政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.119-2 南海地震の経済被害1240兆円/防災・減災対策の強化緊要

2018年6月27日

6月18日、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1、最大震度6弱の地震が発生した。5名の死者、400名を超える負傷者が出る大きな災害だ。これまで社会インフラの耐震化を進めてきたが、今回、改めて大都市における地震対策の重要性が認識された。特に、ブロック塀の脆弱さ、交通網遮断による通勤・帰宅困難者問題、水道・ガスなどの生活インフラの補強、そして密集市街地の火災対策だ。私はこれまで、国土交通大臣の時も含め、常に「防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化の強化」を主張し推進してきた。学校や公共施設の耐震化、都市の防災対策、津波に対する防潮堤や津波タワーをはじめ、あらゆる対策を進めてきたが、今回は改めて大都市地震対策の緊要性を突きつけられたと言えよう。

同じ6月、土木学会が衝撃的な報告書を出した。「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書(H30.6.7)」だ。「国難」をもたらす巨大災害の被害推計で、南海トラフ地震で20年間の経済被害を累計すると1,240兆円に及ぶ、との発表に多くの人が驚いたと思う。この報告書の冒頭部分では、1755年ポルトガルの首都を襲った「リスボン大地震」により国力が衰退し、そしてポルトガルの時代が終わった史実が記されている。日本は今、巨大災害に備えておかなければならない。日本がつぶれかねない。そういった危機感あふれる報告であった。

報告書は、「国難」と呼びうる致命的事態を回避し、巨大災害に遭遇してもその被害を回復可能な範囲にとどめうる対策、すなわち国土のレジリエンス確保方策を示そうとするものだ。対象災害は、首都直下地震、南海トラフ地震、三大湾の巨大高潮、三大都市圏の巨大洪水。その災害を軽減するための対策として、主に道路、河川、港湾、海岸のインフラ整備が挙げられている。今回の報告書の特徴は、「被害額として長期的な経済被害を推計」している点だ。

例えば、南海トラフ地震では、発生して20年間で累計1240兆円の経済被害と170兆円の資産被害が発生するとの推計だ。ここで言う経済被害とは、道路等の被災の影響を受け経済活動が縮小し国民総生産(GDP)が毀損する総額であり、資産被害とは、災害によって毀損する建築物・資産等の金額のことだ。これまでの阪神・淡路大震災(1995年)など巨大地震を検証すると発災から回復するまで20年かかるというデータに基づいている。

南海トラフ地震に関する被害推計については、過去に内閣府も行っている。内閣府試算では、直接被害として資産被害が170兆円、間接被害として1年間の経済活動への影響として51兆円という推計を行っているが、今回の土木学会試算では、20年にわたる長期的な経済被害を示したことが特徴だ。それがなんと1240兆円もの経済被害になるわけだ。
一方、報告書では、南海トラフ地震では、対策を講じない場合、国と地方を合わせた一般政府の税収の縮小総額が130兆円(20年累計)にも及ぶとも試算している。

また、必要な対策(南海トラフ地震であれば38兆円以上)を講じれば、大幅に経済被害を縮小(509兆円の減額)でき、結果として大災害に伴う税収減の影響も対策費と比して大幅に減ずることも記されている(未対策と比較して54兆円の税収増)。事前防災の必要性とその効果が示された訳だ。先手、先手での積極的な防災対策を進めていくことが重要だ。

「国難」をもたらす大地震・大災害がいつ発生するかはわからない。災害大国日本に住む我々は、災害に対する健全な危機感を持ち、常に巨大地震や巨大津波・洪水等への備えを万全にしておかなければならない。各地の防災・減災対策をさらに強化し、一人でも多くの命が救えるよう、政治のリーダーシップが不可欠だ。さらに力を注いでいく決意だ。

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