政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.122 無関心・無知・ポピュラリズムを脱せよ/多様で自在のスポーツ・文化の力は大

2018年9月19日

大災害の多い大変な夏となった。気象の変化は明らかで、今年の一過性ととらえてはならない。そのことは、国民一人一人が実感するところまで来た。災害は多く、異常気象のなかで、洪水に対する「タイムライン」「ハザードマップ」「マイタイムライン」のより具体的な対策が急務であり、私自身、「命を守る公明党」として、従来よりレベルを上げた防災・減災対策、「防災・減災ニューディール」に力を注いでいる。

この夏、もう一つ実感したのが、「スポーツの力」だ。アジア大会も盛り上がっているが、なんといっても100回を記念しての高校野球のインパクトは大きかった。決勝戦、横綱・大阪桐蔭に挑むのが、秋田の公立高校・金足農業だった。対照的でともに素晴らしかった。秋田や大阪はもとよりだが、全国的に近年、これだけ盛り上がった高校野球大会はなかったのではないか。「勢いのある国づくり」が大事だが、スポーツ・文化・芸術の力は大きい。

121用.jpg今年の8.15終戦記念日。平成最後の終戦記念日となった。街頭に立った私は、「夏空白花」(須賀しのぶ著)を引いて話した。じつは昭和20年8月15日の翌日、早くも戦争で中断していた高校野球を復活させようと志した人がいた。政治的にも、経済的にも、悲惨な状況にあった国民にも、高校野球など今やるべき時ではない。野球場は芋づくりの場と化しているではないか。多くの激しい抵抗があった。しかし、翌年の8月15日のその日、ついに復活。青空に白いユニフォームが、花がパッと咲いたように開会式が行われた。平和とは庶民の喜びの花が咲くことだ。桜梅桃李、それぞれの持ち味を発揮すること、自在に自由に多様性を認めて花を咲かせることだ。
世界は今、大きな構造変化にさらされている。1つは難民・移民の問題、もう1つは先進諸国で顕著になっている格差の広がりだ。英国のEU離脱もEU諸国でのいわゆる右派の台頭、トランプ大統領誕生も、そうした構造変化が社会を覆い、不安・不満が充満していることが背景にある。

今から50年前の私が若き頃、「ファシズムと大衆」を論ずることは、あまりにも基本中の基本であった。オルテガ、ホイジンガ、リースマン、H・アーレント、フロム‥‥。先日出版された「ゲッベルスと私」(ナチの宣伝相ゲッベルスの秘書ポムゼル、解説をT・ハンゼン)で、ポムゼルは言う。「私たちは政治に無関心だった。重要なのは仕事であり、物質的安定であり、上司への義務を果たすことであった」「強制収容所で何が起きているのか、誰も知らなかった。多くを知りたいとはまるで思っていなかった」「私はゲッベルスのもとでタイプを打っていただけ。罪の意識はないわ」‥‥。ハンゼンは、無知、受動性、無関心、ご都合主義のナチスドイツ、ファシズムを教訓・警告として現代の政治を見抜けという。そして、現代の具体的対策が大事とし、「右翼ポピュリズムのように難民の追放や隔離などの弾圧的措置でなく、難民や難民全般の人権を損なわない形で対処する」「マイノリティに対する寛容さが欠如すると、犠牲を生み、混乱状態、暴力、戦争が生じる」と指摘。「現代の今もまた煽動家や過激派を傍観している。今こそ積極的参加と細心の注意を必要としている」という。ファシズムを「凡庸な悪」と抉ったH・アーレントは「民主主義の基礎は人間の多様性にある」といっている。現代社会は、75年前とは違うメディアの発達、IT・AI・IoT社会が現実となり、「多様性のなかの画一性」が進んでいる。無関心・無知・ポピュラリズム(大衆迎合)はその危険性を増大しているのだ。そして最近はデジタルポピュリズムにも十分眼を凝らさなければならない。

 戦争や紛争の背景には、間違いなく経済危機の問題が横たわる。絶対的貧困と同時に、格差による不満・不安を解決していく不断の試みが不可欠である。平和学者ヨハン・ガルトゥングは構造的終戦記念日街頭2018.jpg暴力問題としてそれらを指摘した。戦争の原因となる貧困、飢餓、経済的格差の打開に取り組むこと。「人間の安全保障」だ。平和なグローバル世界の展望は確かに存在しうる。それは、2030年をめざして貧困や飢餓の解消、すべての人への水と衛生と健康の保障、ジェンダー平等、生産的で人間らしい仕事の提供等を含んだ国連の「持続可能な開発のための2030年アジェンダSDGs」だ。

平成最後の8.15終戦記念日――。選択肢も多様性も全くない閉ざされたなかに追い詰められて死を迎えた日本軍兵士、その世界の片隅で生きてきた私たちの親兄妹‥‥。思うことは多い。「安全・安心の勢いある国づくり」をめざし、進みたい。

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