政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.143 「コロナ後の世界」の課題が見える/安全・安心志向、働き方改革など

2020年9月 4日

世界を覆っている新型コロナウィルス感染症――。今年の冒頭、私は「2020年代へのダッシュの年だ。東京オリ・パラ後こそ日本にとって大事だ」といい、①人口減少・少子高齢社会 ②AI・IOT・ロボットの急進展 ③気候変動などによる大災害――の3つの構造変化への本格的取り組みを強調した。「コロナ」で課題は変わったのか。コロナ後の世界はどうなるのか。エマニュエル・トッドは「何も変わらないが、物事は加速し、悪化する」という。私のいう3つの構造変化は変わらないが、加速し、逆に封じ込められていた矛盾が噴出するというのだ。

第一は、「安全・安心社会志向と生活様式の変化」が加速することへの対応だ。「三密」を避け、通勤・通学・仕事のあり方全般に変容を促す。明らかに会議はオンライン、在宅勤務制度が急速に進み、学校はGIGAスクールへの歩みが加速した。「働き方改革」が進み、それは「休み方改革」であることにも気付いた。それは戦後の「より早く、より遠く」「亭主元気で留守がいい」「モーレツ社員」型の社会通念が、「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事終わるのか」(堀内都喜子氏)にあるように、幸福度二年連続世界一のフィンランドのような、「夜は家族とともに」「自身の豊かな時間をもつ」というような暮らし方を考えようとする動きである。「日本が戦後の再建に費やした経済成長へのエネルギーを、これからは『個人』『家族』『健康』に注ぎ込め」(リンダ・グラットン)という主張もある。災害の頻発もあり、ますます安全・安心社会を志向することは間違いない。気象変動は世界的なことであり、文明を地球環境重視へと着地させていく。ポストコロナの世界では、こうした地殻変動を絶対に見逃してはならない。

第二は、コロナ後の日本は人口減少・少子高齢社会への対応を急がねばならないということだ。2025年、団塊の世代は75歳以上となり、空き家は1000万戸、認知症は700万人といわれる。この現実はコロナ後、ますます厳しく私たちに迫って来る。「全世代型社会保障を確立する」というのが最重要だが、識者はさまざま指摘する。労働人口の減少という経済に最も影響する問題には「日本の人口減少はアドバンテージになる。日本の高齢者は健康であり、働ける。問題は高齢化でなく定年退職システムだ」「移民を受け入れ、女性を家庭から解放しよう」(ジャレド・ダイアモンド)、「長寿社会は"より長く働く社会"だ。日本と企業を支配してきた男女分担の考え方を変えよ」(リンダ・グラットン)など、戦後日本社会の転換を今こそ"コロナ後の世界"として展開せよというのだ。

第三は、AI・IoT・ロボットの急進展について、今、日本の遅れが露わとなったことである。オンライン、GIGAスクール、5Gへと社会の全てにデジタル化が求められることは当然だが、ここでも識者は指摘する。「パンデミックとの闘いは情報戦」「ワクチン・新薬開発に AIが活用できる」「汎用型AI(AGI)となると大量のデータを必要としなくなる」「AIによる自動兵器の脅威に国際禁止協定を」(マックス・テグマーク)、「パンデミックでGAFA等のビッグテックはますますパワフルになり、企業統合の動きが続く」(スコット・ギャロウェイ)、「AIは所詮、計算機だが人間の理解力を衰えさせている教育こそ問題」(新井紀子氏)、「デジタルで読む脳は、連続で飛ばし読みになり、短絡的で真の理解や他者への共感が得られない。紙の本は『深く読む脳』を育む」(メアリアン・ウルフ)と警告を発する。

第四は、「世界の構図の変化への対応」だ。コロナ禍は、グローバリズムの暴走への疑念をもたらす一方で、「一国主義」「保護主義」にも警鐘を鳴らす。感染症の蔓延、世界経済のダメージのなか、国際協調がきわめて重要となる。ジョセフ・E・スティグリッツは「グローバル化によって国家は自らの首を絞めている。保護主義は問題の解決にならない」「強者に有利ではなく、労働者、消費者、環境、経済を犠牲にしないルールづくりだ」という。「コロナ禍は、"普通"の経済状態にない人々の存在、日々ぎりぎりの崖っぷちで生活している人口の存在が露わになった」(村上陽一郎氏)との指摘は、日本だけではなく国際社会のなかでも露わとなる。現前する「格差」「分断」のカテゴリー分けとは異なる深刻さが生じるということだ。「国際協調」「途上国支援」「貧困等SDGsへの結束」がますます重要となる。

コロナ後の新たな世界への幾つかの課題が鮮明となってきている。

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