政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.120 豪雨の激甚化への対応強化を/マイ・タイムラインの行動回路急げ!

2018年8月 5日

タイムライン.JPG7月の西日本豪雨はきわめて厳しい大災害となった。「阪神淡路大震災、東日本大震災に次ぐ、平成の三大災害だという認識で対応すべきだ」――当初から私はそう言ってきた。現実に被害は甚大だ。8月2日現在、死者220人、行方不明者9人、住宅被害47074棟(うち全壊5074棟)、土砂災害1518件、河川堤防の決壊37件。きわめて厳しい状況のなか、捜索活動、救援活動が続き、行政・ボランティア等の力が猛暑のなかで発揮されている。一刻も早い復旧・生活再建に努めたい。

今回のような雨の降り方はかつてなかった。「特別警報」は、私が国交大臣の時、法改正によってつくった制度だが、長崎県から岐阜県まで西日本を縦断してなんと11府県に「特別警報」が出された。つくられた当時から「50年に1度、いまだ遭遇してないような豪雨」を「特別警報」としたが、1年に1回1県で起きる位が昨年までのことだ。今回はまさに広域、しかもどの府県も総雨量が400mmを超える豪雨となり、高知県馬路村では1800mm超、岐阜県郡上市では1200mm超を記録するすさまじい降り方だ。「雨の降り方が激甚化・集中化・局地化している」と警告してきた私だが、「線状降水帯」「バックビルディング現象」の広域化にも備えることが急務となってきた。

広島、岡山、愛媛でとくに被害が大きかった。しかも広島は「土砂崩れ」、岡山は「破堤しての大洪水(天井川であること、バックウォーター現象が起きたこと)」、愛媛では「土砂崩れ」と「洪水」が顕著だ。広島では4年前に土砂災害があった安佐北・安佐南の両区を中心に砂防堰堤の整備を急ピッチで進めているが、今回は別の地域で豪雨に見舞われた。流木等も含め「透過型砂防堰堤」の建設が土石流の危険地域では一刻も早く必要となる。倉敷市では天井川のために水がはけず、家屋1階には土砂が考えられないほど入り込んだ。ここでは何といっても河川の水位を下げること、堤防を強化することだ。日本の河川工学では力ずくでなく「水をなだめる」ことを総合的に行う。「堤防を強化する」「川底を掘る」「川幅を広げる」「遊水池等へ逃がす」「ダムで貯水する」等の組み合わせだ。これを各河川について"異常な降水時代"であることを認識して、積極的に乗り出すことだ。今のダッシュが肝要だ。

荒川視察.jpg今回、私がとくに主張しているキーワードは「タイムライン」と「マイ・タイムライン」だ。「タイムライン」は、避難の発令や仕方等を5日前、3日前、24時間前、6時間前・・・・・・と区切り、役所・警察・消防、学校・病院・老人ホーム等の福祉施設、鉄道・バス等の交通施設、企業・・・・・・などの関係者が事前に動くことを決めておくものだ。2012年10月、米ニューヨークにハリケーン・サンディーが襲いかかったが、これを採用したニューヨークは甚大な被害を免れた。それを教訓として私が国交大臣時代、まず東京の荒川からタイムラインを始めた。今や全国の国管理の河川109水系についてはこれができた。これからの問題は2つ。1つはタイムラインの参加機関を増やし厚くする。病院・介護施設・保育所などの弱者対応としてキメ細かいタイムラインの取り決めをすること。2つには、まだタイムラインが十分に出来ていない中山間地の中小河川の氾濫にどう備えるか(これは一気に増水し、氾濫し、流木が凶器となる)ということだ。その意味で、これを今年「タイムライン本格化の年」と定めて、各自治体と河川関係者が徹底してやることだ。

この「タイムライン本格化の年」のなかで、絶対進めるべきが「マイ・タイムライン」の作成だ。災害は受け身では自らを守れない。避難指示や気象情報を待っているだけではダメだ。「自分の住んでいる所はどういう所か。水に弱いのか。火災に弱いのか」――その弱点を知って、自らの災害時の動きを決めること、そして実際に動くこと、「知識の身体への行動回路」こそが大事なのだ。それが「マイ・タイムライン」だ。今回も「サイレン・知らせを聞いた、聞かない」などが話題となり、「夜は逃げられないではないか」という声が出た。あらかじめそこを詰めていく行政側と住民を結ぶ「知識の共有」「危機の共有」と、逃げる場所を「垂直避難」であれ「水平避難」であれ決めておくのだ。

この「マイ・タイムライン」は、あの3年前の鬼怒川破堤で大水害を被った常総市などで真剣な取り組みが始まっている。実際に避難をする住民一人ひとりが、自分自身の生活環境や家族構成にあった荒川タイムラインシンポジウム.JPGオリジナルのマイ・タイムラインづくりを進めている。さらには、大人向けだけでなく、小中学生向けのマイ・タイムライン「逃げキッド」も始まった。河川関係者、学校関係者などが連携し、学校防災訓練などの学校教育の場で使われ、昨年度は約2000人が作成した。

気象は全く変わったと覚悟する時にきている。それが西日本豪雨の教訓の第一だ。そして私は、各人が具体的に避難する、逃げること、「タイムライン」と「マイ・タイムライン」へ本格的に進むことも最大の教訓だと考えている。

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