中身を知ると驚く。舞台は中央アジアのかつてアラル海と呼ばれた砂漠と塩の過酷な土地に建国された小国・アラルスタン。カザフスタン、ウズベキスタンなどの大国に囲まれ、米国やロシアの影響も大きく、イスラム過激派の運動もある。「世に文化や信仰は数あれど、その思いだけは万国共通だ。人は世界に関わりたいと願い、そして世界から疎外されつづける。大国に囲まれ、政治も9分9厘まで決められてしまうこのような小国では、なおのこと」・・・・・・。
その小国・アラルスタンで信頼を得ていたパルヴェーズ・アリー大統領が暗殺され、政府要人は次々と逃亡していく。立ち上がったのが後宮の乙女たち。側室というよりも、アリー大統領は後宮を若い女性たちの高等教育の場と改革した。そのなかにリーダー役のアイシャ、日本人少女ナツキ、その友ジャミラの3人がいた。自分たちでこの国を担うしかない。今の危機を突き破って進むしかない。
"大和撫子"ではなく、まさにダイナミックに荒野を駆けて戦う少女ナツキの純粋な"あとは野となれ大和撫子"だ。国家存亡の危機、人心不安、多民族国家のなかで走る姿を、ハイテンポで次々変化する映像を観るかのごとく活きいきと描く。
谷崎潤一郎を支え、葛藤・嫉妬する3人の女性。妻の松子、その妹の重子、松子の前夫の子であり、重子の養子となった清一の妻・千萬子。狭い家族の人間模様は谷崎との距離感に起因し、谷崎はその時々に最も望む人間関係をやんわりとつくり貫く。「細雪」の中心的モデルとなり、それを誇る重子が静かに語る。その迫りくる緊迫感には隙間がない。
戦後の奔放さを身につけ谷崎に寵愛される若い千萬子への嫉妬は、3人の老いともあいまって苦しいほどだ。「松子姉の嫉妬は、私の嫉妬。松子姉の懊悩は、私の懊悩。そして、松子姉の狭量は、私の狭量でした」「結局、兄さんが1番好きなんは兄さん自身、てことですやろか」「兄さんは本当に大きな心で、誰にもよくしてくれました。・・・・・・でも、兄さんは、王国には必要ないと思った人間には、根本のところで冷酷です」――。そして谷崎は「夢と現のあわいを行ったり来たり。あなた(重子)ほど、僕の書く小説の中に生きた人はいませんでしたね」という。
「細雪」「痴人の愛」「鍵」「瘋癲老人日記」・・・・・・。久し振りに谷崎潤一郎の"業"の世界にふれた。
現時点の日米同盟、北朝鮮、中国の戦略・軍事力をきわめてリアルに分析し、「日米同盟の徹底した活用を抜きに、自分の国を自分で守れない」「米国にとって日米同盟の戦略的価値は"死活的に重要"」「"自立"できない構造の自衛隊」であることを論証する。
論旨はきわめて明確。日米同盟の米国側からの戦略的位置は「世界最強の日米同盟」「日本を失った米国は世界のリーダーの座から転落」「日本は駐留経費負担のお手本」であり、日本の「自主防衛は幻想」「核武装論の虚妄」を解き明かす。ミサイル発射を繰り返す対北朝鮮では、「94年北朝鮮危機の真相」「北朝鮮の軍事力と日・米・韓の"戦争力"と米朝チキンゲーム」「金正恩の"狙い" "メッセージ"と"怯え"」「北朝鮮はインド、中国型経済成長を目指す」「核の配備は通常戦力・兵力を削減し、国家建設志向の意図」を最近の各事案を分析しつつ語る。また中国では「東シナ海で中国を抑え込む日米同盟」「中国の戦略は『三戦(輿論戦、心理戦、法律戦)』と『A2・AD(接近阻止・領域拒否)』」等々について述べる。