ジャーナリストの山峰健次は、第二次世界大戦のフィリピンで壊滅必至の日本軍の士気を鼓舞し、敵中突破させた伝説のトランペットを手に入れる。しかしそれによって"闇の男"に命を狙われ、逃亡することになる。恋人のヴェトナム人女性アインとの出会いと突然の死別。彼女が残した明治初期の凄惨な潜伏キリシタンの受難の記録、長峰もアインも自らのルーツが長崎にあったこと、戦争時にトランペットを所有し軍楽隊として従軍した天才トランぺッター鈴木の煩悶の手記との出会い、トランペットを追う謎のカルト教団・・・・・・。それぞれがからみ合って逃亡劇が展開する。
秀吉以来のキリシタン弾圧と、鎖国、さらに幕末と明治初期の潜伏キリシタンへの迫害・拷問は言語を絶する。「神はなぜ沈黙するのか」――。ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」や遠藤周作の「沈黙」の問いが想起される。そしてあの戦争の悲惨と理不尽――。日本軍と前線に送られた兵士や日本人慰安婦とトランペット。こうした信仰、戦争、愛(御大切)を描く。
サスペンス「逃亡者」とは全く違った究極の人間存在を問いかける。
病院や介護老健施設など手広く事業を行っていた矢神康之助、その莫大な資産を受け継いでいたその長男・康治。それを受け継ぐことになっている直系の孫の明人。康治が病で亡くなろうとしており、矢神一族が集まるが、明人は米国で仕事に忙殺されているという。代わりに現われたのが、明人の妻を名乗る楓という女性だった。ところが彼女は「明人君、行方不明なんです」と父親が異なる義兄の伯朗(旧姓の手嶋に戻った)に助けを求めてくる。伯朗は積極的な楓にぐいぐい引っ張られ、矢神家の遺産と謎、急死した母親・禎子の真実に迫っていくことになる。
よくある名門一族の遺産をめぐるゴタゴタ劇かと思いきや、全く違った展開を見せる。売れない画家であった伯朗の父・一清が最後に描いた不思議な絵。伯朗の母が言った「貴重なものを康治さんから貰っている。貴重すぎて手に余るほどだ」という宝物の正体。サヴァン症候群、フラクタル図形をめぐる康治の研究。一族に秘められた謎の真実とは・・・・・・。
この10月から始まったテレビドラマ「危険なビーナス」。妻夫木聡(伯朗)と吉高由里子(楓)がこの「三十億の遺産をめぐる"危険な"ラブサスペンス」を演ずるが、心理戦が多いので、映像にするのには相当苦労したのではないかと思う。
19日、千代田区の国立千鳥ケ淵戦没者墓苑で開かれた終戦75年の節目の年の「秋季慰霊祭」(同墓苑奉仕会主催・津島雄二会長)に公明党を代表して出席。戦没者のご冥福をお祈りし、献花しました。
式典には、秋篠宮皇嗣同妃両殿下、内閣・国会議員、遺族の代表らが参列しました。
「林大幹先生(国務大臣、環境庁長官)は、このたび――永遠の心を求めて――『孔子とその学問』と題する著作をものにされました。安岡正篤先生の高弟として、お若い時からその薫陶を受けられて、孔子の思想、儒学の大系、東洋的な物の見方、考え方に精通した泰斗であられます」と、平岩外四氏が序文を寄せている。
「人間の本性とは人間に備わっている『徳』を指す。人間はこの『徳』を抱いているがゆえに他の万物との『別』を保てる」「『人間はつねに孤(一人)に非ずして、群(集団)である(荀子)』との認識に立って個人が自分及び社会に対して果たすべき責務と個人と社会との在るべき姿を示した教えが儒教」との骨格をまず明らかにする。そこから他を思いやる心情の「仁」の徳(仁は人プラス二から成る)、正しい秩序を立てる基準が「礼」の徳(調和の徳)、集団生活には変わることのない不変の原則を確立することが不可欠であることから「信」の徳、行動規範としての「義」の徳、温故知新の未来への創造である「智」の徳。――この「五つの徳」を根本として生きていく。そこから「永遠の心を求めて」「永遠の生命・道と徳」と本書の骨格が語られる。
「吾が道、一以て之を貫く。夫子の道は忠恕のみ」「君子は和して同せず。小人は同じて和せず」「為政者の五つの徳――威・愛・清・簡・教」「東洋政治では道徳と政治は不即不離のものとし、一体観で貫かれており、すべての人が所有している徳性を、最も善く鍛錬した人物(道徳的・精神的に人格を陶冶した賢者)が政治の衝に当たるべきとした」「政治も経済も文化・芸術も、その根底にある人間の心・精神によって支えられておることを知らねばならない」「道徳を基本としない政治は王道を捨てた覇道であり、権力政治である」「才能よりも有徳の政治」「君子は言・訥(ひかえ目)にして、行敏ならんことを欲す」「巧言令色・鮮い(すくない)(鮮度の保たれている期間は短い)かな仁」「文・質・彬々(ひんぴん)――外形と内容は一体。質とは人間の内容である徳」「之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずとなす。是れ知るなり」「徳は孤ならず、必ず鄰(となり)あり」・・・・・・。平成5年に出版された著作。