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NO.201 小中不登校35万人と過去最高/いじめも含め早期発見、早期対応を

2025年12月 5日

不登校児童生徒数.jpg「小中学生の不登校35万人、いじめ76万人でいずれも過去最高」――。文部科学省が、1029日に発表した「問題行動・不登校調査」の結果だ。不登校は、病気や経済的理由を除いて、年30日以上登校していない状況を指す。いじめは当事者が「心身の苦痛」を感じればいじめと定義される件数で、数も多くなっている。一方、生命や心身への被害などを含む「重大事態」は、1405件となっており、これも過去最多だ。少子化が急速に進んでいるなかで、不登校やいじめが増加していることに注視しなければならない。家庭・地域・友人との人間関係が希薄化する今の社会、さらにデジタル化が進み情報洪水、バーチャルが加速化する今の社会――。それは「教育」という観点から見れば、なかなか人間教育が難しい環境だといえる。その教育の中心拠点となっている学校教育に、国民あげての支援が不可欠となっている。

2024年度の小中学生の不登校は353970人で過去最多となった。内訳は小学生137700(前年度比5.6%増)、中学生は216266(0.1%増)となっており、小中学生全体の3.9%を占めている。クラスで1人いることになり、憂慮すべき事態と言える。12年連続の増加で、この10年で急増、コロナ禍もあって、5年前から2倍近くなっている。ただ2024年度で注目すべきは、急増の度合が減ったというデータとなっている点だ。 2022年度が前年度比22.1%増、2023年度が15.9%増であったのが、2024年度は2.2%となり、前年度から低下した。新規不登校児童生徒数も不登校継続率も前年度から低下している。国が進めてきた「相談体制の拡充」「居場所づくり」など防止の取り組みが奏功していると見るならば、その対策の手の更なる拡充・強化が求められる。

いじめの認知件数.jpg

なぜ不登校になるのか。調査によると「学校生活にやる気が出ない30.1%」「生活リズムの不調25%」「不安・抑うつ24.3%」「学業の不信や頻繁な宿題15.6%」「友人関係の問題(いじめを除く)13.2%」「親子関係の問題12.6%」などが上げられている。かつては「やる気が出ない」「生活リズムの不調」などは学校に行かない理由にならないと思われがちだが、コロナ禍等を経た社会・教育の意識変化がある。それは「無理に学校に行かなくてもよい」という考え方が広がっていることだという。 2017年施行の「教育機会確保法」で、フリースクールなど学校以外での学びの場が社会全体に浸透したことや、コロナ禍での一斉休校などで保護者や児童生徒の登校に対する意識の変化が加速されたようだ。

「相談体制の拡充」「居場所づくり」は最も重要な対策だ。「孤立」「孤独」にどう対処するかだ。文科省は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策『COCOLOプラン』」を進めている。不登校の児童生徒の学びを確保するため、「校内教育支援センター(スペシャルサポートルームSSR)をつくること、学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)を設置すること」などを柱とする。校内に置くSSRは通常の教室ではなく、リラックスして利用できる空き室など工夫を凝らし、ここに通うと「出席」になる仕組みで、全国の小中58.7%の学校で設置されている。学びの多様化学校も今、全国で59校に広がり、興味や関心に応じた柔軟な学びを行っている。また、不登校になる前に「チーム学校」による早期支援にも力を注ぐ。心の小さなSOSを見逃さない早期発見、早期支援の方策だ。社会が変化し、人間関係が希薄化している今、あらゆる対策・支援を総動員することが大切だ。

いじめの重大事態の発生件数.jpg

いじめは、小中高及び特別支援学校での認知件数が2024年度、769022件となった。従来は外に出てこなかったいじめの初期段階のものも含めて積極的に認知し、本人が「心身の苦痛」を感じると思う全てを認知した件数だ。重大事態の発生件数は1405件。生命・心身または財産に重大な被害が生じた疑いのものと、「いじめで不登校」になる疑いがあるものの件数だ。重大事態1405件のうち490件(34.9%)は、「いじめとして認知していなかった」もので、ここは大きな課題である。加えて昨今は、SNS等で悪口を書き込まれるなど、いじめ被害が外から見えなくなっているという。何よりもいじめの重篤化を予防するには早期発見、早期対応が重要だ。

人間関係が希薄化し、SNS・デジタル社会が加速している今、不登校・いじめ等の学校を取り巻く環境は大きく変化している。教員不足・過重負担問題も含め、学校への全方位的かつ粘り強い総合的支援が喫緊の課題となっている。

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