政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.119 出水期、重要な水循環施策/洪水、渇水への備え万全に

2018年6月16日

新潟視察①20140713.JPGいよいよ6月、出水期を迎える。昨今は、雨の降り方がおかしくなっている。水害等も局所化、集中化、激甚化してきたが、その傾向はますます強まっている。平成26年7月に水循環基本法が成立し、私は初代の水循環政策担当大臣を務めた。水循環はきわめて重要な課題であるが、日常的にはそれを忘れてしまっているのが現状ではないか。集中豪雨対策としては、タイムラインによる備えや堤防、ダム、遊水池の整備等を進めている。常に備えていかないといけない。

もう一つの大切なことは渇水である。集中豪雨の陰に隠れ、渇水が忘れられている。これへの備えを国としてしっかりやっていかなければいけない。

我が国では、高度経済成長期以降、危機的な渇水が何度も発生し、国民生活・経済活動に多大な影響・被害を生じさせてきた。例えば、昭和36年から39年にかけての"オリンピック渇水"や昭和53年の福岡渇水、平成に入ってからも全国的に渇水が発生している。

こうした水需要の急増に伴う深刻な水不足に対し、安定した水供給の確保を図るため、ダムを整備したり、霞ヶ浦等の湖沼において水資源開発が計画的に進められてきた。しかし、近年の異常少雨の増加や降水量の変動幅の拡大により、毎年のように取水制限が実施されるなど全国的に渇水が発生している。四国の早明浦ダムでは毎年のように渇水が発生しているし、私のふるさと豊川上流にある宇蓮ダム、大島ダムでもダムが完成した平成14年以降、4年に1回の頻度で渇水が発生している。さらに記憶に新しいところでは、平成28年に利根川で、平成芝川水門視察 20161115.JPG29年には荒川と、首都圏では2年続けて渇水が発生した。平成28年は利根川の上流で降雪量が観測開始以来最小で雪解けも1か月早くなったこと、5月の雨量が平年の半分以下であったことから、ダムの貯水量が急激に減少し、利根川本川では過去最長となる79日間にわたって取水制限を実施するに至った。

首都圏の都市用水や農業用水などの水需要に対応するため、利根川や荒川の上流では矢木沢ダム、浦山ダム等、多数のダムの開発等により水資源を確保するとともに、武蔵水路や北千葉導水路等で複数の河川を連絡することで流域を越えた広域的な水利用が行われている。平成28年や平成29年の渇水の際にはこれらのダム群とネットワーク機能が発揮され、国民生活や経済活動に与える影響を最小限にすることができた。

このように今ある施設をしっかり機能させるほか、水道や農業用水等の関係利水者間の取水量の調整や、国民への節水の協力の呼びかけ、雨水や下水再生水の積極的な利用など、関係者が連携して行うソフト施策も重要である。

気象庁の気候変動監視レポート2016によれば、我が国における異常少雨の年間出現数は1901年から2016年までの116年間、じょじょに増加傾向をたどっており、また、弱い雨も含めた降水の日数は減少していることから、全国的に危機的な渇水の発生リスクが高まることが懸念されている。平成28年の渇水では、降雪量の減少、融雪の早期化といった過去の傾向に当てはまらない現象が生じており、様々な要素を考慮して渇水を捉え、対策を講じていく必要がある。

八ッ場ダム①20140625.jpg水循環基本法が目指す健全な水循環の維持又は回復のためには、日頃より各分野が連携して水を賢く、長く遣うための取り組みを通じ、将来にわたり水を安定して利用できる社会を構築していくことが重要である。2020東京オリンピック・パラリンピックを見据え、水資源開発施設や水路等の水のネットワークをしっかりと機能させ、世界中から来られる選手、観客の皆さんを安心して迎える環境を整えなければならない。八ッ場ダム等のハード整備を着実に進めるとともに、渇水時に関係者がとるべき対応策をあらかじめ取り決めておくタイムラインの策定等も進め、ハード・ソフト施策を連携させ、洪水のみならず渇水に対しても万全を期すことが求められる。

facebook

Twitter

Youtube

トップへ戻る