41IpzEvfReL__SX317_BO1,204,203,200_.jpg「近代と格闘した思想家」と副題にあるように、ウェーバーは社会科学の基礎を築いた"知の巨人"という以上に、政治的に"血の気の多い"激しい闘争的な人物であった。今年はウェーバー没後100年、しかもスペイン風邪で急死したウェーバーをコロナ禍で振り返り、指摘した問題意識を再考するというのは不思議な巡り合わせでもある。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」等の著作や「合理性や官僚制」「宗教倫理」にふれながら、著者は「ヨーロッパ近代を素描した人という側面にとくに注目しながら、ウェーバーの哲学的・政治的プロフィールを描く、というのが本書の基本コンセプトである」と語る。とくに、「同時代・非同時時代を問わず、比較的多くの関連する人たちに触れながらウェーバーの生涯と思想を描こうとした」とその特徴を語る。ウェーバーの発言と存在が、池に石を投じた如く、人と思想に大きく波紋を広げていく様相が、浮き彫りにされて感銘する。

「政治と宗教」はウェーバーの大きなテーマだが、「政治家になった父と信仰心に篤いユグノーの末裔の母の間の緊張関係は、ウェーバーの基本的な考え方を深く規定した」という。ウェーバーの支配の社会学には、官僚制、家産制、カリスマ、封建制、教権制といった「支配」形態の分析が続くが、日本の社会学者は、戦前・戦中の支配構造を批判的に分析するために強く反応したという。大塚久雄のウェーバー研究は、「国家権力に寄生し、暴利をむさぼる商人たちを『前期的資本』と呼んで批判し、『生産倫理』に支えられた『中産的生産者層』の堅実な生産活動に光を当てようとする」が、かなり特殊日本流だと指摘する。ましてや「プロ倫」を読むことで企業倫理について考えるなどは、西洋からいうと「奇妙に見える」ということだ。大学入学早々、相撲部に入部して部長だった青山秀夫先生の「マックス・ウェーバー」に接した私としては、「政治と宗教」「社会変革と宗教」を考えるにあたって、「エートス」は新鮮で心に刺さった。本書は「あえて大塚パラダイム的な言い方をすれば、いま失われつつあるのは『近代的な価値』それ自体というよりは、むしろそれを支えるエートスの方ではないか」と結ばれている。没後100年で大事なことは「近代と格闘した思想家・ウェーバー」が提起した時代の諸問題に対し、今我々が格闘しているかということだろう。


「働く内閣」「仕事師内閣」を掲げ、菅・新内閣がスタートを切りました。私は18日夜の会合等でも「『働く内閣』で最も働き、最も仕事をするのが公明党議員である」と述べました。

16日に国土交通大臣に赤羽一嘉衆院議員が再任され、18日午後に副大臣・政務官が発表されましたが、公明党からは財務副大臣に伊藤渉衆院議員(新任)、厚生労働副大臣に山本博司参院議員(新任)、復興副大臣に横山信一参院議員(再任)。また、文部科学大臣政務官に鰐淵洋子衆院議員(新任)、農林水産大臣政務官に熊野正士参院議員(新任)、環境大臣政務官に宮崎勝参院議員(新任)で、皆よく頑張る"仕事をする"議員です。


卒寿の自画像.jpg「時代の証言者」(読売新聞の連載)をもとにした中西進先生の半世記。鵜飼哲夫氏が聞き手となってまとめたもの。「やっと私自身も、ある時代を生きて来た、と実感し、これを伝えなければならないのだと自覚をもつに到った。戦争、大学紛争、そしてアナーキーな飽和。そんないびつな三段跳びが、わが半生の中から見えてきた時のことである」と語っている。1929年(昭和4年)生まれで、戦争のなかに青少年時代があった。「体力、身力を養う、それがわたしの究極の持論です」「心の働きにも身体が関わっています。"腹が立つ""腸が煮えくりかえる"など、知・情・意、つまり知性や感情、意思を支えるものが身体の力です」――時代の圧力で刻まれた人生哲学。その身力のおかげで卒寿を迎えられたという。

「青春の自画像の特色の一つが含羞。恥ずかしさ、ためらい、不安感、未達成感があるからこそ、人は奥ゆかしくなり、やさしくなる。反対は傲慢だ」「3歳で詠んだ梅の俳句」「大失敗で学んだ父の『義』」「転校生はいじめられた。痛感した母の愛」「敗戦の日 静寂とカラス。人を焼き日月爛(ただ)れて戦熄む」「短歌に熱中した大学時代」「万葉集は男性的でおおらかで『ますらおぶり』、故郷を離れる心を歌う『防人の歌』をはじめ人間の息遣いを感じられる魅力がある。最初にひかれた家持の歌」「昼は非常勤講師 夜は論文」「初春の令月にして、気淑く風和ぎ・・・・・・。 四季折々に自然が変化する日本、花鳥風月を大切にする日本の文化」「渡来人・山上憶良、中国における"瓜や栗"、"雑"の奥深さ」「平和を願う17条の憲法。和を以て貴しとなす。10条の『怒りを棄てて』『われ必ずしも聖にあらず、われ必ずしも愚にあらず、ともに凡夫のみ(凡夫である自覚が平和の精神の原点にある)』」「『もの』が物語を生み、『もののあわれ』や『もの狂おしさ』を感じさせる。もののあわれを感じない、情緒なき世界になったらとてもさみしいことではないか」「上からは明治などというけれど 治明(おさまるめい)と下からは読む。令和とは上から読めば令和だが 下から読めば和(やまと)し令(うるわ)し」「まねるのではなく取り込むのが日本文化」「トルストイの平和論――クリミア戦争の経験者であるトルストイは『戦争とは平和外交の失敗である』という」「令和とは令(うるわ)しき平和」「日本の平和思想17条の憲法」「戦争では平和は勝ち取れない。仏の教え、宗教心を高め合うことで戦争をなくそうとしたアショカ王。明日香村にアショカ王の碑がある」「大切な令和の精神」・・・・・・。どのページからも日本文化の心が沁み入る。ユーモアを交えての語りがなんとも心持よい。


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菅内閣が誕生――。16日、衆参の本会議で第99代の内閣総理大臣に菅義偉前官房長官が指名されました。「仕事をする内閣」「働く内閣」として各閣僚も決まり、スタートを切りました。昨日、自公連立政権の合意書を交わし、コロナ禍の困難を克服し、産業・雇用を守り、国民生活の支援に全力を上げることを誓い合いました。党として菅新総理の表敬を受けました。


誰もボクを見ていない.jpg2014年3月、埼玉県のアパートで70代の老夫婦が当時17歳であった孫の少年に殺害され、「金目当てだった」と供述した。少年は住民票を残したまま転居を繰り返し、行政が居場所を把握できない「居所不明児童」だった。少年は小学5年から中学2年まで学校にも通わせてもらえず、母親と義父に連れられ、ラブホテルを転々としたり野宿を繰り返し、度重なる虐待を受けていた。義父と別れ、生活費をかせぐために働いても母親は浪費するばかり。「生活費がないのはお前のせいだ」と責め立てられ、事件当日も母親から必ず金を得てくるようにきつく命じられ、借金を断られて、犯行に及んだ。「なぜ17歳の少年は祖父母を殺害したのか」――。裁判や少年の手記までも入れたノンフィクション。

捜査本部の一人は「とにかくひどい事件で、母親に道具のように使われていた少年がかわいそうだった」という。少年は街で見かける貧困児童や居所不明児童に関心をもってほしいと願い、「一歩踏み込んで何かをすることはとても勇気が必要だと思う。・・・・・・やはりその一歩は重いものです」と手記でいう。山寺さんは「少年を助けられなかった原因を公的機関の対応の間違いだけに帰結させ、一方的に批判して終わるべきではないと思う。私たち一人一人が子どもたちを守るという社会での自分の責任を自覚し、行動に移す努力をしなければ、同じような事件を防ぐことはできない」という。「善意を行動で示すのが苦手」「面倒に関わりたくなくて躊躇してしまう」ことになりがちだが「一歩踏み込む」ことの大事さだ。

貧困と虐待――。身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、教育・医療を受けさせないことも含めたネグレクトと経済的虐待。子どもに生計を助ける責任を不当に負わせる経済的虐待とともに高齢者から預金や年金を奪って使ってしまう高齢者虐待もある。子どもが稼いでも、また生活保護を得ても、この事件のように親がホテル宿泊やゲームセンターで使ってしまう極端な浪費もある。アルコールやギャンブル依存の親の問題も大きい。少年のような子どもが「見過ごされない社会」にするには、どうしたらよいのかを突き付ける。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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