資本整備、そのメンテナンス、我が国経済の発展をけん引する都市開発、民間設備投資、さらには住宅建設・リフォーム・・・・。いずれをとっても建設業が持続可能でなければ成り立たない。しかし、日本全体の生産年齢人口が減少するなかで、建設業の担い手については、概ね10年後に団塊世代の大量離職という危機が訪れる。建設業の技能者は、入職してから一人前になるまでには5~10年は要する。対応はまさに「待ったなし」だ。

 こうしたことから、私は国土交通大臣のときに、3度にわたる設計労務単価の大幅引き上げ、社会保険加入促進など処遇改善の取り組みに力を注いだ。担い手三法の制定、女性の活躍促進、そして将来にわたる安定した見通しを示すため、持続的、安定的な公共事業費の確保といった手を次々に打ってきた。この結果、賃金は上昇し、社会保険の加入も進むにつれ、技能労働者の減少に歯止めがかかり、特に新規学卒者の入職は増加に転じた。

 一方で、課題も残っている。設計労務単価は6年連続伸びているが(5回で39.3%)、伸びはこのところ鈍化しており、現場の技能者の賃金は依然として製造業と比べると低い水準にある。加えて、いわゆる賃金カーブを見ても他産業よりいち早く45~49歳で低下が始まっており、若者にキャリアの見通しが十分示せていないのではないか。また、他産業では当たり前となっている週休2日も取れず、全産業平均よりも年間300時間以上長時間労働となっている。働き方改革の必要性が最も強い産業の一つなのだ。そして、現場の技能者の多くがいわゆる日給月給制であり、単純に週休二日にすると収入が減ってしまうジレンマに陥ることになる。月給制への移行は目指すべき一つの方向性であるが、そのためにも生産性向上が欠かせない。長年にわたって形成されてきた建設業の構造問題にまで踏み込まねばならない課題であるが、今後さらに生産年齢人口が減少し、全産業的に人手不足感が強まる中、意欲ある若者の人生を建設業に託してもらうためには、さらに改革を進めるしか道はない。

    建設現場 2014.jpg こうしたなか、この3月に「建設業働き方改革加速化プログラム」が策定され、長時間労働の是正、給与・社会保険、生産性向上の3分野で担い手対策を一段とレベルアップすることとなった。

     長時間労働の是正では、週休二日の導入を後押しするために、公共工事における週休二日工事を大幅に拡大するとともに、そのために必要となる必要経費として、労務費等の補正を導入し、共通仮設費、現場管理費の補正率の引き上げを行う。これで、日給月給の技能者も積極的に週休二日工事に参加できる。

     給与・社会保険については、私が国土交通大臣のときに導入を決めた、技能者の資格や現場の就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積する「建設キャリアアップシステム」を今秋運用開始して、概ね5年ですべての技能者(約330万人)の加入を目指すこととした。大きな前進だ。さらに、これを活用して技能、経験にふさわしい処遇が実現するよう建設技能者の能力評価制度を策定し、公共工事での評価に活用することを検討することとなった。この仕組みは、建設技能者のキャリアの見通しを示す新たな制度インフラとなるであろう。また、社会保険に未加入の建設企業には、建設業の許可・更新を認めないところまで踏み込むことを決めた。

     生産性向上については、積極的なICT活用を促すため、公共工事の積算基準等を改善するとともに、工事書類の作成負担の軽減を図る。また、現場技術者の将来的な減少を見すえ、技術者配置要件の合理化を検討することも決めた。

    富士教育訓練センター.jpg こうした施策を展開するうえで大切なのは、現場の建設企業や技術者、技能者の実情をしっかり把握することと、彼らが改革の方向性に共鳴し、改革に参画してくれることだ。私は、国土交通大臣のときに、事業者団体のトップと会談し、直接現場の状況を聞くとともに、設計労務単価の引き上げを給与引き上げや社会保険加入の促進につなげることについて要請を行った。また、中央工学校や静岡県富士宮市の富士教育訓練センターに行って、若者にも直接話をしてきた。多くの現場の皆さんと意思疎通をしながら、皆がチャレンジできるような新しい施策を次々に展開していった。

     10年後の危機を克服するために残された時間は少なく、カウントダウンが始まったと言ってもよい。現場、行政、政治が一体となって、建設業が引き続き国の礎として活躍できるよう、現場の方々が自信と誇りを持って仕事ができるよう、さらに取り組みをレベルアップして行きたいと私は考えている。

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