「私の体の中には国家がある」「政治家は歴史の法廷に立つ。その決断の重さの自覚なくして国家の指導者たりえない」「政治家は、寝ても覚めても、この国をどうするかという課題を、いつも胸に抱いていないといけない立場である」――。まさに中曽根元総理を語ることが、そのまま戦後の日本の政治を語ることになっている。若い時も総理の時も、その後も今もだ。まず本書で感じたことはその凄さだ。
「中曽根は、総理大臣には『経済重視型』(吉田茂、池田勇人、佐藤栄作・・・・・・)と、『政治重視型(思想重視型)』(岸信介、三木武夫、中曽根・・・・・・)がいて、代わり代わり出てくると政治はうまくいく、という」「かくして中曽根は、『反吉田茂勢力』『反共産勢力』『自主憲法制定』『再軍備』を訴えて選挙を戦ったのである(1947年4月)」「"大局さえ失わないなら大いに妥協しなさい"・・・・・・この言葉ほど私の人生観を左右したものはない」「マッカーサー総司令部は、軍国主義復活の芽を徹底的につぶそうとし、その中核を形成した過激な国家主義に対する警戒心を緩めませんでした。しかし、私は健全なナショナリズム、その基盤となる愛国心こそ戦後の復興に不可欠なものと考えていました」「・・・・・・その間、現憲法も国民の間に受け入れられ、自由や民主主義、平等という考えも定着し、今日の日本の繁栄を支える大きな基礎となったことは否定できない。ただ、その過程で見失ったことも多い。やはり歴史や伝統、文化といった日本固有の価値をうたわぬことは、その国の憲法にとって大きな欠落と言うべきだろう」「我々の手による堂々たる憲法を作らなければならない」「政治家は、結果責任で仕事をしなければ失格である」・・・・・・。
戦後日本の政治史を語るには、本書は短い。だが、中曽根元総理の言葉を掘り起こすことによって、戦後の政治史・事件・抗争がありありと見えてくる。
人口減少、少子高齢社会の日本は、時系列的にどういう姿となっていくのか。それを明確にし危機感をもたなければ、今、行うべき対策が見えてこない。「日本の難しさは、人口減少をもたらす出生数の減少、高齢者数の増加、そして社会の支え手である勤労世代の減少という、それぞれの要因の異なる3つの課題に同時に立ち向かわなければならないところにある」と具体的に指摘し、「日本を救う10の処方箋」として「戦略的に縮む」「豊かさを維持する」「脱・東京一極集中」「少子化対策」を提示する。
例えば、「2017年、『おばあちゃん大国』に変化(ひとり暮らしをする女性高齢者の増大)(貧しいおばあちゃんの激増)」「2018年、国立大学が倒産の危機へ(より深刻なのは地方大学)」「2021年、介護離職が大量発生する」「2024年、3人に1人が65歳以上の超・高齢者大国へ(老老介護がのしかかる)」「2026年、認知症患者が700万人規模に("認認介護" が急増)」「2030年、百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える」「2033年、全国の住宅の3戸に1戸が空き家となる(空き家が2000万戸を超える)」「2040年、自治体の半数が消滅の危機に」「2042年、高齢者人口が約4000万人とピークに」「2050年、世界的な食料争奪戦に巻き込まれる」「2065年~、外国人が無人の国土を占拠する」・・・・・・。
人口減少日本は現実だ。それを予見して今、やるべきことをやる。時間軸をもった政治が大切だ。