「民主不況」「米国製造業消滅」「北朝鮮崩壊」という歴史的大転換の3つのキーワードを提示している。
今はデフレ時代、小泉改革はそれに適した小さな政府をつくること、その一歩が郵政をはじめとする民営化だったし、規制緩和もそうだ。大きな政府では官僚も規制も書類も多くなり、増税となる。民主は小さな政府に反対のことをやっていると長谷川さんはいう。
米国はよくなる。金融機関も公的資金を返済、のびのびとして動き始めた。
投資銀行もなくならないし、ニューヨークは世界の金融の中心であり続ける。しかし、製造業はダメ。ヨーロッパも厳しいし、労組などのしばりもある。デフレ時代は安くないと売れない。軍縮も進む、警察が大事な時代となる。
松本健一さんが長い間、あたためてきた「海岸線の歴史」だという。なぜ、これが思いの深い書なのか――。
そう思いつつ読み進んだ。読んでいるうちに、「ナショナル・アイデンティティの再構築」「ナショナル・アイデンティティ(日本とは何か)とは、軍事的な強さや経済的な豊かさで形成されるものではなく、わたしたちはこういう風土と歴史と文化のなかで生まれ死んでゆく、という自己意識において形成されるものだ」「各民族の文化的な固有性の再認識や、国家的な歴史の書き直しという動きとなっている」「グローバリズムによる世界各地の文化破壊に対する抵抗は、ナショナリズムではなく、パトリオティズム(祖国愛=郷土愛)によって成されようとしている」「どんなに近代化を進めても、現代化をしても、便利な文明を求めていても、国民の誇り、そして心の豊かさはその風土にある」
――まさに海岸に住んだ人々の生命のなかに営々としてパトリオティズムが形成され、そのためにも、海を取り戻すことが大事だということがわかる。
「公共事業はムダ」とか「公共事業悪玉論」が世を席巻して、声も出せないような状況にある。治山治水がいかに大事であり、黙々と先達が努力してきたか。とくに災害列島、脆弱国土の日本だ。未曾有の経済危機に対して世界が協調している金融や財政出動に、逆噴射という世界で驚くような政策をしている政権。財政再建の名の下に、公共事業叩きと役人叩きをして、成長戦略を考えない人々。経済を内需も外需もバランスよく発展させなければ、この国はもたない。少子高齢化社会は想像を絶するものだ。
森田実さんは、覚悟をもって正論を吐いている。「建設業の再生が日本経済を救う」「建設産業復興論」という主題、副題自体に、その覚悟が表われ、その背後に中庸の哲学が満ちている。