森羅万象の現象を如実知見するのは、宗教・哲学の究極だが、まさにその生命・世界を科学によって迫り、解明する。世界はリズムの動的世界だ。胸の鼓動、呼吸、体内時計、歩行、鳥のはばたき、ホタルの明滅、虫の鳴き声、時計の刻みと音、バイオリンの弦の震えと音、季節の移り変わり、潮の干満、昼夜のサイクル、天空の動き・・・・・・。命あるものも無いものも、リズムがある。そして、リズムとリズムが出会う。そこに、不思議な歩調を合わせるリズムが刻まれる。それが「同期現象」「シンクロ現象」であり、「引きこみ」が起きる。
学生時代、耐震工学を専攻し、「地盤と構造物」全体の力と変位が比例しない「非線形振動(震動)論」を研究した。本書はとにかく幅広く、まさに森羅万象の諸現象を「身辺に見る同期」「集団同期」「生理現象と同期」「自律分散システムと同期」などで分析してくれる。
「ミレニアム・ブリッジの騒動(歩行の同期)」「電力ネットワーク」「結合振動子系としての交通信号機ネットワーク」など、現在、関わっている問題も開示してくれている。
冒頭の「そう、これは個人的な復讐ではない・・・・・・むしろ善意の告発というべきだ・・・・・・カタストロフィを引き起こすには二つの条件が必要だ・・・・・・ひとつは対象の本質に精通していること・・・・・・いまひとつは現象を再現する手段があること・・・・・・私は今、その両方を手にしている」――。読み終えればここに全てがあることがわかる。
防衛省技術研究本部が開発し、四星工業が設計、製造したTF-1が、侵入機にスクランブルをかけている途中、墜落する。それも2度、そして3度とそれぞれ別の要因で墜落、あるいは危機にさらされる。当初、パイロットの操縦ミスとされたことに疑問をもった四星工業の空力制御班主任・永田昌彦、そしてその部下の元気で探究心旺盛な女性・沢本由佳(主人公)。四星を去った永田の同期・倉崎、元自衛隊員・山岸光昭、そして自衛隊の後藤、岩谷、井口、事故当事者の波江一尉・・・・・・。真相に迫るこれらの人の連携、技術的知見は現場感覚もあって、臨場感、緊迫感が横溢する。面白い。本当に悪い奴は犯罪者となることを免れるようだ。
航空機の専門家でなければ到底書けない作品。興味深かった。第21回松本清張賞受賞作品。
中村元、1912年(大正元年で元と命名)~1999年。昏睡状態での45分の"最終講義"。植木さんは中村元は何を語りたかったのであろうか、と考える。「やはり中村自身が"夢"としていた普遍的思想史についてであり、東洋思想の積極的な評価を打ち出すことであったのではないか」――。「西洋においては絶対者としての神は人間から断絶しているが、仏教においては絶対者(=仏)は人間の内に存し、いな、人間そのものなのである」(中村元「原始仏教の社会思想」)。「人間の平等」の東西比較だ。
「80歳を過ぎると、やはり徹夜はこたえますね」「人生において、遅いとか早いとかということはございません。思いついた時、気がついた時、その時が常にスタートですよ。("今まさにその時"の生き方)」「慈悲、慈しみの崇高な境地」「『諸法』は『たもつもの』を意味するダルマの複数形ダルマーハの漢訳で『もろもろのことがら、事象、現象』を意味する。いかなる事象にも、その背景において『たもつもの』があると考えているのです。その『たもつもの』によって事象が成り立っていると仏教では考えました」「仏教は、無我ではなく非我を説いて真の自己に目覚めることを強調した」・・・・・・。
生涯かけての情熱と求道の姿勢を「佛教語大辞典の原稿(200字詰め)4万枚、3万語の行方不明事件を乗り越え」「佛教語大辞典と中村元選集の刊行」「比較思想の提唱」「東方研究会を母体として1973年公開講座=東方学院の開始」「足利学校の24代目の校長にも」など、息づかいが聞こえてくるように、植木さんはエピソードも交えて描いている。
