「日本の近代史で最も重要な人物五人を挙げるとすれば、福沢諭吉、西郷隆盛、原敬、北一輝、昭和天皇だろう」と松本健一さんはいう。
「原敬(たかし)が直面したのは近代民主政治、つまり主権在民の政治と主権が天皇に在る明治憲法との矛盾である」「北一輝という革命的ロマン主義者と原敬という稀有な保守的現実主義者との対立は、大正という時代の矛盾そのものであったかもしれない」「原敬はまさしく、現実をあるがままに見るリアリズムの政治家であった。そして、その現実主義のうえに立って国家統治をプラグマチック(実務的)に処理していこうとした」「国家は伝統(道徳や宗教や慣習)を引き受けつつ、漸進的な改革を行い、そのことによって社会秩序を維持しなければならないというのが、彼の保守主義であった」「大正時代に最初の政党内閣を組織した原敬は、西洋近代文明を議会、民主主義、政党政治で具体化、定着させた。藩閥政治を抑え軍閥政治の危険性を見抜き、軍部が天皇の名を利用し独走するのを防ごうとした」――。
明治維新から明治、そして立憲政体、国会開設運動。大隈重信、伊藤博文、陸奥宗光、山縣有明、西園寺公望、後藤新平、桂太郎・・・・・・。原敬の「政治は力である」は政党に結集する力を源泉とするが、藩閥と戦い、寺内内閣のシベリア出兵と戦いつつも、時には現実主義の欠陥もさらけ出す。激流の時代のなかで、堅固な意思と柔軟性をもって厳と立つ丈夫あってこそ社会の安定は築かれる。そして大正から昭和へ。大衆共存党(永井柳太郎)に現われる無産大衆の生活不安からの解放を志向するファシズム革命思想の流れのなかから大正10年の安田善次郎刺殺、原敬暗殺が生まれたという。凄みを感ずる大作、力作だ。
11月30日、秋田県へ行き、日本海沿岸東北自動車道(通称、日沿道)の大館北・小坂間(16.1㎞)の開通式に出席。さらに、開通に合わせて工場立地が急ピッチで進む工業団地を視察しました。
日沿道は、秋田県から山形県、新潟県に至る日本海沿岸の国土軸を形成する重要な道路。今回その北側の起点となる大館北・小坂間が開通し、これまで高速道路がなかった大館市が、東北の大動脈である東北自動車道に一気につながりました。大館市、小坂町は、秋田市、青森市、盛岡市のちょうど中間にあり、これからは北東北の中心として重要になります。
開通式で私は、「本格的に雪が降る前に開通の日を迎えることができて、地域の皆さんに大いに喜んでいただけると思います」と挨拶。地元の佐竹敬久知事、小畑元大館市長、細越満小坂町長から、喜びと感謝の挨拶が続きました。
この道路の開通による大館市の経済効果は絶大です。開通に合わせるように工場進出が進み、昨年は12社15工場が新たに立地。新規雇用も増え、高卒求人倍率は全国平均の2倍の多さです。これからもレアメタルのリサイクル産業や広域観光などで、地域にますます活気が出ることが期待されています。進出工場の一つ、医療機器メーカーのニプロ(株)の小林工場長からは、「高速道路を利用して、太平洋側の港からも日本海側の港からも、全国、さらには世界に向けて輸送できるので利便性が高まる。命に関わる製品を安定的に供給できる」と説明がありました。
道路がつながりネットワークができることによる地域の皆さんの喜びを強く実感しました。

