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NO.123 増加する児童虐待事件/児童相談所・市町村の体制を強く深く!

2018年11月22日

東京・目黒区で3月、親から虐待を受けた5歳の女児(当時)が死亡した。「あしたはできるようにするから」「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」とノートに書きつづった言葉は、あまりにも痛々しい。朝4時に起きてひらがなも覚えさせ、勉強ができないと食事も満足に与えず、暴行を繰り返したという。両親は、保護責任者遺棄致死罪で警視庁に逮捕されたが、児童虐待事件は「二度と繰り返してはならない」などという決意だけでは解決できない根の深い難しい問題だ。

児童虐待は増えている。児童相談所が受けた相談対応件数は、2016年度で12万2575件に及び、2000年度に比べて約7倍、最近は通報しやすくなったこともあるが、間違いなく急増している。相談経路は家族(8%)、近隣知人(14%)、警察等(45%)、学校等(7%)。児童虐待による死亡者も2010年度に98人、2015年度に84人、なかでもきわめて悲しいことだが、ゼロ歳児死亡が約半分、とくに「ゼロ日児(生まれた日に死亡)」が2割に及ぶ。

運動会【ぶちかまし用】.jpg背景には貧困、家族関係の変貌、就労の変化、外国人等ニューカマーの増加、ストレス社会等々、広くて重苦しい問題がある。現代社会の歪みだ。「児童虐待から考える」の著者・杉山春氏によれば、「児童虐待」の現場を歩いて見ると、社会の変貌や家族の変容が明確に顕れ、投影されているという。「貧困とその連鎖」「母子家庭の貧困の増加と根深さ」「安定した就労の困難さ」「家族としての凝集力の弱体化」「孤立化の進行」「離婚の増加」「性行動の活発化・性産業への一般女性の安き参入」「ネット、SNS等メディアの変化」「外国人女性等のニューカマーの増加」「ストレス過多の社会・人間関係」・・・・・・。多くの複合的要因がある。さらにそうした社会で生きる親の側にも「育てる力が乏しい親、それを支えられない社会」「助けを求めることを知らない親たち」「親としての過剰な『生真面目さ』」「"育児は母親だけの義務"という古い規範への過剰な従属」など、自らを追い詰める要因が見られ、かつ親自身が子どもの頃に虐待やネグレクトを受けた者が多くいる。八方ふさがりの行き詰まりだ。「残酷な親」とイメージするのは、表面的な一面にしか過ぎないという。

これらにどう挑むか、である。2000年、「児童虐待防止法」が国会議員の発議により制定された。対策はここから始まる。類次の改正のあと2016年、「児童虐待防止法の改正」「児童福祉法の改正」が行われ、さまざまな対策強化が打ち出された。さらに今回の衝撃的事件を受けて、政府はこれまでの児童虐待防止策を総点検して、更なる強化見直しに踏み出した。①児童相談所・市町村の体制強化②児童虐待の早期発見・早期対応(妊娠期からの適切なケア、幼稚園等に通えていない未就園児・未就学児の把握)③児童相談所間・自治体間の情報共有の徹底④警察・学校・病院等の関係機関の連携強化⑤適切な司法関与の実施(親子の親権とか裁判所の関与)⑥保護された子どものための里親支援体制や児童養護施設等の充実・強化――などである。今回の目黒の事件では、香川県から目黒区へと移動していることから、とくに県をまたいでの児童相談所間、自治体間の情報共有と警察など関係機関の連携強化が急務となる。③と④だ。また、幼稚園にも病院にも行っていたのに、途中から行っていないことを、つかめなかったのも悔やまれる点だ。

なかでも要となる児童相談所の体制強化をどう行うかだ。児童相談所は基本的に都道府県・指定都市の出先機関であるが、現在、東京の各特別区のほとんどで設置する方向で動いている。また各児童相談所のケースワーカー(児童福祉司)は管轄地域の人口4万人に1人以上を配置することが基本となっているが、「児童虐待」という難問は、担当者の数をふやすだけでは解決できない。専門的な力量が問われるだけに、児童福祉司の充実・強化も大切となる。

さらに、児童相談所は、「親の抵抗」「虐待を受けた子どもも施設に入りたがらない」というなかで、「貧困・暴力の社会の歪み」に対して身体を張って挑むきわめて厳しい職場だ。しかも子どもの人生を左右するギリギリの職場でもあり、"形"だけの処理は許されない。個人の判断に委ねられるだけに、執念の持続がなければ成し遂げられない難しい職場でもあり、強いサポート体制が重要である。虐待専門機関の設立や「初動班・対策指導班・家庭復帰班というさらなる専門チームを作れ」(山脇由貴子氏)という提言もある。「児童相談所・市町村の体制強化」「数と質の拡充」というだけでは解決できない凄まじい問題、根深い問題が「児童虐待」だということだ。現場を熟知しての深堀りした対策が必要だ。

今回の事件で政府が課題としてあげた6項目。それをどこまで深く、魂を入れる決意で取り組むか。徹底してやれるか。日本社会の影・闇に対決する覚悟を示さなければならない。

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