「恐慌を突破する逆転の発想」と副題にある。主流派経済学者たちのいう「価格が需要と供給を一致させる市場メカニズムを安定させる」のではない。「資本主義は本質的に不安定なもので、それゆえに金融危機は必ず生じる」と主張したハイマン・ミンスキーの理論、そして米国の世界恐慌脱出におけるマリナー・エクルズの理論を紹介する。
今の日本、このような閉塞感のなかにあるのは、改革が進んでいないからではなく、「デフレ・レジーム」に制約されて、そこから抜け出せないからだ。
デフレが20年も続いているのに、インフレの時に行うべき「デフレ・レジーム」をなぜ続けるのか。栄養不足で体調が悪い時に、なぜ「ダイエットが良い」などといっているのだ。デフレから脱却するための「インフレ・レジーム」へと、ありとあらゆる経済政策の向きを一斉に反転させよ。
インフレ・ターゲティングにも限界がある。あらゆる経済政策を総動員することだ。デフレは、投資や消費を減退させ、需要は不足し、供給は過剰になるが、市場は底を打たせることはない。底なしだ。金融危機(バブルは必ず崩壊するが、金融資本主義は必ず金融危機を招く)、グローバリゼーション、労働市場の流動化、成熟国家の実態経済に内在するデフレ圧力、そして財政均衡論の高まりと消費増税、公共事業悪玉論(非生産性部門の退出)・・・・・・。
全て今の世界はデフレ圧力に満ち満ち、デフレ・レジームから脱出できないでいる。
中野さんは「大それた試み」と思いつつも、国民全体に訴えたいと本書を出版したという。
ゴールデンウイークの後半、地元で街頭演説や諸行事に出席しました。
3日、4日は雨、5日、6日は晴でしたが、いずれも多くの方が足を止めて聞いてくれました。
「民主党政権は党内をまとめきれず、決められない政治となっている」「円高・デフレ・電力不足(への不安)・ガソリンの高騰など現場の悲鳴に応えられない政治だ」「社会保障と税の一体改革といいながら、ただ単なる増税法案が提出されている」「民主党のマニフェスト総崩れはひどいものだが、それは、民主党の経済・財政戦略自体が崩れたということ。何をめざしているかという目標自体がわからなくなっている」――など、さらには憲法や子育て支援について話しました。日本再建――被災地の復興も、景気・経済も、社会保障も、首都直下地震などに備えた防災・減災対策も、決断して進めなければ本当に日本は沈没します。それにしてもこのゴールデンウイークは高速道路の大事故、山での遭難、竜巻の大被害など、全てが変調をきたしている不安を感じる日々でした。1つ1つに対応すること、まさに「今も全力」「政治は結果」が求められていると思います。
頑張ります。
欧州の金融危機は、米国より深刻だった。ユーロの構造的要因が、経常赤字国を追い詰め、欧州金融市場はヘッジファンドの思いのままだ。最終的標的はイタリア、スペインだ。その危機は、財政危機と金融危機の複合危機だ。中原さんはヘッジファンドは「国家の債務+金融機関の債務」を見ているが、次の標的は米国となる。しかし米が、共和党になって財政再建に入ると、次のターゲットは日本になると言う。経常収支が赤字になった時、またモタモタと財政再建に何の手も打たなければ、日本攻撃が始まり、国債は暴落する。
逆説的に言えば、日本が5年も10年も財政再建を放置するなら、ヘッジファンドが早く日本に気付かせてくれる方がよい。ヘッジファンドが日本を救う。日本のやることは明らかだ。大増税と歳出削減(社会保障)をやれば、財政破綻はしない。消費税20%、法人税は20%に下げる。年金は支給年齢を遅らせるだけでなく、税でやれ。景気回復してから財政再建などというが、景気は回復しないからムリな話だ。アイルランドなど、耐えて耐えて、財政再建しているではないか――中原さんは、政治家よ目をさませとガンガン主張している。
「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」「海に渡るにふさわしい舟を編む」――新しい辞書「大渡海」づくりにかけた者たち。松本先生、荒木、馬締(まじめ)、そして西岡、佐々木、岸辺・・・・・・。空恐ろしいほどの熱意、世間でいえば"変人"の馬締が主人公だ。
言葉の持つ力。言葉の重要性。「記憶とは言葉だ。香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがあるが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということだ」「玄奘三蔵が大部の経典を中国語訳する偉業を成し遂げたように。禅海和尚がこつこつと岩を掘り抜き、30年かけて断崖にトンネルを通したように。辞書もまた、言葉の集積した書物という意味だけでなく、・・・・・・ひとの叡智の結晶だ」「言葉があるからこそ一番大事なものが俺たちの心のなかに残った。先生のたたずまい、先生の言動。それらを語りあい、記憶をわけあい伝えていくためには、絶対に言葉が必要だ」――。
辞書づくりという思いもよらない世界を、ここまで書き上げた三浦しをんさん。丁寧に、しかも一気に読ませる2012年本屋大賞受賞作。