政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.151 ワクチン接種の加速化に全力!/「変異株」「国産開発」に中長期戦略を

2021年6月 1日

ワクチン接種が始まっている。接種を担う市区町村では、5月のゴールデンウィーク明けから高齢者への予約が本格化された。75歳以上を先行させた自治体も多い。当初は「予約の電話が通じない」「ネット予約に不都合が生じた」などの苦情が殺到したが、翌週からは「予約ができて安心した」という声を聞くようになり、落ち着いてきたことを現場を歩いて実感する。「高齢者3600万人への接種を7月末までに完了する」「1100万回の接種」を政府は目標として掲げている。今年1月に、感染者が16万人にも及んだ英国は、ロックダウンでもなかなか収束しなかったが、ワクチン接種が進んだ今、日常を取り戻しつつある。米国でもイスラエルでも、ワクチンが"収束の切り札"となっていることが明らかだ。

20210601_104630.jpg現場から見ると、各自治体の懸命な姿勢が目立っている。何よりも医師・看護師との連携、そして会場の確保、さらに一人でも多くの方々にスムーズに接種できる工夫の数々だ。予約の受付回線を増加させることは、多くの自治体が取り組んだところだが、「区の施設に職員を派遣し、相談と受付を行う(足立区)」「コロナ禍で仕事が急減している旅行会社に予約受付を代行してもらう(荒川区)」などが工夫され、予約が進んでいる。また「要介護者の送迎に地元タクシー会社を使い、無料で接種できる(北区)」「要介護者等に訪問接種を行う"ドクタータクシー"の仕組みをつくる(荒川区)」など、私の地元周辺での各区の取り組みは多彩で知恵を絞っている。高齢者へ2回接種するワクチンの必要量7200万回を大幅に上回る量を6月末までに届けるメドが立っていることと、集団接種だけでなく「かかりつけ医での個別接種」が6月から本格化する自治体も多く、いよいよワクチン接種の加速化が実感できるようになると思う。

接種が始まったファイザー社製ワクチン、モデルナ社製のワクチンは、ほとんどの科学者の予想を上回るスピードで開発され、その効果も従来のワクチンよりもはるかに高い95%近辺の発症抑制効果だという。副反応も2回目の人に、発熱や倦怠感が多くみられるというが、数日で軽快するようだ。「両社ともカタリン・カリコ博士の持つ技術的特許を使用している。ウィルスの同一部分の遺伝物質・メッセンジャーRNAmRNA)を人工合成し、主成分としている(山中伸弥・京大IPS細胞研究所長)」というものだ。タンパクを作るための設計図をmRNAとして生体に投与すると、タンパクに翻訳(合成)され、異物が入ってきたと体が免疫反応を起こす。その免疫反応がワクチン効果となって抗体などが誘導されるという。まさに画期的なワクチンで、ワクチン接種がスムーズに進むかどうかに、日本の命運がかかっている。

1622511975327.jpg供給量と接種体制が重要であり、全力で準備を進めているが、山中伸弥教授は新聞等への寄稿で、この他の課題として「接種率」「持続性」「変異株」の3つを上げている。高い接種率が望まれるが、日本ではこれまで根強いワクチン不信があった。これを乗り越えるには、その効果を実感させる接種の全過程における安全・安心の確保が大切だ。「免疫がどれぐらい持続できるか」については、少なくとも6か月は有効との報告があるが、まだ十分な知見はない。研究開発の更なる強化が大事だが、追加接種を長期的に行う体制づくりが大切となる。国産ワクチンの開発はその観点からも大切なところだ。石井健・東大医科学研究所教授が、「コロナ禍でのワクチン開発 その破壊的イノベーションの課題と展望」でワクチン開発の現状を詳説し、国産ワクチンの開発は周回遅れではあるが、「日本製は安心・安全だというブランド力がある」「『急がば回れ』は、決して損ではなくて、感染症、ワクチンをしっかり研究して、ワクチンの輸出国を目指すべきだ」といい、予算をはじめとする全方位の支援体制強化に言及している。きわめて重要なところだ。

「変異株のリスク」は今、最も懸念させる重要課題だ。英国型等には、ファイザー社製、モデルナ社製のワクチンが有効だといわれるが、インド株については感染力が更に強いという報告があり、現在のワクチンの有効性がどの程度かは未知数の段階だ。日本としては水際対策などの警戒が不可欠だ。感染爆発が変異株の温床になることを考えると、世界的な阻止への協力も大切となる。抑えても抑えても新たな変異株が出てくるという難問に、世界は協力して立ち向かう必要性に迫られている。

危機打開、コロナ収束に向けて、今の戦略と中長期の戦略を常に考え実行すること――まさに正念場だと思う。

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