異形の維新史.jpg

面白いという以上に、凄みのある本だ。それは維新という未曾有の激動の現実自体が凄まじいものであったということだ。歴史はともすると濁液の上ずみ液を描写するが、その裂け目下の現場には「異形の人間」「異常な興奮状態が生み出した理屈を超えた欲望、冷酷非道の生身の人間の性(さが)が露出する。それを幕末、明治初期の異形の維新史として、しかも文献、史実をガッチリ踏まえて重厚に描き出している。現実の生々しさ、人間の破天荒を突きつけられ、圧倒される。


開国の方針を決め条約の勅許を得ようとする幕府、それに対して攘夷を掲げた孝明天皇下の公卿の欲と権力闘争、狼狽ぶりのなかで生じた悲劇を描く「薔薇の武士」、戊辰戦争の官軍に先遣隊として使われたヤクザの暴走と彼らに襲われた名家夫人を描く「軍師の奥方」、岩倉使節団の実態とその船上で行われた「船中裁判」、明治初頭の神仏混淆の社寺から仏教色を払拭しようとした突拍子もない廃仏毀釈の狂騒を描いた「木像流血」、毒婦・高橋お伝の解剖と風評を描く「名器伝説」など7編。いずれもその現実と現場が鮮やかに迫ってくる。



四次元時計は狂わない.jpg
「文藝春秋」の巻頭随筆の約3年分をまとめたものだが、驚くことがいくつもある。まず、立花隆さんの「同時代を撃つ」をいつも読んできた者として、本書は毎月の巻頭随筆でありながら時代、日時を超えているということだ。それに厳しい指摘というより「日本はそれほどお先真っ暗ではない」「日本はまだまだいける」というポジティブな話が続くこと。サイエンスの現在と未来が深く食い込むように語られること。今の話題が、太古の歴史から、宇宙から語られるということ。常に現場に行き、人に会っての思索が開示されること、等々だ。圧倒的な知識と智恵と、境地を感じる。情けないほどに政治経済などはもうとっくに置いてゆかれている。


「21世紀 文明の逆説」が副題だ。「PTG第二世代へ」「ひこばえ」「LNGの底力」「来るべき大革命(夢の光・X線自由電子レーザー)」「百億年に一秒しか狂わない四次元時計」「ベトナム(戦争)の真実」「大丸有(大手町、丸の内、有楽町)と巨神兵」「危険なメソッド(フロイト、ユング、ザビーナ)」「失われた密約(竹島密約)」「黒潮町長の執念」「ツングースカの謎」「有機合成新時代」「出雲大社詣」「麻酔とボーイング787」「アイヒマンは凡人だったか(ハンナ・アーレント)」「仏頭の来歴(大化の改新、蘇我入鹿、天智・天武・持統天皇)」「古代史のなかの埼玉(雄略天皇、鉄技術)」「クリミア戦争を覚えているか」・・・・・・。まさに「知の巨人」だが、淡々と、そして凄い。


窓から逃げた100歳老人.jpg

100歳の誕生日に老人ホームから逃げ出した主人公、アラン・カールソンは、ひょんなことからギャング団の巨額の大金の入ったスーツケースを奪ってしまう。追手は増えていく。しかしアランは、出会う人間を次々と仲間に入れてしまう(近隣の鼻つまみ者ユーリウス・ヨンソンとか、ホットドッグ屋のベニー・ユングベリとか、その兄ボッセ・ユングベリとか、湖畔農場で暮らす赤毛女性ベッピンとか)。そればかりか、その大金をもっていた犯罪組織の親分や、象ソニアまでもだ。奇想天外、ハチャメチャ、デタラメな珍道中コメディだ。


しかもこの100歳のアランという男の人生がハチャメチャ。20世紀の歴史的事件に全部といっていいほどからんでいるという。その人生紹介が本書の3分の1位を占める。爆弾づくりの専門家として、フランコ将軍、トルーマン、スターリン、毛沢東、ド・ゴール、チャーチル、ジョンソン、ニクソン、フォード、ブレジネフ。たとえばSALTⅡなどもだ。


柳瀬さんは、「訳者あとがき」で「すばらしき出鱈目小説」と題し、「最も無駄になった一日は笑うことのなかった日である」という警句を紹介している。作者はスウェーデンの人。全世界で800万部を突破したという。


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11月1日、奈良県に行き、大規模な土砂災害の防災対策、飛鳥・奈良時代の歴史・文化を活かしたまちづくりについて、視察、意見交換しました。


まず土砂災害。今年も広島などで多くの豪雨災害がありましたが、3年前の平成23年8月、紀伊半島を桁違いの豪雨が襲いました。台風12号により5日間降り続いた雨は、紀伊半島山間部の広い範囲で1000mmを超え(2000mmを超えたところもあります)、多くの山の斜面で深層崩壊(地盤の深い層から根こそぎ崩れる現象)が発生。大量の土砂が集落や川に襲いかかりました。その量たるや、なんと約1億m3。東京ドーム約80杯分で、戦後最大規模です。道路は至るところで寸断されて多くの集落が孤立。土砂が川や渓流を塞いだところでは、天然ダム(河道閉塞)が数多くできました。それが決壊すると下流で二次災害が起こるため、国交省が排水路や砂防堰堤を整備していますが、今でも雨が降ると土砂が流れ込み、その対策は難工事です。


この日は五條市長、十津川村長、野迫川(のせがわ)村長、天川(てんかわ)村長と意見交換。災害当時の生々しい被災状況やご苦労をお聞きし、復旧に向けた要請を受けました。「今も大雨のたびに災害が起きないか心配している」「土砂を取っても取っても次々と流れてくる」「森林を守るために地域に住み続けたい。国交省のこれまでの取組に感謝しており、引き続き復興を支援してほしい」「災害でも孤立しないよう"命の道"である国道168号の整備を」――砂防工事には時間がかかりますが、対策に全力を尽くします。


そして歴史まちづくりについて。明日香村では、森本晃司元建設大臣(地元でボランティアガイドとしてご活躍)や森川裕一村長に案内していただきました。明日香村は約1400~1300年前の西暦600年代に国の都が置かれたところ。聖徳太子や推古天皇、大化の改新や壬申の乱など、数々の歴史の舞台となり、万葉集にも歌われた自然と景観が残っています。その"日本人の心のふるさと"とも言うべき歴史的風土を守るため、昭和55年に制定された明日香特別措置法で村全体の開発が制限されています。


その効果を示すように、実際に村に入るなり景観は一変。懐かしい田園風景が広がり、建物も低く抑えられ、屋根の形や瓦の色も統一されています。村に一つあるセブンイレブンもグレーの瓦屋根で、落ち着いた雰囲気です。古代のロマンを守るために続けられてきた努力が、まちづくりに結実していることを実感しました。


その後、奈良市へ移動。車中からも荒井正吾知事から道路整備やまちづくり、観光などの要望を受け、さらに復元が進められている奈良時代の都、平常宮跡や大極殿等を視察しました。


古代の歴史と文化の魅力を生み出すよう努力していることを実感。観光庁や公園整備を担当している私にとって有意義な視察となりました。

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ブレる日本政治.jpg

現場の声を大事にし、「ジャーナリズムは権力を批判するのが仕事だ」という鈴木さんが、安倍政権と政党に歯に衣着せぬ批評を展開する。フランスの哲学者ベルクソンは「問題は正しく提起されたときにそれ自体が解決である」といったが、何事も論議がまともに行われて熟度のある問題提起がされることが大切だ。そのためには視野は360度にわたることともに、三次元、四次元の論議ということだろう。


本書は「安倍政権の5大問題」「世界から見た安倍外交」「安倍政権の未来」の三章からなるが、あえて問題をぶつけようと、インコースへシュート、アウトコースへスライダーと多彩な球を投げているように思う。その厳しい攻めを受けてキチッと打つのが政権というものだろう。


「安倍総理はリアリスト」などの人物評も随所に出てくるが、鈴木さんの人間への温かさを私は感ずる。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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