鳴かずのカッコウ  手嶋龍一著.jpg国際諜報戦争に鈍感な日本。インテリジェンス、経済安全保障の重要性は、「米中衝突の危険」「AI・IoTなどテクノロジーの加速化、サイバー攻撃の激化」を基本構造としてますます増大する。電話・インターネット・無線などを傍受し分析する「シギント」、新聞・雑誌・テレビ等の公開情報を分析する「オシント」、人間力を真髄とする「ヒューミント」。「戦後の日本は、対外情報組織を持とうとしなかった。望まれなかったのだ。警備・公安警察や外務・防衛の情報部門はあるものの、インテリジェンス・オフィサーを海外に配していない。加えて彼らは自らの組織への忠誠心が強い・・・・・・その点で公安調査庁は、政府の情報コミュニティに属しながら人目も惹かず、メディアも関心を払おうとしない。『最小にして最弱の諜報機関』と見なされているが、いつの日か意外に有効な手本として使えるかもしれない」・・・・・・。そんな公安調査庁に目立たないマンガオタクの青年・梶壮太が入庁した。勤め先は神戸公安調査事務所。ある日、丘陵に建つ外国人住宅地をジョギング中、「中国人・中国資本による不動産買収・働きかけ事案」というパソコンの一画面が蘇り、「建設計画のお知らせ」の表示板がフラッシュ・バックする。このことから、北朝鮮の貨物船が戦闘機を密輸しようとした「清川江事件」、神戸の船舶関係のシップキャンドラーに始まるエバーディール社、自動車・トラックの専用船は「死に船」にするが「生き船」にする裏の世界、バングラデシュの「巨船の墓場」、回り回って「空母」に・・・・・・。北朝鮮・中国・ウクライナ、そして米英がからむ国際諜報戦線に足を踏み入れていく。恐るべき世界だ。

「21世紀のグレートゲームが東アジアの地で幕をあけ、日本が米中角逐の新たな舞台となりつつある・・・・・・」「スティーブンは、いま香港のヴィクトリアピークに住み、北京から聞こえてくる鼓動にじっと耳を澄ましている。対決と対話の糸、その意図を精緻に掴むためにも、大陸を望む日本に情報拠点を設け、信頼できる僚友を得なければ――」とこの小説でいう。世界の大変化と激動、その水面下でのインテリジェンスの攻防戦の緊迫が描かれる。

「泣かずのカッコウ」――「カッコウは他の鳥の巣に卵をそっと産みつけて孵化させる。托卵という不思議な習性をもっている。偽装の技や」「俺たちは、戦後日本の情報コミュニティのなかで、最小にして最弱のインテリジェンス機関に甘んじてきた。そのおかげで、同業者やメディアの関心を惹くこともなかった。深い森にひっそりと棲息するカッコウの群れみたいなもんや」。その公安調査庁を描く。


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大塚駅北口が美しく蘇る――。27日、豊島区大塚駅北口駅前広場が整備され、竣工式が行われました。高野之夫豊島区長をめじめとする大塚駅北口、南口の関係者などが出席し、テープカットや光のファンタジーの点灯式が行われました。これには、岡本みつなり衆院議員、長橋けいいち都議会議員とともに参加しました。

大塚駅は、平成21年10月に大塚駅南北自由通路、平成29年5月に南口駅前広場(トランパル大塚)が整備され、このほど、北口側が美しく整備されました。大塚北口商栄会の菊池章二商店会長を中心とした商店会の方々の熱意が実ったもの。

歩道拡幅、バリアフリー化、独自のタクシープール、雨の日でも濡れない都電との連結などが大規模に行われ、夜には光のモニュメントが輝きます。この広場は、ネーミングライツで愛称を「ironowa hiro ba」(いろのわひろば)と定められました。

かつては、池袋よりも賑わいがあった大塚駅周辺が美しく蘇り、地域に大きな喜びが広がる竣工式となりました。


エマニュエル・トッドの思考地図 エマニュエル・トッド著.jpgソ連崩壊、イギリスのEU離脱など数々の予測を的中させてきたエマニュエル・トッド。学術界から反発されていると自ら告白し、激しくマクロンを批判しているエマニュエル・トッドだが、その思考法はいかなるものか。自らの思考法を語り、思考の見取り図を示す。「世界の名だたる哲学者たち、デカルト、カントなどは、私にとっては言葉選びをしているだけ。哲学が現実から完全に離脱しているからだ」「私が研究者人生で何をしてきたか。それは混沌とした歴史のなかに法則を見出すということ」「思考は手仕事だ。コンピュータで書いたことは、切り貼りが何度でも簡単にできてしまう」「考えるのではなく、学ぶのだ。そして読む。歴史学、人類学などをひたすら読み、・・・・・・知らないことを知ったときの感動こそが思考するということだ」「知性には三つの種類がある。処理能力のような頭の回転の速さ、記憶力、そして創造的知性だ」という。

考える際の軸となっているのは「データ」と「歴史」だ。データとはどこまでも「事実からの出発」、観念的哲学やリアリズムを欠いた言説、先入観やイデオロギーなどではない。データをひたすら取り入れ、知識を蓄積する。読んで読んで知識を蓄積していると、ある日突然アイデアが湧く。「歴史」こそが人間を定義する。歴史に語らせるのだ。「人間とは何か」などという抽象的な問いかけから出発すると、どこかで間違える。「人間とはこうである」「人間とは何か」など、ア・プリオリな基盤として歴史的出来事を解釈し、観念から出発すると歴史を見誤る。エマニュエル・トッドの思考法は、徹底したリアリズムを抱く経験主義者であり、イデオロギー・先入観・概念を固定化しない、観念から出発しない、合理主義ではない。経験主義に忠実、徹底して事実(ファクト)を重んじる。何のア・プリオリもなく出発する。

そして「インプット(入力)」「着想」「検証」「分析・洞察」「予測」に至る時間軸をもつ。「ブレーク」「モデル化」「法則」「芸術的行為」と連なっていく。「入力」でいえば、徹底した知識の蓄積、読書、データだ。「脳をデータバンク化せよ。(私の仕事は95%は読書、5%が執筆)(本に書き込み、コメントも書く、手書きはAIにはできない作業)(読んで読んでテーマから逸脱する、逸脱が大切だ)」。そしてデータ収集を積み重ねると「着想」が来る。仮説でもある。そして着想は事実から生まれる。しかも予想外のデータを歓迎する気付く能力の大切さだ。「視点」として、「出発点は常に事実から」「その社会の外側から見る、現実を直視する、アウトサイダーだからこそ見える、外の世界へと出る経験が大切」と語る。納得だ。少しずれている人の方が見えることがあり、「機能しすぎる知性はいけない」とも指摘する。そして「分析・洞察」­――歴史学・統計学の思考、相関係数から読み解く(マクロン票は反ルペン票だった)。最後に「出力、アウトプット」――それは書くこと、話すこと。「書きながら考えない」という。「思想というバイアス」「同調圧力に抗う」「何様のつもりだ、などといわれたが、私の家族から受け継いだ"真実に対する倫理観"だ」「今の大学は知性がフォーマット化され、順応主義を生む所となっている」と手厳しい。データと歴史を蓄積し、とことんリアリズム、ファクト、真実に迫る経験主義者の思考の極意が示される。数々の予測の的中も、マクロンへの厳しい批判も、学術界からの反発も、そこから生まれる。


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木造の12階建て商業施設が銀座に――。26日、東京・銀座で建設が進められている日本初の2時間耐火で地上12階建ての木造商業施設を、稲津久衆院議員(農林水産部会長)、岡本三成衆院議員(国土交通部会長)とともに視察しました。

この建物は木造の太い柱や梁が縦横に用いられ、耐火集成材やCLT(直交集成板)をふんだんに使用し、国産のスギ、カラマツなどを活用しています。木材で問題となる火災についても、約1000℃の火災環境でも2時間燃えない耐火集成材を採用し、耐震においても、制振壁や防振柱などの免震構造になっています。鉄筋と木造のハイブリット建築です。今秋の完成が待たれます。

日本における建築物の木材利用については、私が国土交通大臣時代にも力を入れ、木造の5階建て特別養護老人ホームや3階建て小学校などを建てやすくするために建築基準法を改正してきました。国内における高層の木造建築物は、この3月までに約550棟が建設されており、最近は東京や仙台などで中高層あるいは大規模な木造建築物を建設する動きが進んでいます。木材は断熱性や除湿作用にも優れており、温室効果ガス削減も期待されます。

このような木の空間は人に温もりや癒しを与えるものであり、心地が良く、全国の都市部でも木造建築物が増えていくように、さらにバックアップをしていきます。

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歴史探偵 忘れ残りの記.jpg半藤一利さんが今年1月、亡くなった。絶筆となった「あとがき」で「自分で勝手に生涯のテーマと決めている昭和史や太平洋戦争ばかりではなくて、物書きとなったばかりに新聞のコラムや趣味的な雑誌の連載を頼まれたりすることも多くなった。これまで乱読のお陰もあってか、そこで仕込んだ知識を利用して書くのが楽しくなり、ホイホイと引受ける。・・・・・・ただただ昭和史と太平洋戦争の"事実"を探偵することに若いころから妙にのめりこんできて、一人でコツコツと続けて、いつの間にか90歳の老耄れとなってしまった」「井上ひさしさんが色紙だけに書いたという彼自身の『心得三条』――『むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに書くこと』の秘術を使って書いたエッセイをまとめたものが本書」といっている。「まえがきに代えて」では「生涯読書のすすめ」「悪ガキの少年時代から本好きであった」といい、とにかく人生そのものが、接するもの全てに"好奇心"と"探究心"をもって「時代とともに歩んだ」ことがよくわかる。凄い。

「昭和史おぼえ書き(勅語と詔書と勅諭、上野高女のストライキ、敗戦後一夜明ければ、魔物をつくった人類、神風いろいろ)」「悠々閑々たる文豪たち(隅田川カッパ合戦、ハンケテとハンカチ、欠伸という字、和製漢語のはなし、露伴『五重塔』のモデル、知らぬ顔の半兵衛)」「うるわしの春夏秋冬(『花より団子』のとき、土用の丑の日とは、秋の夕暮れ、師走とつごもり)」「愛すべき小動物諸君(蝉の一声、『狐の嫁入り』とは、本物のハチ号の話)」「下町の悪ガキの船出(悪ガキ時代の言葉、あぐらと正座、向島界隈)」「わが銀座おぼろげ史(無敵鉄牛大行進、アイスクリーム、みゆき通り、仮採用のころと坂口安吾、数寄屋橋、時計のある塔、長井代助と銀座、じじいの嘆き、文士劇、早朝の銀座風景、展覧会紳士、春風銀座乃道)」――。じつに味わい深く、面白い話が続く。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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