きわめて現実的、重要な著作。日本は世界有数の自然災害多発地、災害列島だ。とくに水害。伊勢湾台風から60年、昨年の西日本豪雨も232人の死者・行方不明者を出した。
地球環境の変化もあり、台風も雨の降り方もおかしい。首都直下地震等の大地震もいつ起きてもおかしくない。本書は豪雨、台風、高潮、地震洪水、大水害への備えの緊急なこと、最善の避難策をきわめて現実的に訴えている。
東京には江東5区等、ゼロメートル地帯が広がっている。土屋さんは、「ゼロメートル地帯江戸川区のハザードマップ作り」にも、「江東5区大規模水害広域避難計画」にも携わり、現場で具体的に推進してきている。東日本大震災で大被害を被った女川町の海の見える町の土地区画整理事業も進めてきた。
災害は現場で起きている。「正常バイアス」は危い。マニュアル任せは危険だ。「命山」「スーパー堤防」がゼロメートル地帯には重要だ。これらは実は、最近のことではない。先人が知恵を出して何百年もやってきたことだ。東京の今の堤防にはまだまだ弱点がある。地下鉄等も世界では類例のない発展をしている。「首都東京ゼロメートル地帯『命山』計画」を強く主張している。全く同感。「ハザードマップ」「タイムライン」「マイタイムライン」のソフトも含めて、命を守り抜く防災・減災対策を更に強化する必要がある。「警告」というより「叫び」として読んだ。
東野圭吾ガリレオシリーズ第3弾。ガリレオシリーズを不動のものにした傑作だが、「ハーバードの日本人論」(佐藤智恵著)でカレン・L・ソーンバー教授が「村上春樹と東野圭吾が世界で愛される理由」を講義している。そこで紹介しているのがこの「容疑者Xの献身」だ。
天才数学者である石神哲哉は高校教師の職に甘んじ不遇の日々を送っており、自死をも考える。そんな時、隣りに引っ越してきた花岡靖子と美里の母娘に魅せられ生きる灯を見出していた。ところが、ある日、この母娘が離婚後もつきまとわれ"疫病神"のような元夫を殺害してしまう。石神は母娘を助けるべく、完全犯罪を企てる。母娘のアリバイは完璧、捜査は難航する。刑事・草薙俊平は困り果て、友人の天才物理学者・湯川学に相談する。なんと、湯川と石神は大学時代の友人、互いに"天才"と認め合うほどの間柄だった。
2006年の「直木賞」「本格ミステリ大賞」「このミステリーがすごい!2006」等の受賞作。今更だが、面白い。
9月1日「防災の日」――。地元では、町会・自治会、連合町会の防災訓練が多くの会場で行われ、参加しました。
実践的な訓練や知識習得ができるようにと、どの会場も様々工夫を凝らした訓練となりました。行政が、タイムラインやハザードマップを作成し、避難場所を指定したりするなど、さまざまな対策を行なっても、いざという時に大事なのは一人ひとりの行動です。私は以前から「自分がどう動くかのマイタイムライン」「自助・共助・公助にプラスして近助の顔の見える連携」の大切さを訴えてきました。
この日も多くの方と挨拶・懇談をしました。暑いなか、準備・運営をしてくださった役員や消防署・消防団の皆さん、参加してくださった方々に感謝です。
たしかに「日本人ほど『日本人論』が好きな国民はいない」ようだが、この本はハーバードの教授陣の「日本研究」「日本人研究」のエキスが集約されている。名だたる教授陣に、その著書、研究、授業を通じて「日本人の特性」について佐藤智恵さんがインタビューしている。「日本の映画」「美術史」「遺伝学」「分子細胞生物学」「日本の政治」「日本社会」「マネジメント」「宗教」「日本文学」「比較文学」という広範な10の講義が紹介される。その"日本人論"も本格的できわめて興味深い。
「映画から視覚リテラシーを学び、視角言語を読み解く方法を習得したい。映画の文法、映画の視角言語を教えるのに、黒澤明の『用心棒』ほど素晴らしい教材はない」「北野武の映画が象徴する"海と日本人"――『HANA-BI』のエンディングは北野監督が描きたかった時間と人生の関係性が凝縮されている」「日本人はなぜロボットを友達だと思うか――テクノロジーを肯定的にとらえている」「伊藤若冲ブームが続くが日本人はなぜ細部にこだわるのか――若冲は広大な天空ではなく、生物の細部の中に宇宙を見出した画家だった(日本製品の品質の高さにつながる)」――。
「日本人はどこから来たのか(古代DNA解析で迫る日本人の起源)――ホモ・サピエンス・サピエンスはアフリカを出て東へと拡散していく過程で、旧人類と交雑している。日本人のDNAの98%はホモ・サピエンス・サピエンス、2%は旧人類由来。弥生人のDNAは"黄河ゴースト集団"からの影響を強く受けていると思う」「日本人はなぜ長寿なのか――魚、大豆、海藻」「日本人はなぜ『場』を重んじるのか――所属している組織、職位を重んじ、他者への警戒心が強い」「日本人のオペレーションはなぜ簡単に真似できないのか――テスラ、GMがトヨタに学ぶべき現場文化。日本人は『完璧な品質を追求する』『継続して改善を行う』国民性をもつ」「清掃を尊ぶのは神道の、けがれを拒否し清浄感を重視することから。禅とスティーブ・ジョブズ」――。
「日本人はなぜ周りの目を気にするのか――会社や組織に対する忠誠心は『忠義』から。江戸時代の武士が何よりも重んじたのは『世間体』。判官贔屓は世界共通」「日本人はなぜ物語の結末を曖昧に描くのか――村上春樹(ノルウェーの森)、東野圭吾(容疑者Xの献身)が世界で愛される理由(善悪等の基準への問題提起)」――。
ハーバード大学の10人の教授が、これほどまで日本(人)研究をし、学生に多様な価値観の問題提起をしていること自体が驚きでもあった。