ルポ生活保護.JPG 生活保護受給者は近年、急増。80人に1人、150万人にも及ぶ。一方、全ての人が雇用情勢の厳しさや生活苦、低い年金にさらされ、さらには不正受給者もあり、生活保護世帯への納税者の目は厳しい。地方財政の厳しさもある。

 経済的、財政的視点から自立が要請されるが、生活保護受給者になるのは、まさに貧困、病気、教育(親の貧困、低学歴)、低賃金、雇用・失業、非正規労働、低年金など、日本社会の構造的問題の帰結である。たんなる経済・財政の視点のみで生活保護の問題を考えてはならない。社会に参画し、生きがいをもって人と交わるという次元からこの問題を考えないと、社会はつらいものになる。

 本田さんは生活保護を、現場を丹念に歩くなかでルポし、問題の深刻さを剔り出している。そして北海道釧路市の地道な活動は、突き放されがちな生活保護受給者を、社会の中に抱きかかえようとする心の政治をみせてくれている。

「貧困をなくす新たな取り組み」という副題だ。


20101224-book.JPG副題に「グーグルとメディア崩壊」とある。その通り。まさに大きくいえば人類が今、直面している社会の問題は、グーグル・ワールドと報道そして報道機関、 グーグル・ワールドと個人情報、さらに再考を余儀なくされるジョージ・オーウェルの「1984年」の社会――そうした問題だ。テレビ・新聞が消えるかどう か、という次元を越えた、社会の本質的問題が提起されており、そのなかでの報道再生問題だ。

  河内さんは、前著「次に来るメディアは何か」をはじめとして、先行・主導するアメリカの現状とメディア状況を分析し、開示してくれる。今回は金平さんとの 共著だが、更に深く掘り下げてくれている。それはこの一年を見ても「グーグルが新聞救済に動く」「グーグルのプライバシー侵害事件」「アメリカにおける旧 来型メディアの衰退」「新聞社へ公的資金を投入すべきか」から、日本における直近の尖閣諸島における中国漁船衝突事件でのビデオ流出やウィキリークスの秘 密文書公開に至るまで、こうした世界がすさまじく動いているということでもある。日本として、動きながら考え、考えて動け――今が大事だと思う書だ。


20101221-book.JPG  この本は面白い。税のプロ中のプロ、大武さん。本当にわかっている人は、やさしく語れるものだ。企画立案と税務行政の両方を担当しただけに具体的だし、日 本の地域現場や世界を駆けめぐって仕事をしているだけに、「高齢社会」「グローバル化」「資源制約時代」の3つの構造変化にどう税制をつくり直すかという 意欲があり、根源的、本質的だ。「国家の大宗は租税なり」と言われるように、国家戦略的に税を考え、骨太に再建しなければならない。

   「先進国の中で最悪の財政状況」「日本の個人金融資産は預貯金に偏っている」「個人貯蓄は赤字国債に吸いとられ、投資に回らず内需拡大にも回らない」「北 前船はなぜお腹がふくれるような形になったか」「日本は国民負担率38.9%をみても税の安い国、所得税も安い国(中堅所得者の所得税率が1番軽い国)」 「所得と経費の難しさ」「市民権課税と居住地国課税」「グローバル化のなかで法人税は重要」「消費税を増税して法人税減税を(世界同水準に)」「地方法人 税を廃止せよ」「消費税をなぜフランスは始めたか」「米の所得税額控除は生活保護がないから」「相続税を廃止し、遺産税に。高齢社会の現実を直視せよ」 ――主張は明確だ。そして各税制の成り立ちから説き明かしてくれている。複式簿記の重要性の指摘も貫かれている。


20101217-book.JPG  アジアの時代といわれる。低迷する世界経済のなかで、上昇するのはアジアだ。後藤さんはそのアジアの「今」を直視せよという。

  沸騰するアジアであり、急変するアジアであり、各国それぞれ政治的不安定さや雇用・格差など問題を内包するアジアであり、人口動態一つにしても、中国、タイ、ベトナムなどでは人口ボーナスが終わる。
  「人件費の安い生産拠点」「汚職・腐敗・非効率」のアジアへの先入観は捨てよ。製造業と製品輸出のアジアから、消費するアジアへと「双発の成長モデル」へ と変わった。それも富裕層・中流層・BOP(ボトム・オブ・ピラミッド、アジアで20億人の年収3000ドル未満)の三層で新しい需要を考えよ。上から目 線ではなく、協調・共栄のアジアの一員として日本がいい役割りを演じることが、日本のためにもなる――こうしたことを後藤さんは現場を見、数字をあげて活 写する。今のアジアの熱気を教えてくれている。


1707-thumb-240x344.jpg  鎌倉時代の末から南北朝の時代、武装した有力農民・地侍が多く歴史の表に出てくる。源流は古代の力田の輩だが、農耕技術、農業経営にもすぐれた者が力を蓄 え、権力や権威の衰えに乗じて武装して自立する。室町時代に入って農業生産力の高まりで更に力をつけた地侍。応仁の乱のあとの戦国時代、戦国大名は勢力拡 大のため、圏内の地侍を動員した。徳川家康、真田昌幸の家系自体がそうだし、第一章「天地を開く」で紹介される市川五郎兵衛、大梶七兵衛、亀井茲矩(これ のり)から高田屋嘉兵衛に至るまで、全国各地で活躍した人々のルーツを本書は表している。

豊臣秀吉の兵農分離政策や島原の乱には地侍対策があるが、独立自尊、勤勉、剛直、忍耐を背景とする地侍の魂が、下級武士、有力農民、商人となって、日本を現場の中で切り拓いてきている。地域の吃立した地力と自力の戦さ人の歴史群像だ。

柏さんは「大地を自分の足でしっかり踏みしめ、汗を流し掌に血まめを作りながら荒野を切り拓き、創意工夫を重ねて自分の生活を確立する者、それが地侍である」「荒野を開拓して独立し、武装して自由と尊厳を守る――日本人よ、そういう地侍であれ、といいたい」と言う。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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