昭和30年、新聞社の文化部記者・司馬遼太郎(32歳)が、本名・福田定一で書いた「名言随筆サラリーマン」という作品。"サラリーマン"がどんどん増えていった時代。中村武志の「目白三平」、源氏鶏太の「立春大吉」、映画でいえば森繁久彌等の「駅前シリーズ」、そしてクレイジー・キャッツの「サラリーマンは気楽な家業と来たもんだ」へと続いていく。野武士が消えて、全ての分野でサラリーマン化していった時、「サラリーマンとは一体何であろうか」と、"野武士記者"司馬遼太郎は"サラリーマン記者"を要請されてアタマを痛める。叛骨心がもたげてくるわけだ。「その苦しみのアブラ汗が本書である」という。
勝負の世界でもある企業人も政治家も記者もいまは"サラリーマン"。古今東西の"名言""箴言"を引用しつつ、"サラリーマン"と"人生"と"人間の幸福"を考えるが、60年たって今読んでも新鮮。合理主義的な管理社会が形成される今だが、やはり人は、生活の安定は確保しつつもロマンティシズムや叛骨、勝負に魅かれるもののようだ。
第2部の「2人の老サラリーマン」「あるサラリーマン記者」は、司馬遼太郎の心が率直に出てとくに面白い。20年ぶりの新刊、32歳司馬遼太郎の人間洞察と筆致に感心する。
対応に追われているだけではなく、時間軸をもった政治が今、不可欠だ。第1の日本は「明治日本」、第2の日本は「戦後日本」、そして今、「三度目の日本」に向けて大胆な挑戦をしないと日本は沈む。
時は10年後の2026年の日本。主人公は若き徳永好伸総理、そして小久保平治経産省流通経済課長。日本は存亡の危機、ジリ貧の忍び寄る危機の真っ只中にあった。人口減少・高齢化、「欲ない、夢ない、やる気ない」の低欲社会、2020年東京五輪後のゼロ成長、経済縮小、国債残高は1482兆円の財政危機、未婚・少子化の"滅種の危機"・・・・・・。まさに微温的な"天国・日本"には大きな衝撃的改革が必要だった。
「衆議院の定数増」「二都二道八州の都道州制」「消費税と燃料税と酒・タバコ税は都道州税に」「第四次産業革命の先端になる」「真の改革には安全・安心・安定の倫理を変えよ」「官僚主導、東京一極集中、本社一極集中を変えよ」「低欲社会を脱する歓びを生む街・楽しい国へ」「二つ目の仕事の勧め」「新幹線・連珠都市」「供給過剰社会に対応した大学移出、病院移出、文化発する国へ」「セコハン・フリーマーケット・パーク」「全国紙・テレビ局の再編成」・・・・・・。予測小説というより危機からの提言だ。
