ダ・ヴィンチ・コード.jpg社会現象と思われるほどの作品――。今ごろになって手にとった。
キリスト教文化ということと、ロゴスの文化という異文化の世界を歩いた感がする。「聖杯伝説」「ダ・ヴィンチのモナリザと最後の晩餐の謎解き」「神の子キリストと人間キリスト」「マグダラのマリア」「シオン修道会、テンプル騎士団、サングリアル文書」――史実と巧妙なミステリーがどこで交わるかはよくわからないが、暗号、パズル、象徴、筋立ての綿密さ自体がロゴスの文化だ。

ミステリー好きの私としては、登場人物の心象風景、心情に迫りながら描く日本の世界との違いを感じた。


日・中・韓のナショナリズム.jpg「東アジア共同体の道」の副題がついている。
ナショナル・アイデンティティの確立は、グローバル21世紀の課題だが、それを越えた共通のアジア・アイデンティティ、未来のアジア構想「アジア共同の家(アジアン・コモンハウス)」を提唱している。「テリトリー・ゲーム」から「ウェルス・ゲーム」、そして「21世紀のアイデンティティ・ゲーム」の時代の次が、組み立てられなくてはならないと、次代を眺望している。

思想・イデオロギーの諸テーマは、時に「神学論争」などといわれて、私自身、失笑することもしばしばだが、判りやすく語れるかどうか――力量がこれほどあらわになるものはない。こんなにも明確にやさしく力みなく語れる松本さんは卓越した思想家だ。

勿論、論争の激しさをたたえていることも大変な魅力だ。


永田町の回転ずしはなぜ二度回らないのか.jpg政治家の名言・格言に学ぶ最強の処世術100と副題がついている。「母屋で粥をすすっているのに、離れでは子供がスキヤキを食っている(塩川正十郎)」も名文句だが、それを評する伊藤惇夫さんの「"人生のロスタイム"で逆転のトライをあげたような感じ」との言も味わいがある。文章がいいのだ。
「幸せは長く、演説は短く」「サルは木から落ちてもサルだが、政治家は選挙に落ちたらただの人」「田圃と女房と選挙の票は、一度貸したら戻ってこない」

「やはり野に置けレンゲ草」「天の声にも、たまには変な声がある」「政治家は次の時代を考え、政治屋は次の選挙を考える」「理屈は後から貨車で来る」「声なき声を聞け」「政界は欲望と嫉妬の海だ」「政策に上下なく、酒席に上下あり」・・・・・・。話したその人の心情が伝わるようだ。「いると邪魔、いないと寂しい記者と珍念」が太田昭宏提供として出ている。

田中角栄の「政治は冠婚葬祭だ」を冒頭におき、石橋湛山の「人が国家を形づくり国民として団結するのは、人類として個人として人間として生きるためである」を100言目のトリにしているのはいい。バラバラになりがちなこうした本だけに、その完成度の高さを示している。


060526 2005年体制の誕生.jpg昨年の9・11総選挙に現れたものは何か。郵政民営化は「口利き政治」に終止符をうち、55年体制の終わりを告げる次代の幕開けだと田中直毅さんはいう。
「一気通貫となった政策・政党・首相候補」「既得権益の擁護を国益の名を借りて語る政治家の胡散臭さ」「小泉の政府赤字はへらし、政府保証の傘をすぼれる断固たる姿勢」「55年体制の崩れは(1)国際関係と国内関係の切り分け(2)「やさしい保守政治」の政策体系(3)先送り構造――の3つの耐久年限が切れたことによる」「次世代に厳しい負担先送りの仕組みと少子化」

「既得権益の擁護(弱者保護も含む)は改革ではない」「人口減少社会での持続性確保こそ現在の主要命題」「プライマリー・バランス回復の為には非効率は公共部門の骨組みにメス」「首尾一貫性のある社会保障システムづくり」――まさに、これらは55年体制の設計がきわめて不都合となり、改革を迫られているということになる。

そして、日韓、日中を論じて、世界を支えるシステムを日米同盟でいかにしてつくりあげるかは、金融も経済も安保も再位置付けが行われようとしていると指摘されている。有意義な著である。


060519「悪魔の種子」.jpg内田康夫さんの浅見光彦99番目の作品。幻冬舎創立11周年記念特別作品。
秋田県西馬音内盆踊りの最中、茨城県農業研究所に勤務する男がヨロヨロとした足取りで踊りの列へ入り死亡する。また霞ヶ浦で長岡農業研究所勤務の男の溺死体が発見される。「花粉症緩和米」開発とその実験田にからむ連続殺人事件に、浅見光彦がしなやかな思考で挑む。

神でさえしなかった新種作り(神の領域)に、「自然の摂理に逆らわない方がいい」と思いつつ挑む人間の業が、事件を生む。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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