20120907それをお金で買いますか  市場主義の限界.jpgありとあらゆる商業主義の実例が出てくる。現実の今の話だ。

医療、教育、スポーツ、出産、子ども、死、臓器、戦争、政治――あらゆるものがカネで取引され、売買されてしまう時代。しかもそれが全方位で浸透している。市場の論理でいけば、こうした取引は問題はない。裁判で争われることはあっても。

しかし経済学的に、問題はないとしても、「これでいいのか」との違和感を多くの人々がもっている。何か違う。これでいいはずがない。マイケル・サンデルは、誰も説明してくれないこれらの問題に「何が問題なのか」と切り込む。この世には「買えないもの」も「買えるがそうすべきでないもの」もあるはずだ。

「善き生とは」「高級な生き方とは」「人間として生きるということとは」「われわれはどんな種類の社会に生きたいのか」――。商業主義に潜む「退廃」「冒涜」「下品」「失望」「汚染」、そして「神聖さ」「精神性」の喪失。

「経済学者的美徳観は、市場信仰をあおり、本来ふさわしくない場所にまで市場を広げてしまう。・・・・・・利他心、寛容、連帯、市民精神は、使うと減るようなものではない。鍛えることによって発達し、強靭になる筋肉のようなものなのだ。市場主導の社会の欠点の一つは、こうした美徳を衰弱させてしまうことだ。公共生活を再建するために、われわれはもっと精力的に美徳を鍛える必要がある」

「われわれが望むのは、何でも売り物にされる社会だろうか。それとも市場が称えずお金では買えない道徳的・市民的善というものがあるのだろうか」と結ばれている。

「拝金主義」とまではいかないが、「美質の国・日本」にも商業主義は浸透してきている。「どういう社会に生きたいのか」ということを考えることだ。「見えざる社会保障」が社会の進展とともに崩れた日本は、その共同性をいかに再建するか、それもまたこうした問題だ。


20120904東日本大震災_国交省.jpg東日本大震災から500日余。発災直後から道路の啓開、命のルートを開いた「くしの歯作戦」、救援ルートの確保や人的、物的の両面から市町村支援に全力を上げてきた国交省東北地方整備局。その活動を記録した貴重な本だ。

重要な働きをしたのは、3.11深夜から直ちに始まった被災市町村へのリエゾン(災害対策現地情報連絡員)派遣。そして「棺桶でも大丈夫ですよ」「私のことを"整備局長"と思わず"ヤミ屋のオヤジ"と思って下さい」という3月21日の徳山局長から被災市町村への文書だ。こんな役所の文書があるのだ。国交省が今回、従来の役所の常識を打ち破って重要な働きをしたことがよくわかる。

東日本大震災は、被災地の方々の頑張り、官も民もボランティアの方々、全ての人間の魂の戦いによって、未曾有の国難を突き破ってきていると思う。今も......。


20120903防災訓練 神谷中①.JPG 9月1日と2日、全国各地で防災訓練が行われましたが、東京・北区では2日、急に雨が降る不安定な天候でしたが、各町会・自治会で、工夫された防災訓練が行われました。

首都直下地震が30年間で70%の可能性と指摘され、先日は南海トラフの巨大地震(M9級)が発生した場合、最悪で32万人の死者、倒壊・消失建物が238万棟、1015平方キロメートルが浸水という被害想定を内閣府が発表したばかり。

しかし、「対策をとれば被害は間違いなく減らすことができる」とも言っています。私が主張している「防災・減災ニューディール」「震度7を想定した全ての総点検」「自助・共助・公助とともに近助が大切」「密集市街地を考え、まず消防バイクやスタンドパイプを」――などを急がねばなりません。

2日の防災訓練では、身近な「煙への対応」「消火器やAEDの使用」「車イスの使い方」「備蓄」をはじめ、「倒壊した建物からの救助」など工夫をこらして行われました。

「災害は現場」「災害対策は実務」、そして「緊急時は日頃からの訓練をしておいたことしかできない」など、まさに自助・共助・近助が重要です。私は党首都直下地震対策本部の総合本部長で、政府にも数々の現場に基づく提言を行ってきました。さらに頑張ります。
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P8300130.jpg30日、北区の企業経営者をはじめとする有志でつくる「北陽会 懇親の夕べ」が多くの方のご参加をいただき行われました。私にとって、この日で前回衆院選から3年――。歯を食いしばる3年でしたし、だらしのない政治を歯ぎしりする思いで見てきた3年でした。この間、真心より支えていただいた方々の集いでした。感謝の気持ちでいっぱいです。込みあげるものがありました。本当に多くの方々のご支援のおかげで捲土重来を期す今の私があります。

「外交問題の噴出」「景気・経済の低迷」「社会保障の不安」「大地震の脅威」――日本は今、壊れはじめている。底が抜けるような深刻な状況に直面しています。これらをもたらしたのは、マニフェスト総崩れ、無策と無責任の民主党政権であり、いまや再建しようとする意志すら見えません。国難に対処すべき時に、何をやろうとしているかわからない、ハンドルを握っていません。「日本再建に全力をあげる。今やらなければ......」――私はそう訴えました。頑張ります。


20120831カラマーゾフの妹.jpg神と人間存在を問うドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の続編を書き、カラマーゾフ事件の真相を究明するというのだから、その勇気にまず驚いてしまう。しかも江戸川乱歩賞だ。物語は「カラマーゾフ事件」から13年後のこと。次兄イワンが未解決事件課の特別捜査官となって、真相究明のために郷里に乗り込んでくる。それに帝国科学アカデミーの会員であり心理学者でもあるトロヤノフスキーが加わる。

無神論者・イワン、そして「天使的」な性格とみられる元聖職者アレクセイ(アリョーシャ)を中心に物語は展開されるが、その命の深淵にはカラマーゾフ家に生まれたばかりのか弱い妹の死がある。イワンの多重人格、アレクセイの倒錯・異常の心の深淵だ。

「カラマーゾフの兄弟」は「大審問官」で神と人間、国家、教会などを圧倒的な力で迫ってくる。重苦しいほど存在そのものに迫る。この「カラマーゾフの妹」は、そうした小説ではないが、「神がいなければ、全ては許される」「神はいない。だから全ては許されている」とイワンとアリョーシャの心因を突きつけつつ、スメルジャコフ、リーザなど関係者の打ちのめされた心理をも加えて謎解きにとりかかる。1800年代後半から立ちあがるニヒリズムと科学をその背景として描いている。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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