政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.204 押し寄せるインフラ老朽化の波/技術革新と人不足等に万全期せ!
先日、大阪新御堂筋で巨大なパイプが地上13mも突出する事故に驚いた。昨年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故や4月の京都市の配水管破損・漏水事故は記憶に新しいが、今年1月、新潟市で道路陥没事故(幅・長さ5m、深さ3.5m)が起きている。読売新聞の自治体アンケートでは全国で毎年1万件の道路陥没が起きているが、その74%が予算不足で調査自体が未実施だったという。道路、橋梁、トンネル、上下水道などインフラの老朽化の波が一気に押し寄せているのだ。
わが国のインフラは、1960年代から70年代の高度成長期に集中して整備された。橋は全国で約73万橋あるが、ピークの当時、毎年1万もの橋が建設(現在は1000程度)された。それが今、建設後50年を超えることになる。2023年は全国で約37%が50年を経過したものだが、2040年には約75%になる。現在、補修等が必要なものは5.5万橋(2023年度末時点)となっている。
下水道の管路は全国で約50万km、50年を経過するものは、2023年度末で約3.7万km(7%)、2040年には約20万km(34%)。昨年、全国特別重点調査をして約300kmを対策が必要と判定、現在、現場で対策を施しているところだ。2040年には50年経過するインフラは、トンネルで52%、水門などの河川管理施設で65%、上水道が41%、港湾施設で68%に及ぶ。鉄道も民間主体となるが、鉄路補修・保線は安全の為に常に心懸ける重要案件であり、特に地方鉄道においては老朽化が顕著で、安全維持は綱渡りの状態という。さらに地方自治体等のハコモノでも学校や体育館、医療施設等において老朽化が進み、補修・改修に苦慮している。
2012年12月、私は国土交通大臣になった。その3週間前、笹子トンネルの天井板落下事故が発生、 9人の尊い命が犠牲になった。米国では1930年代、ニューディール政策等で造られた橋や道路が、50年経過して1980年代に壊れ、「荒廃するアメリカ」といわれた。これらを受け「今こそ、本格的な老朽化対策、メンテナンスに舵を切れ」と、2013年を「社会資本メンテナンス元年」と名付け、「防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化」に力を入れた。「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、5年ごとの点検を義務付け、メンテナンスサイクルを回して長寿命化を図る仕組みを構築した。そして不具合が生じてから直す「事後保全」から、「予防保全」に転換した。さらにその後、メンテナンスの生産性向上の加速化や集約・再編等によるインフラストックの適正化に注力してきた。
しかしそれに対応する自治体等の現場は疲弊している。過疎化が進む地方では、人口減少は財政を圧迫し、深刻な技術系職員不足に直面している。市町村における技術系職員数は5人以下が48%、1人もいない所が25%だという。予防保全、インフラ被害に対応する予算と人が足りないのが現状だ。国交省は今、「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」を打ち出している。複数自治体のインフラや複数分野のインフラを群として捉え、市町村や企業が広域連携し、効率的、効果的にマネジメントしていくことだ。費用対効果も高まり、ノウハウやアイディアも共有できる。現場での先行事例を示し、拡大してほしい。
技術開発とデジタル化の推進も緊要だ。AI、ロボット、ドローンなどの新技術の導入を更に加速したい。ドローンによる橋や崩落現場の点検は進んでいるし、車に搭載したAI機器等による道路損傷・空洞化の判定システムも更に進めたい。かつて都内で下水道のリニューアルのできる革新的な技術「SPR工法」を視察したが、世界に誇る技術に感動した。あらゆる面で、新技術の研究・開発を官民あげて推進することが、現場の職員不足、技術者不足を補い、老朽化対策を進める強力な武器となる。
「群マネ」を志向するなか、インフラをどう維持・再編していくかという「選択」の決断も求められている。造るだけではなく、重要度に基づく「橋梁のトリアージ」を実施している自治体もある。人口減で利用者が少なく、代替手段がある場合は、撤去や統合を進める「省インフラ」を進める視点だ。これからの国土づくりは「コンパクト+ネットワーク」だと2014年に「国土のグランドデザイン2050」で私は発表した。コンパクトシティの構想のなかで、「どのようにインフラを次世代に渡すか」を本格的に考えることが重要だ。インフラが一斉に50年を経過していく今、生活の基盤、豊かさの基盤となるインフラ整備と老朽化対策・メンテナンスにもっともっと力を注ぐべきだと思う。そのための国の積極的姿勢と国民(地域)的合意、そして官民一体の協力を心から願う。































