知の逆転.png

いずれも世界最高の知性の6人が率直に語る。視点が高く、深い。そして科学的、哲学的、真実へのあくなき追求姿勢、しかも謙虚さに感動する。吉成さんの卓越したインタビュー、まとめる力に、感謝したいほどだ。

「人生に意味などというものはない。われわれはただ存在するというだけのことだ」「西欧の覇権は民族の能力の違いによるものではなく、単なる地域的優位性の結果だ」という生物学・生理学のジャレド・ダイアモンド。「全ての言語にはその深層に共通する文法が存在し、人間は言語の基本文法を生得的な器官として持って生まれてくる」と語る言語学者ノーム・チョムスキーは、市場主義や覇権主義を批判する。

脳神経学・精神医学のオリバー・サックスは、「教育で大事なことは、先生と生徒のポジティブな関係であり、教えている内容への先生の情熱である」といい、音楽と言語に言及しつつ、人間存在の究極に迫る。人工知能分野を開拓したマービン・ミンスキーは「なぜ福島にロボットを送れなかったか」と科学の方向性の転換を語る。数学者トム・レイトンはインターネットの最先端で繰り広げられるサイバー戦争等を語り、世界の変容や危険性、その解決方法について自らの起業にもふれつつ語っている。分子生物学者、DNA二重らせん構造の発見者ジェームズ・ワトソンは、「最もエキサイトしている事柄は何か」と問われ、「ガンを治すことです」と即答する。

いずれも生命、哲学、宗教が語られ、推薦図書まで上げている。刺激的な書だ。


黄色いバスの奇跡十勝バスの再生物語.png

うれしい話だ。倒産寸前だった十勝バスが、若社長の「お客さんのために」という熱気によって息を吹き返した。社員を愛し、地域を愛したチーム十勝バスは、奇跡を起こした。それも各地方でバス事業や鉄道事業が苦戦をしているなかでの話だ。中心者の一念、社員との結束と意欲、バス停近くで営業をかけるという奇抜なアイデア。国土交通省でも話を直接伺っている。また十勝バスは数々の賞を受賞している。

驚くべきは輸送人員の増加だ。地方でバス利用者の減少が続くなかで、十勝バスは平成20年度294万人が24年度には337万人となった。本書をもとにミュージカル「KACHI BUS(カチバス)」(でっかい北海道で起こった、ちっちゃなバス会社の奇跡)が上演されている。現在は東京公演中(下北沢本多劇場 1月5日~13日)。今後、札幌や帯広でも公演予定だという。


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凄まじい。主人公(緒方隆雄)たちの運命も、時代と事件も、この小説のラストも、そして描く筆力も。本当に「冬の旅」の人生だ。遠く辛い旅が、死刑という将来の見通しでやっと安堵するとは一体どういうことか。

「おれの最初の躓きは何だったのか」――次から次へとうまくいかない。いくらやっても悪い方へ悪い方へと転び、なぜか全てが崩れ去る。関係する人も同じように崩れ去り、冬が少しも春にならない。そんな泥にまみれた世界を、強盗殺人、刑務所や猟奇的殺人、新興宗教、ドヤ街、ホームレス、阪神大震災などを背景にして、描き切る。やりきれない思いとリアリズムが恐ろしいほど重厚に迫ってくる。凄まじい力。


人生8勝7敗.png

元大関・琴風、尾車親方。現役時代は大関への期待がかかった時に左ヒザじん帯断裂の大ケガで幕下まで陥落、再起を果たしてまた関脇で左ヒザ半月板損傷。再び立ち上がり初優勝して大関へ。また右ヒザじん帯損傷で引退――。尾車親方となって苦節13年、ついに関取を誕生させるが、昨年4月4日、巡業先で転倒して頸髄捻挫の重傷。首から下が全く動かせない全身麻痺の状況から奇跡の復活をついに果たす。

逆境、試練、苦難の連続、一寸先は闇、波乱万丈――。「勝つまでやることを、頑張ったというんだ」「何度転んでも起き上がるんだ」「ピンチを乗り越える力を持っている者にしか、試練は与えられない。自分は認められた男だと思って頑張れ」と自身に言い聞かせながらの人生が、琴風の人生だが、「琴の音が、風に乗って響く」琴風らしく、ものすごく謙虚に静かに語っている印象的な本だ。


おとなの背中.png

「如実知見」「諸法実相」――本書の哲学者の思考にふれて私の感じたことだ。「哲学は人間学だ」とつくづく思う。大人の人間学、熟練・練達の人間学だ。「教育」「育てる」ということは、教えるのではなく、「伝える」こと。背中で・・・・・・。「期待のされすぎはなぜしんどいのか」「期待のされなさすぎはなぜしんどいのか」――期待の過剰と期待の過小の社会。資格が問われ、選別されてばかりの社会。存在をかき消されてしまう社会。そのなかで人は自分の存在を「できる・できない」の条件を一切つけないで認めてくれる人を求め、溺れているかのようだ。複雑・多様・正解のない現実をどう受け容れるか。独立ではなく自立を、不如意への「耐性」が必要だという。

「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す(寺田寅彦)」「この国のほとんどの人は飢餓や戦争をはじめとして、生存が根底から脅かされるような可能性を考えないで生きている」「現代の都市生活はじつはたいへんに脆い基盤のうえに成り立っている。ライフラインが止まれば、人は原始生活どころかそれ以下に突き落とされる」「人は、その生活を"いのちの世話"を確実に代行するプロフェッショナルに委ね、自分たちでやる能力をしだいに失い、とんでもない無能力になっている」――。2007年以降、新聞や雑誌に寄せたエッセー集。いずれもどっしりして、根源的に考えさせられる。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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