本が好き、悪口言うのはもっと好き.JPG

発刊されて十数年、90年代前半に書かれた評論集。

とにかく切れ味は桁外れ。見せかけの権威などダメなものはダメ、中途半端で研究不足のものはスパッと斬り捨てる。深い。

李白と杜甫を描いた「ネアカ李白とネクラ杜甫」や「支那はわるいことばだろうか」「新聞醜悪録」など、選ばれた評論はいずれも凄いが、ユーモアと温かさがある。

 「面白い」とは面の前がパッと明るくなる、開けるということのようだが、本当に面白い。それが、いつまでも残る。


人口減少社会という希望.JPG

経済成長、拡大路線をひたすら走ってきた単線的、一本道の日本。しかし今、ポスト成長、成熟化、定常化の時代に入ったことを認識し、「(単線ではなく)根底にある自然観や生命観、人間観とともに、また実現されるべき"豊かさ"のビジョンとともに、複数のものが存在する」という視点に立って、意識変革、社会の転換を図ろう――それはローカルな地域に根ざしたコミュニティ経済の生成と「地球倫理」とも呼ぶべき価値原理の確立だ。人口減少社会は、そうした意味からチャンスであり、希望である。「地域からの離陸」の時代であった高度成長期とは反対に、人口減少社会は「地域への着陸」の時代になっていく。それはコミュニティや自然への着陸でもある。そう広井さんはいう。

グローバルな競争のなかで、"強い国""猛々しい国"をめざしがちだが、じつは社会の底流では、"安らかな国""安心・安定の国"への志向が確実に始まっている。「人間―自然の切断」「帰納的・合理的な要素還元主義」――そこから生じた工業化・市場化。アトミズム的な社会観ではなく、多様性(生き方も都市それぞれも多様性を評価)、関係性(人間と自然、個人とコミュニティ社会)、幸福(福祉)思想を重視する。それを重層的に「ポスト成長時代の価値と幸福」「コミュニティ経済の生成と展開」「ローカル化が日本を救う」「情報とコミュニティの進化(つなぐこと)」「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」「緑の福祉国家」「人間の顔をした環境都市」「もうひとつの科学」「日本の福祉思想――喪失と再構築」など、意欲的に提示している。


成長から成熟へ.JPGのサムネイル画像

「いまはもう経済成長なんかにしがみついているときではない。文明の書き換え作業にしっかり取りかかるときなんじゃないでしょうか」「経済力や軍事力で競い合うような国じゃない、文化力を大切にする『別品』の国です」「3.11で成長社会から成熟社会への転換が始まると思ったが......3.11以前の日本を再生しようとしているように思う」――。マクルーハンから藻谷浩介さんの「里山資本主義」、浜矩子さんの「老楽(おいらく)国家」、広井良典さんの「人口減少社会という希望――コミュニティ経済の生成と地球倫理」などをも引きつつ語っている。

日本は米国の大量生産・大量消費・大量廃棄に裏付けされた「豊かな社会」をめざして"経済大国行きの超特急"に乗ってきた。欲望のビックバンだが、若者文化、テレビ時代とテレビ人間、適当に壊れるようにつくる品質や機能の廃品化、使い捨て計画的廃品化、浪費の誘発は、次第に歪みを生み脱線する。そうした世の中の空気や気分は三面記事と広告に表現される。「フル回転していた大量生産・大量消費の歯車がきしみ始め、需要の創出がお手上げ(手詰まり)になった。その壁を強引に突き破ろうとすれば、広告は強引になり、暴力的にならざるをえません」――。まさに広告は時代のきしみから生ずる叫びだ。

「成長から成熟へ」も「経済大国かつ生活大国」もいわれ続けてきた。3.11を経て、この国を今、未来を見つめてどうするか、マイルドな成長は勿論必要だが、どういう質を求めてグランドデザインを描くか、そして行程をどう進めるか、を問いかけている。


安藤忠雄仕事をつくる.jpg

すごいし、すさまじい。「安藤というやつは、抜き身で走ってきたおもしろいやつや。近寄らん方がいい」「一人、裸で刀持って走っているようなやつや、危ない」と言われたという。気迫、気力、集中力、目的意識、強い思いを持つことが、自らに課したハードルを越えさせる。エネルギッシュな、野生をもった、知的好奇心の旺盛な若者達よ出でよ。それが日本を元気にする。

「甘え」などは勿論のこと、「ゆとり」などというのではない。不安と隣り合せ、緊張感に包まれた世界に突き放す。外国でも、仕事でも、一人で突き放す。その体験が、社会を生きていく上で大きな糧となり、人間を強くするという。

やり遂げた仕事も素晴らしいが、人生に迫る創造の迫力は異次元だ。

土木工学は安全、堅固を追求する。建築工学の美、文化、躍動、アートのための空間、美しい風景、街づくり、デザインの世界に触れることができた。


叛骨の宰相.JPG

「国民に媚びることなく、国家を真の独立へと導こうとした岸信介。彼が思い描いた理想に、この国はまだ遠い」と本書は結ばれている。昭和2年3月の昭和恐慌(岸31歳)から昭和30年の保守合同(自由民主党結成)(岸59歳)、そして60年安保改定。まさに激動の日本。北さんは岸が戦い続けた吉田茂を「吉田茂  ポピュリズムに背を向けて」の名著を出しているが、国を背負った「自ら反(かえ)りみて縮(なお)くんば、千万人といえども吾往かん(孟子)」を貫いた叛骨の宰相として岸信介を描いている。そして「歴代総理のなかで、辞任後もっとも評価が高くなったのは岸信介ではあるまいか」という。あの昭和の戦争、そして占領下の日本、そして保守合同への"自民党戦国史"――そのなかで、日本を背負うとはどういうことか。保守政治とは何か。そのなかで突き上げる情念とは何かを、描き出してくれている。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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