はじめにまず"志"ありき、と副題にある。
渋沢栄一、前島密、岩崎弥太郎、安田善次郎、浅野総一郎、大倉喜八郎、田中久重、早矢仕有的、鮎川義介、小林一三、早川徳次、松下幸之助の12人。いずれも、明治、大正、昭和と、まさに日本を創ってきた人々だ。
浅野セメントの浅野総一郎の"九転び十起き"、シャープの早川徳次の悲惨に現れているように艱難辛苦を乗り越え、けっして挫けることなく、新しい挑戦をし続けた人々が、日本を創った。共通するのは人並みはずれた"忍耐力"、そして私欲でなく国の為、社会の為という理念・目的が厳としていること、そしてその真摯な姿勢に共感して助ける力ある仲間のいることだ。
短編であるがゆえに、人物像が鮮明だ。また、ビジネスにモラルを求め、企業に社会性を求める日本の伝統が浮き彫りにされる。北さんが注ぐ眼も温かい。人物にも、この国難に直面している日本という国にも。
政治家の劣化がいわれ、倫理的資質の低下、哲学の欠如が指摘される。哲学不在は政治家のみではなく、社会そのものの浅さでもある。メディア社会も選挙制度の問題もある。
孔子、孟子、荀子、そしてソクラテス、プラトン、アリストテレス、そして内村鑑三の「代表的日本人」でも紹介されている西郷隆盛、上杉鷹山、日蓮の言葉など。さらにゲーテ、カーライル、セネカ、シラー、ルソーなどの123の政治に関する格言・名言。
森田実さんが、自らの言として心にとどめ、政治評論活動のなかで、指摘してきたものだ。
「一隅を照らす」「政の興る所は民の心に従うに在り」「上善は水の如し」――など、森田実さんの姿勢自体に感動をおぼえる。
政治家必読の著。
「炎立つ」「火怨」「天を衝く」の高橋克彦の「完四郎広目手控シリーズ」の「不惑剣」。ホラー、ミステリー、時代小説など高橋作品は幅広いが、今回のは明治初期の広目(今でいえば広報・広告・メディア)の世界に身を置く完四郎たちから描いた小説。
明治維新後の変革期、不安定な時代。新政府に抵抗し、死に場所を求める元士族――。熊本で決起する神風達を止めようとした完四郎は逆に心をひかれ、己を省みる。
「こういう美しき者たちを・・・・・新政府はなぜに死に追いやる」
「こういう者たちが喜んで生きて行かれる国こそ本当の新しき国ではないのか」
「おれよりも偉い。・・・・・・惑わぬ心で剣を持つのは・・・・・・」
「戦が何を生む。・・・・・・大久保はまだ足りぬというのか! 西郷は不足だと言うのか! この国の大義はどこにある!」
――掴み所のない国に向けての怒り、そして底の抜け崩落感のなかにある自分自身の生に対して、「おれは・・・・・・どうすればいい」やり場のない時代が描かれている。しかし戦いはまだ続き、明治は走り出している。そんな時代のはらむ苦悩がにじみ出ている。
この"一億総うつ病化社会"。
「上司に怒られる。怒られてばかり」「トラブルが続く。心に余裕がなくなる。心が限界になるほど疲れる」――そんな時どうする。「抑うつ状態は強い悲しみや不安、失望感のため、すべてに興味がなくなり、無気力になる精神状態」だが、さてどうする。
人には思考のクセがある。考え方を変える、思考グセを変えない限り、いくら薬を飲んでも治らない。ニーチェは「この世に絶対的な真実などはない、あるのは解釈だ」といっている。その通り、事象をどう解釈するかだ。
意外とわからない自分のこと――それを整理してみたらどうか。
精神科医の田中さんは心に溜まったストレスと上手に付き合う方法を示す。治ってもそれは「治癒」ではなく、「寛解」(病気の症状がほとんどなくなったが、完全に治癒したわけではない状態)。再発・長期化させないよう発想を変えることだ。
早めに対応。しかし焦りは禁物。田中さんは「心のストレス超整理術」を具体的に示してくれる。