日本の領土これが答えだ.JPG「いまこそ必要なのは、海洋国家としての自覚と海洋戦略である」「海に守られてきた日本は、恵まれた環境の中で、文化と国民的能力を育んできた。しかし、危機に対するセンスが欠落し、弱点が残った」「弱点を直視し、愚直にその克服に取り組めば、日本は世界に冠たる国になれる」「外交・安全保障・危機管理のツボを押えよ」――。海上保安庁に「日本の海」を守る力はあるのか。「海保」と「海自」の実態を明らかにしつつ、海洋国家・日本への提言が語られる。


飯田のミクロ.JPG経済成長や景気変動を取り扱うマクロ経済学はある意味、わかりやすいし、興味深い。しかし、それはミクロ経済学を踏まえなければならない。そしてミクロ経済学には昨今、ゲーム理論などが入って展開がされているが、飯田さんは、より原点的なことからその基本的な思考法を解説をしている。本書はなんと財務省の人への講義に基づいている。副題に「新しい経済学の教科書(1)」とあるが、「飯田のマクロ」などが今後、続いていくようだ。

「経済学は、個人主義・自由主義から出発し、主観価値説を基礎とし、資源が希少な環境を舞台に展開される議論」という。そして「個人は予算制約の中で幸せを目指すなどの個別主体の行動原理」「競争的な市場が望ましい理由(完全競争市場の効率性など)」「競争条件と企業の行動」「競争的な市場が望ましくない場合(公益事業のかかえの問題)」などを解読する。

「財政政策」「消費税問題」「消費税を上げないとギリシャのようになる、というが、ギリシャの破綻は増税にもよる」「国の借金はどの通貨でしているかを見ることが大切」「金融政策は、日銀が金融機関を相手にしているので円安は望まず、雇用などに景気回復が及ぶ前に引き締めてしまうことになりがち」「公共事業はなぜ景気にきかないのか」――こうした飯田さんの発言は、本書でも時折り顔をのぞかせる。マクロ経済政策では、どうしても論者の価値観が入るが、ミクロを踏まえるということは、価値観を除外した理論を踏まえよということでもある。


日本強靭化.JPGのサムネイル画像 「国土強靭化について」の講演録が載せられている。藤井聡、石川好、森田実、大石久和、西村英俊、石原信雄、伊藤元重、月尾嘉男、岡崎久彦の各氏をはじめとする方々。それぞれの立場から「日本を強くしなやかに」を語っている。一流の専門家の発言は幅広く、大局を、そして現場・現実を語り、ズッシリと重い。

 日本が壊れるかどうかの瀬戸際。再生への骨格を示してくれている。絹谷幸二国土強靭化総合研究所代表、二階俊博自民党国土強靭化総合調査会長を中心にした意欲的な議論だ。



日本人の忘れもの.JPG産経抄を書き続けた石井さん。「世はこともなし?」(正論)と「蛙の遠めがね」(産経新聞)のコラムをまとめたものだが、安倍・福田・麻生の3代と行動を共にした私としては、時の流れと事件を振り返りたいとの思いもあって読んだ。しかし、本書はそうしたものではなく、より本質を凝視しようとしたものであった。

屹立した日本人としての誇りと伝統、そして文化、人間としての道理や義務や責任、見苦しいほどいきり立っている老人や時流に迎合するインテリ。――そうしたことを、少年Hとして、日本人として、ジャーナリストとして、キチッと言い切っている。


日本型リーダーはなぜ失敗するのか.JPG決断できない、現場を知らない、責任をとらない日本のリーダーがなぜ生まれたのか。日露戦争の大勝利の栄光は、「海の東郷平八郎」「陸の大山巌」に代表される「威厳と人徳」のリーダーイメージを定着させた。「威厳と人徳」は、「作戦にうるさく口出ししない指導者」「重箱の隅をつついたりしない将」の人物像に結ばれていく。それはそのまま参謀まかせの「太っ腹リーダー像」と西南戦争以来の「参謀重視」の日本型リーダーシップの型をつくり、その「参謀重視」は「上が下に依存する」という悪しき習慣を生み、本来の意思決定者、決裁者をわからなくする。そして、机の上だけの秀才参謀たちの根拠なき自己過信、傲慢な無知、底知れぬ無責任が戦場でまかり通るようになる。

「くつがえった津軽海峡説」「参謀教育は何を教えたか」「日本の参謀の6つのタイプ――書記官型(瀬島龍三)、分身型(秋山真之)、独立型(石原莞爾)、準指揮官型(辻政信)、長期構想型(永田鉄山)、政略担当型(石川信吾)」を上げている。「参謀教育とは天才を作ることではない。能率と常識を発揮できる通常人員を育成することにある」(ハンス・フォン・ゼークト将軍)とし、正反対のことをやったのが陸軍大学校であり、海軍大学校であったと指摘している。――"小才子、大局の明を欠く"とも。

太平洋戦争にみるリーダーの条件として「最大の仕事は決断にあり」「明確な目標を示せ」「焦点に位置せよ」「情報は確実に捉えよ」「規格化された理論にすがるな」「部下には最大級の任務の遂行を求めよ」の6つを上げる。しかも、ギリギリの極限状況の判断の成否を具体的実名をあげて示している。関係者、本人にも戦後、直接会って取材もしていることも重い。現在の政治と自分を省みる。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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