「こんなにも世界は音楽に満ちている」――。宇宙の深遠、自然のなかでの息づかい、生命の鼓動が伝わってくる。光と音と静寂。自然との対話。心通う人間の覚醒と蘇生。心の中の大きな景色を弾き出すピアノ・・・・・・。ピアノコンクールを舞台にして、若者の伸びやかな感受性と未来性が輝きわたる広がりある傑作。
養蜂家の父とともに各地を転々、ピアノも持たず、常識を覆す破天荒な演奏で衝撃を与える破壊力抜群の天才少年・風間塵16歳。天才少女としてデビューしながら、母の死とともにピアノが弾けなくなってしまった栄伝亜夜20歳。名門ジュリアード音楽院の俊英・マサル・C・レヴィ・アナトール19歳。そして音大出身で妻子持ちのサラリーマン高島明石28歳。芳ケ江国際ピアノコンクールに集った若者が才能をぶつけ合い競い合う。互いが刺激を与え合い、化学変化を起こして高めていく臨場感と緊迫感はすさまじい。すがすがしい人間讃歌が響く。
国連PKO幹部として東ティモール暫定行政府の県知事を務め、シエラレオネでは武装解除を行い、アフガニスタンでは日本政府特別代表として武装解除を行ってきた伊勢崎賢司氏。それだけに全く学者の論評とは違う。現場の赤裸々な実態と武装解除等の実際の呼吸や間合いが伝わってくる。「グローバルテロリズムの震源地」のタリバン、アルカイダ、米国などの姿も生々しい。
グローバルテロリズムには、(1)インサージェンシーとしてのグローバルテロリズム(2)現場は先進国でIS的なものを標榜するホームグロウン・テロ――という2つの様相がある。グローバルテロリズムは、この2つの世界を自由に行き来する非常に厄介なものだと指摘する。「日本はもっとテロの脅威を自覚すべきだ」「日本には54基の原発が海岸線沿いにずらりと並んでいる」――。テロリズムは対岸の火事ではない。どう脅威に立ち向かうか。テロに対峙する憲法9条とは・・・・・・。かなり踏み込んで語っている。
副題は「2030年雇用大崩壊」。今、最も重要な問題の一つは、IoT、AI、ロボット、第四次産業革命等々が、どの程度のマグニチュードで世界を激変させるか、ということだ。そのスピードの速さを思えば、政治は逸早く備えなければならないと思う。
第三次産業革命(パソコン、インターネット)を1995年とすれば、第四次産業革命(汎用AI・全脳アーキテクチャ)は2030年頃から助走が開始されて2045年には本格化、2100年頃に全脳エミュレーションの時代になるという。そして2030年頃を境にして、それ以前を「特化型AIの時代」、それ以降を「汎用AIの時代」と位置づける。汎用AIは、人間と同様に多くの知的課題をこなすし、経済構造を大きく変える。
「2045年までにAIが人間の知性を超える、には懐疑的だ。機械任せにすることができない程度にしかAIは発達しないだろう」「全脳エミュレーションの方は、国際条約で禁止して、全脳アーキテクチャ方式でのみAIを開発するようにした方がよい」「第四次産業革命に成功した国が、次代のヘゲモニー国家になる」「汎用AIが2030年頃から実現すると、人間の労働需要は減少していく」「全人口の一割しか働かない未来が来る(創造的、ホスピタリティの高い人間が働く)」「労働者の多くが雇用されず、汎用AI・ロボットが生産活動に全面的に導入される純粋機械化経済に移行する」「急速にあらゆる雇用が失われ、資本家の取り分は大きくなり、労働者の取り分は限りなく小さくなる」「そこで大事になるのはBI(ベーシックインカム)だ」・・・・・・。
具体的に減少していく仕事の例や、未来の生活、そして多くの学者等の論述を引きつつ、わかり易く解説・提言をしている。