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党東京都本部・夏季議員研での講演(要旨)/静岡県立大学 小川和久特任教授
23日に開催された公明党東京都本部の夏季議員研修会で、静岡県立大学の小川和久特任教授が「日本の平和と公明党の役割」と題して講演した。その要旨を紹介する。
■(台湾有事)侵攻する軍事力は中国にはまだない
関心の高い台湾有事を題材にして中国の軍事力の読み方、そして外交・安全保障で公明党がやるべきことを述べてみたい。
米国のペロシ下院議長が2日に台湾を訪問した。中国は反発してみせたが、本当に怒っているわけではない。日本の新聞は、中国が「台湾を封鎖する」などと書き、中国が実施した軍事演習についても、日本のEEZ(排他的経済水域)内にミサイルを撃ち込んだことで大騒ぎした。しかし、これはミサイルを発射するほかに中国には強硬姿勢を示して抗議する手段がなかったからだ。中国はまだ、台湾に侵攻するほどの軍事力を備えていない。
ペロシ訪台について米中首脳は7月28日に電話会談し、習近平国家主席は「行くな」と訴えたが、同時に「米国と戦争をするつもりはない」とも言っている。この点が大事だ。習主席は秋の党大会での続投問題を抱え、国内世論に対して弱腰を見せられないが、米国と戦争するわけにもいかない。ある意味、米国とあうんの呼吸で対峙したことになる。
ただ第一線部隊の緊張感は相当に高まっていた。ペロシ下院議長の乗機は、中国が岩礁を埋め立てて飛行場を造っている南シナ海上空を避けて飛行したが、米空軍のF15戦闘機18機が護衛し、戦闘になった時のために空中給油機5機も随伴した。それでも中国機はペロシ機を追尾したが、米軍機が電子妨害をかけ、断念することになった。
軍事演習後も中国は台湾の防空識別圏に軍用機を侵入させているが、実は、飛んでいるのは日本から遠い場所だ。もっと日本に近い場所は、中台の軍用機が接触したら、たちまち日本領空に入り紛争になるからだ。それほど沖縄と近い。中国もまた「台湾有事は日本有事」になることを知っているのだ。その現実を踏まえ、日本も「この地域で火の粉が散るようなことはやめよう」と伝え続ける必要がある。
中国の軍事力は巨大だが、3隻目が進水した航空母艦もまだ使えないのが実情で、台湾封鎖などあり得ない。
米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官が昨年3月、上院軍事委員会で「台湾に対する脅威は6年で明白になる」と言ってメディアは飛び付いたが、その後、米軍トップのミリー統合参謀本部議長が「そんなことはない。中国が台湾侵攻の能力を持つまでには、まだ道のりは長い」と否定した。その発言には根拠がある。台湾に上陸し、占領するためには最低100万人の陸軍部隊と1週間分の弾薬、燃料、食料を運ぶ海上輸送能力が必要だが、それが中国にはないからだ。
しかし、私は中国軍との長い付き合いの中で中国側の考え方も聞いている。台湾への上陸作戦は失敗するし、50年、100年、国際的に孤立するだろうが、台湾が独立を宣言し、中国のメンツがつぶれたら戦争に訴える。そのとき日本にも火の粉が降りかかるだろう。だから、台湾独立をあおるような言説を、特に日本の政治家は控えてほしいというのだ。日本が米国、中国、台湾を相手に外交を進める上で押さえておくべき点だろう。
■(安保戦略)ハイブリッド戦の兆候あれば対処を
意外かもしれないが、中国は熟した柿が手の中に落ちてくるような形での台湾統一をめざしている。軍事優先ではない。
最近では、軍事面だけでなくあらゆる分野で攻勢をかけるハイブリッド戦争という考え方が注目されているが、これは、もともと古代中国の戦略の書である孫子の兵法だ。それを元に中国の軍人が「超限戦」という本を1999年に書いた。宗教だろうが思想だろうが全てを兵器として戦うというすごい内容だ。それを受けて三戦(輿論戦、法律戦、心理戦)を軍の任務に加えた。これは「砲煙の上がらない戦争」と言われ、「戦わないで勝つ」考え方だ。中国が軍事力を限定的に使うとしたら、台湾に中国の傀儡政権ができて独立派との間で内乱状態になったときで、国連安保理が動かない中で中国の台湾支配は既成事実化していくだろう。
そうならないように日本はどうすべきか。ハイブリッド戦の兆候が現れたら日米が日本の国境の内側に部隊を緊急展開する訓練を常に見せつけておくことが有効だ。それが中国に軍事力をためらわせる。これが抑止力だ。それを実行しなくてはいけない。
むろん、中国軍に台湾侵攻の能力がないからと言って、安心してはならない。中国はできることを着実にやっている。だから、中国に追い付かれないよう、水をあけ続けるよう、日米が協力して取り組まなければならない。
■見せつけた米軍の凄み
中国には空母キラーという対艦弾道ミサイルがあるとか、ステルス戦闘機があるとか騒がれるが、その一つ一つを見るとまだまだ使い物にならない。軍事的なインフラ(基盤)が整っていないからだ。一番象徴的なのはデータの中継能力だ。米国はデータ中継専用の人工衛星を15機、中継能力のある他の衛星15機の合計30機を軌道上に展開しているが、中国は5機にすぎない。
実を言えば、米軍はペロシ訪台でもすごみを見せつけた。空母1隻と強襲揚陸艦2隻を派遣したが、3隻で合計88機の戦闘機を搭載していた。これはオランダの空軍力と同じだ。さらに中国が圧力を感じたと思われるのは空中給油機だろう。今回、米軍は空中給油機を37機展開した。この空中給油能力があれば、延べ370機の戦闘機を満タンにできる。中国にはその能力はない。作戦面でどんな意味があるか、プロなら分かる話だ。
とにかく、中国の国家目標が2049年にあることを忘れてはならない。建国100周年のその時までに米国を追い越そうと、着実に歩みを進めている。今回の軍事演習を見てメディアは驚いているが、中国は無理をして転ばないように安全運転をしているのが実情だ。その中国をより安全にしていくのも日本の役割である。
■(党への期待)対中外交で国益を主張して信用築け
このような安全保障環境の中で公明党に期待することは何か。12月に向けて政府は「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の安保3文書を改定するが、文書を改定したり、法制度を制定しても形だけに終わるのが日本の常だ。公明党はその点をきちんと詰め、必要なことを実現して日本の国と国民を守ってほしい。
いま最も重要なことは、「今そこにある危機」に何も対応していない日本の防衛論議の欠陥を克服することだろう。
「今そこにある危機」に対して必要なのは、まずはミサイル防衛だ。イージスアショア(イージス艦搭載のミサイル防衛システムの陸上配備型)が防衛省のミスで白紙撤回された後、代替案としてミサイル防衛専用のイージス艦を造るという。しかし、これでは運用開始まで10年以上かかる。それまで裸同然でいるというのか。何の危機感もないと言わざるを得ない。
不思議なことに、日本の政治家や官僚には同盟関係にある米国と装備を融通し合うという発想がない。例えば、米国からミサイル防衛能力のあるイージス艦を2隻借りて、イージスアショアの配備予定地だった秋田、山口両県の沖に展開する。運用は米軍と民間軍事会社が行い、経費は日本が出す。日本のイージス艦は8隻だが、米国のイージス艦は89隻。うち60隻はミサイル防衛能力のあるBMD艦だ。日本と同じ戦線にいる友軍と協力するという発想があれば、そのようにするだろう。
シェルター整備も急ぐ必要がある。核シェルターではなく通常弾頭のミサイルの破片から国民を守るもので、普通の建物の1階と地下、そして地下鉄をシェルター化することだ。これだけで国民の被害は大幅に減る。
■敵意が生じない関係に
私が特に公明党に期待したいことは中国との関係だ。日本は中国と国境を接しており、対中姿勢が米国と同じで済むわけがない。そこにおいては、安全保障の原点に立ち返って、中国が脅威にならないよう、日本の姿勢を決める必要がある。脅威とは、意思と能力を合わせたものだ。中国に日本への敵意(意思)があって、日本を攻撃できるだけの軍事力(能力)があれば、それはまさしく脅威だ。
そこにおいては、まず敵意が生じない関係を築く。これは日本側からできないわけではない。もちろん、こびる必要はない。中国が日本と関わらなくては生きていけないような分野で戦略的に関わる。そうすると敵意は生じにくくなる。
軍事力の方は、中国も着実に米国の後を追っているのに対して、日本も着実に防衛力整備を進め、米国との同盟関係を日本の考え方にふさわしい格好に強化していけばよい。
これは中国と本音で話をできる政党でないとできないことだ。公明党しかないではないか。「中国と仲がよいから中国の手先だ」などと言う人には言わせておけばいい。日本の国益に立って向き合うことが重要だ。
そういう考え方を最も理解できるのは米国と英国だ。国際社会では国益を主張しない国は軽蔑されるし、信用されない。しかし、日本は主張することが苦手だ。中国との関係において、公明党が大きな役割を果たすことを期待したい。
おがわ・かずひさ 1945年生まれ、軍事アナリスト。外交・安全保障、危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査など歴任。2012年4月から現職。
各地で活発に夏季議員研修会
研さんに励み議員力磨こう
■中国方面で太田顧問
公明党中国方面本部(本部長=谷合正明参院幹事長)は21日、広島市内で夏季議員研修会を開催し、太田昭宏常任顧問が講演した。斉藤鉄夫副代表、谷合本部長をはじめ、日下正喜、平林晃の両衆院議員、山本香苗、山本博司の両参院議員が出席。伊藤孝江参院議員がオンラインで参加した。
太田常任顧問は「大衆とともに」の立党精神が示されてから9月で60年の節目を迎えることに言及。公明党議員のあるべき姿勢について、「現場に入って、現場の空気を感じ、困っている人の話を聴き、何を優先すべきか考え抜いて解決に向かって手を打っていくことが大事だ」と強調した。
研修会では、石橋広信・島根県出雲市議、竹之内則夫・岡山市議、道法知江・広島県竹原市議が活動報告した。
編集メモ/立憲など野党の公約 無責任な消費税率の"引き下げ"
しかし、
実現可能な代替財源もなく消費税率引き下げを掲げる各党の無責任
しかも、野党各党はこれを物価高騰対策としているが、
さらに、近く税率が引き下げられるとなれば、買い控えが始まり、
余りに出来の悪い政策に立憲の党内からは異論が広がっているよう
消費税は社会保障を維持するための貴重な財源だ。
物価高から生活守る公明党
■現場の声聴き先手打つ
公明党は物価高から国民生活を守るため、3月17日、「
現場で聴いた声を基に、2回にわたり政府に緊急提言を行い、
■ガソリン補助金を拡充
ガソリンや軽油、灯油、重油といった燃油価格を抑えるため、
価格抑制効果について、資源エネルギー庁の直近の発表によると、
また、国際比較では、
■食料品の値上げを抑制
輸入に依存する食材や食品の価格高騰は家計に大きな影響を与えて
政府は公明党の提言を踏まえ、
輸入小麦については、国際価格が2~3割上昇する中、
さらに、秋に向け、
■公共料金の負担を軽減
生活に欠かせない電気・
電気料金について、日本は燃料価格が上昇しても、
水道料金についても、公明党が進めてきた、
■困窮者支援きめ細かく
生活困窮者に対しては、
また、公明党が強く訴えて実現した、
タイムラインで命守る/水害などに備えた防災行動計画
「いつ、誰が、何を」明確化
梅雨の季節となり、風水害が起きやすい時期に入った。こうした災害から命を守るための重要な備えが、「タイムライン」(防災行動計画)の活用だ。普及をめざして先月10日、全国34市区町村の首長らが参加する「国民会議」も設立された。タイムラインの活用例や公明党の取り組みとともに、国民会議の発起人である東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターの松尾一郎客員教授のコメントを紹介する。
■三重・紀宝町、早めの避難を促し被害抑制
タイムラインは、豪雨や台風といった災害を想定し、行政や住民らが命を守るために取るべき防災行動を「いつ」「誰が」「何を」という視点で時間軸に整理したもの【図参照】。いざという時の行動や役割を事前に決めておくことで迷わず動けるようにする。
2014年に自治体で初めてタイムラインを導入した三重県紀宝町は、同年の台風18号(10月6日上陸)で試行運用を行った結果、従来よりも各課の動き出しが早まり、住民への早期避難の呼び掛けがスムーズに行えたという。主な動きは以下の通り。
<10月2日午前9時> 「4日後に台風最接近」の予測を受けタイムライン始動
<3日午前11時> 熊野川堤防の対応を国と協議し、地元消防団に伝達
<3日午後5時> 避難行動要支援者への対応を福祉課などで協議
<4日午後1時> 自主防災会や民生委員に対し、避難所開設や早期避難の呼び掛けを依頼
<5日午前11時> 住民が自主避難を開始
◇
紀宝町は、この試行運用以来、台風や前線の動きに合わせてタイムラインを計36回活用してきた。運用を繰り返す中で住民の意識が変わり、大規模な地滑りが発生した20年10月の台風14号の際には、早期避難によって人的被害をゼロに抑えるなど大きな効果を発揮している。
同町防災対策室の担当者は、「毎回、皆で対応を振り返り、改善を重ねてきた。タイムラインに完成はない」と話す。
■骨太方針に"充実強化"/政府、公明の提案受け盛り込む
7日に閣議決定した政府の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)には、公明党の提案で「地方自治体によるタイムライン防災の充実強化を図る」と明記された。この記述は政府原案にはなかった。
公明党はタイムラインを活用した防災対策を早くから推進。14年4月には、当時の太田昭宏国土交通相のリードで、同省として全国の国が管理する河川でタイムラインの策定を進める方針が決定。これに呼応して、公明党は政府への提言などで、国が主導して自治体の策定を促すための取り組み強化を主張。地方議会でも公明議員が自治体によるタイムラインの策定を後押ししてきた。
その結果、これまでに国が管理する全国109水系の730市区町村で、避難に着目した水害タイムラインの策定が完了している。
■どの政党よりも熱心に推進
東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター 松尾一郎客員教授
タイムラインの取り組みが国内で始まって約8年、今では全国の自治体や地域、家族などさまざまな単位で運用されている。台風や豪雨から人的被災を防いだ事例もある。タイムラインを作り、きちんと使えば、確実に命を守ることができる。
先月、設立された「国民会議」は、タイムライン防災について全国の自治体の経験値や教訓を共有する場になる。この国民会議に多くの自治体が連なり、タイムライン防災の輪がさらに広がることを願う。
命を守る政治を貫く公明党は、どの政党よりも早く、熱心にタイムラインを推進してくれた。高く評価している。今後は、町内会など地域で作る「コミュニティ・タイムライン」を広げてほしい。20年7月に甚大な豪雨被害に遭った熊本県球磨村では、このコミュニティ・タイムラインによって100人以上が早期に避難できた。
タイムラインは作るだけでなく、使い続ける癖を付けることが重要だ。そのためには、タイムラインに精通した防災士などの地域人材の育成も急がれる。公明党のさらなる後押しを期待している。