じつに味わい深い。日常に使われている言葉、死語となっている言葉、どこに由来するのかわからない不思議な言葉。「ことばの本というと名句や成句や名言が素材になるが、ここでは何でもない日常語を扱っている」「印象深く記憶にのこった一つの局面をたどってみた。何でもないことばが、ことのほか意味深くなる。石に刻んだ名言は摩減するが、日常語はみだらでワイザツな日常を生きて名言に一歩もひかない」と語る。
「のろま」について「人間にはのろま型と、はしっこいタイプがいるようだ・・・・・・はしっこいのは20代、30代の前半あたりまで活躍する。・・・・・・だが、そのうち音沙汰なくなって、どこにいるかもわからない。入れかわってのろま型はいい仕事をする」「現代はすばしっこいタイプの時代である。人はみなせわしなく動きまわって鉄砲のようにしゃべり立てる。・・・・・・はしっこいのがいらいらして息切れしてくるなかで、のろま型はのんびりとわが道をいけばいいわけだ」・・・・・・。
「ちょい役」――「いかにも軽い役柄ながら、主役、中堅に加えて端役がいないと舞台が成り立たない。・・・・・・見る人に見てもらって、そのあとすぐに忘れられるのが、花も実もあるちょい役哲学というものである」。「ピンはね、ねこばば」「虫がいい」「ちゃぶ台返し」「おためごかし」「遊戯歌」・・・・・・。言葉の謂れ、昔の庶民の生活、幼い頃の思い出等が描かれ、なつかしくもあり、言語が消えるとともに現代社会が"失ってしまったもの"が浮き彫りにされる。
「『あの子がほしい、あの子じゃわからん、まけてくやしい花いちもんめ』――生々しい人間の世界で使われてきた『花いちもんめ』」だが、悲しい。「クダを巻く(糸を巻き取る管)」「ふくろ(人体=ふくろ)」「通」「関西弁のスピード」「ボケと認知とカント」「小市民のズルさ、小心ぶり、無責任」「われをほむるものハ あくまとおもうへし」「シラミとノミ」「"店じまい"が呼び起こす微妙な心の状態」・・・・・・。時代をくぐり抜けて体験を重ねて生み出された日本人の知恵の味わい深さに感じ入る。
「月刊ENTAME 1月号」(11月30日発売)の【井上咲楽の政治家 直撃】にインタビュー記事が掲載されました。
下記のHPよりご覧ください。
■「震災から3カ月後、気仙沼から届いた吉報」
公明党・太田昭宏議員の"現場主義"という信条
https://entamenext.com/articles/detail/3262
※『月刊ENTAME』掲載記事
■自公連立20年の節目に、太田昭宏議員が語る「公明党の役割」
https://entamenext.com/articles/detail/3263
※『月刊ENTAME』には掲載しきれなかった内容をweb限定版として公開
人間を磨くということは、会話を磨くことともいえる。「仕事と人間関係を劇的によくする技術」が副題。「自分のことは話すな」「あなたの話はムダだらけ」といわれれば、誰しもそう思わざるを得ないが、気付いていないのが普通だろう。
まず「相手は自分の話に大して興味を持っていない」のだ。ムダな雑談には付き合いたくないし、自分のことばかり話されてもイヤな気持ちになるだけだ。「自分の話を聞いてほしい」という考え方ではなく、「相手が何を求めているか」「一歩踏み込んだ深みのある会話」にチャレンジしようという。
「余計な話」「いらない雑談」とは「相手から求められていない話」「確証のない噂や推測の『たぶん〇〇であろう話』」「"だから何?"といった類の『得のないムダ話』」の3種類。必要なのは「相手の側に立つこと」「相手の役に立てることを考え抜く習慣」だという。また就職など「採用のチャンスは普段にある」――。紹介されやすい人の言動の特徴は「礼儀正しく"わかりやすい"自己紹介ができる」「話のネタ選びが"健康的"である」「清潔感をキープする"余裕"がある人」が指摘される。納得だ。無意味な会話を「雑談」と厳しく言っているが、"浅い話"を引き延ばすのでなく、すぐに本題に入れる「フレーズ集」が示される。そしてダラダラ、次から次へ続けてしゃべる人がいるが、「話したいことの5割をカットせよ」「相手が求める『ズバリの答え』を一言で出す」等を示す。政治家はしゃべり続けがちだが、「"私も!"といって話題を奪わない」ことを戒めている。それに安易に"同意"されても落胆するものだ。「心に刺さる言葉だけ使う」ことが述べられているが、「聞き上手」というのが最もいい会話を引き出すのではないか。「人生は話し方が9割」と帯にあるが、会話は人生の最重要なものであることは間違いない。
「日本は課題先進国と言われる」「世界は、課題に満ちている。世界は、アイデアが足りない状態である」「アイデアを求めている人がいるところに、僕たちが出かけていかなければならない」――。「世界中すべての課題を、あらゆる手段を駆使して解決する技術とプロセス」がクリエイティブ・ディレクションだ。テレビCMや広告製作をイメージするのは過去のこと。それのみならず全ての課題について、ミッションを発見し、アイデアを考え、形にする。本書はきわめて意欲的、刺激的で重要。考えてみれば、「政治は結果」――政治家の本来やるべきことと同じだ。クリエイティブ・ディレクションの能力はAI時代も含めて、人間の最も重要な能力であり、人材が渇望されている。
クリエイティブ・ディレクションの仕事――。「課題→アイデア→エクゼキューション」を考え、決定し、実行すること。「ミッションの発見」「コア・アイデアの確定」「ゴールイメージの設定」「アウトプットのクオリティ管理」の4項目が示される。具体的で難題が言語化され、プロの仕事に納得する。
「要は、『困っていること』が課題だ」「課題とは状況、漠たる不満という状況である。この漠たる不満を、確たる不満に昇格させ、"明確で正しい困り方"に凝縮させる。アイデアを考える範囲に限定して、考えやすい状態にすること。それがミッションの発見」「ブランドの本質の本質の本質の本質は何か。ワンフレーズに凝縮するのだ」「ゴールイメージの設定とは、ターゲットとの接触面を設計することである。みんなが自分に関係あると感じさせること。ゴールイメージとは、抽象的では決してなく、具体的身体的なものだ。"こんな感じ"をみんなでシェアしようということなので・・・・・・」「クオリティはどこからくるのか。・・・・・・表現の点数を上げる原理は存在する。『びっくり×はたひざ(納得)』だ」「クリエイティブ・ディレクションの8割は論理的出来事。ロジックこそ最重要ツール。しかし、仕事の最終的な"くる・こない"を決定するのは、論理を超えた部分、直観的本能的感覚的肉体的右脳的なのである」「アイデアを出現するような状態を人為的につくることは可能。神が降りてくるのを待つだけでは勝率は上がらない。脳を一定の準備された状態まで的確に追い込んでいくことである」「アイデアに至る2つのルートは『ひらめき』と『直観』。1万時間のトレーニングが必要」「クリエイティブのリーダーシップには、カリスマ性が要求される。ディーセンシーと膨大な読書量に裏打ちされたインテリジェンスとの共存によってリスペクトされるCDになる」「JR九州と"牛乳に相談だ"の中央酪農会議の例」「人気は右脳的である。ヒトは人気のある人、存在感のある人の話しか聞かない。"主語"の力だ。ブランディングとは、主語の力を強くする運動にほかならない」「牛乳なら、その存在感を獲得する右脳的なことと、ベネフィットを伝える左脳的なことを同時に伝えるコミュニケーション・システムを構築することだ」「ターゲットとの接触面をつくり、"牛乳ってやつは思ったより楽しいじゃん"とする」「for Goodがブランドキャンペーンに不可欠なエレメントになってきた。社会意識の変化だ。リーマン・ショックまでは"Strong"に価値があったが、(日本の3.11以降を経て)"Good"に価値、世に役立った志向となってきた」・・・・・・。きわめて面白く、重要で刺激的な本(人)に出会った。
