政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.146 温室効果ガスの排出ゼロへ/再エネ、省エネの技術革新を加速

2020年12月 9日

2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする――。臨時国会冒頭の所信表明演説で、菅首相はそう宣言した。菅首相誕生直後の自公連立政権合意でも公明党が主張したもので、今後、国の基本戦略に大きな影響を与える宣言だ。これは「脱炭素化と経済成長を両立する『グリーン社会』の実現を目指す」「次世代型太陽電池、カーボンリサイクルなど革新的なイノベーションを促進し、グリーン投資を更に促進する」「省エネ、再生可能エネルギーを最大限導入し、石炭火力発電の政策を抜本的に転換する」など、多方面での大転換を促すことになる。

地球温暖化の現状は厳しい。日本の気候の変化は顕著なものがあり、雨の降り方は激甚化・広域化している。暖冬、夏の猛暑、海水温の上昇もあり、台風でなくても今年の熊本のように大水害が発生している。世界でも大雨・洪水・熱波・森林火災が相次いでいる。この危機感から2015年、すべての国連加盟国(197か国・地域)が、温室効果ガスの削減目標を作り、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ちつつ、1.5℃に抑える努力目標を掲げた。パリ協定だ。2050年にカーボンニュートラルにすれば、1.5℃の目標が達成できることになる。

これまで日本は「2050年に80%削減する」との長期目標を掲げてきた。今回の宣言はそれを大きく変える野心的取り組みへの決断だ。EUを中心にして「2050年に排出ゼロ」を掲げる国がこのところ相次いでおり、日本もそれに歩調を合わせ、かつその先駆を切ろうとしているわけだ。ただEUも確かな道筋が提示できている訳ではない。重要なのはその具体策だ。

第一に、省エネルギーの徹底だ。国内の排出量の約6割は、住宅・移動等のライフスタイルに起因している。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や外断熱などの住宅、電気自動車など、日本は間違いなく世界の先端を切れる。国としての支援も当然必要となる。

第二は、再生エネルギーの比率をもっともっと高めることだ。現行の政府のエネルギー基本計画は、2030年度の電源構成の目標を再エネ22~24%、原発20~22%、天然ガス27%、石炭26%としている。再エネ比を30%以上に持っていかないと、2050年への展望が見えてこない。太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマス等だが、日本の再エネ導入量は世界第6位、このうち太陽光発電はFIT法施行当初に認定量が急拡大し、世界第3位の導入容量となっている。他国に比べて日射量が大きくないとか、平地面積が少ない、住宅では初期投資負担等の課題をもつ日本だが、「地上」と「屋根置き」両面にわたっての取り組みを更に進める。風力も重要だが、とくに力を入れているのは洋上風力発電だ。陸上に比べて大きな導入ポテンシャルを有し、風速が高く安定かつ効率的な発電が見込まれる。浅い海域が少ない日本では、海底に固定する「着床式」に加え、50m以上の深い海域に適用可能な「浮体式」洋上風力発電の実証事業を進めている。地熱発電は、日本は地熱資源量では世界第3位で導入拡大への期待は大きい。開発コスト、地元の理解など開発リスクがあり、それらを乗り越える革新的技術が提起されており、国としての支援が大切だ。水力は、エネルギーの地産・地消の小水力発電を私が国交大臣の時に大きく切り開き前進している。しかし、忘れられているのは、ダム自体の容量をもっと効果的に使えば、発電量はかなり増加させ得るということだ。推進したいと思っている。

第三は、地域ぐるみの取り組み、「ゼロカーボンシティ」の実現だ。地域での再エネの地産・地消によるエネルギー収支の黒字化(現在は9割の自治体でエネルギー代金の収支が赤字)をめざす。自立・分散型エネルギーシステムの構築、地域へのイノベーション実装により2050年のゼロカーボンシティの実現を表明する自治体は170自治体、人口規模で約8013万人に及ぶ。太陽光等を使っての再エネ防災拠点(千葉県睦沢町)、浮体式洋上風力と漁業の共生(長崎県五島市)、廃棄物発電施設でのCO2回収施設(佐賀市)、再エネ電気を通じた広域連携(横浜市)など意欲的だ。

第四は、イノベーションだ。EV車、CO2の回収・利用・貯留、再エネの各分野の技術革新、水素社会構築の加速化だ。蓄電池市場は活性化し、次世代自動車用が最大用途だが、パソコンやスマホ、また災害時への備えにも不可欠だ。用途別の蓄電システムの開発・研究も進んでおり、リチウムイオン電池は大幅な伸びを見せている。第五は、脱炭素移行型の環境インフラの国際展開だ。日本が開発した高度な技術を途上国に提供し、途上国と一体で排出削減に取り組む。温暖化は地球全体だからこそ、先進国だけでなく途上国の排出量を削減することが不可欠だ。

2050年までは30年と短い。相当の覚悟のダッシュが必要だ。

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