脳科学者・黒川伊保子氏の「夫婦脳」「恋愛脳」「女の機嫌の直し方」をはじめ、「女はなぜ突然怒り出すのか」など女性と男性の脳の仕組みの違いから、男と女、夫と妻の上手な付き合い方を示唆する著作は多い。なかでも本書はきわめて簡潔でシャープに妻の不機嫌や怒りの理由を解き明かす。
テーマとなるのは「男性脳」と「女性脳」の本源的な違い。「女性脳は、右脳と左脳をつなぐ神経線維の束である脳梁が男性に比べて約20%太いので、生まれつき右左脳の連携がいい。右脳は空間認識や音楽的な感覚など"感じる力"を担当し、左脳は言葉や計算、論理的な考え方など"考える力"を担当する」「右左脳の連携のいい女性脳は、直感力にすぐれ、今感じている気持ちがすぐ言葉になる。目の前のものを舐めるように見るので、子どもの顔色のちょっとした変化なども見逃さない」「男性脳は奥行き認識が得意なので、空間認知力が高く、遠くや全体がよく見えるが、目の前の観察力は低い」「女性脳は"心の通信線"と"事実の通信線"の2本を使って会話をする(男性脳は事実の通信線のみで、"それ違ってる"といきなり結論)。妻の心の通信線、心根を肯定することが大事(気持ちを否定しないこと)。君の気持ちはわかるよ、が大事」「女性脳の最大の特徴は共感欲求が非常に高い。正義や結論でなく"わかる、わかる"の共感でストレス信号が沈静化する」「いくつになっても愛の言葉が欲しい女性脳」・・・・・・。
そして日本は、熟年離婚が急増しており(この人と一緒に今後の人生を歩んでいく自信がない)、日本人男性の心の依存度は1位が配偶者・パートナーで78.8%なのに、日本人女性は1位が子どもで65.0%だという。
日本に住む中国人が急増し、2017年末で約73万人、在日外国人全体(約256万人)の約3分の1を占める。短期や公務での滞在者を含め約87万人、日本国籍の取得者(帰化者)を含めると約97万人。2000年は約32万人だったから3倍。もう「不法滞在者が多い」などは昔の話、川口市や蕨市の芝園団地、横浜中華街などは中国人率が圧倒的に多い。しかもこの数年、中国企業は給料も上昇、自信に満ち、IT・キャッシュレス経済などは一気に進んでいる。当然、日本に住む中国人の意識も数年前とは激変しているが、本書は、その中国人は日本に来て、「どの街で、どのように暮らし、何を考えているのか」をルポする。
「なぜ1つの団地に集中して住むのか(安心できる、母国語で情報を得やすい)」「中国人が多い所には住みたくない中国人もいる」「北京・上海のマンション高騰。戸籍も複雑。日本は買いやすい」「日本に持ち込まれた"コミュニティ"の構造、血縁がなければ地縁に頼る」「駆使されるグループチャット」「アリペイとウィーチャットで巧みに商売展開」「勉強に駆り立てられる人々、人気の30分で名著のサマリー」「母国の変化についていけない――日本で抱く危機感」「全国から入学希望者の殺到する中華学校(横浜大同学校)、日本には中華学校が少ない、池袋の同源中国語学校」「ゆるすぎる日本の教育、厳しい中国の大学受験競争、中国の受験競争を避け日本に来る人も、子どもが宿題をやらなければ親のメンツが立たない」「広がる"越境EC"ビジネス」「マスコミを信じない中国人と信じる日本人」「北京ダックも日本と中国は違う」・・・・・・。
日本人と中国人は同じような顔でも違う世界に住み生きてきた。日頃から会社や学校で机を並べていてもコミュニケーション・ギャップは変わらないという自覚が足りない故に誤解を生む。"中国人"といっても中国は広大な国で、地域や都市、学歴、年齢など断層がある。1人が中国を代表するものではない。だが、競争の激烈な中国とゆるく優しい日本では疲労度も違うようで、どの国を選択するかという時代に突入したようだ。「真正面から彼らと向き合っていこう」と著者はいう。