政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.123 増加する児童虐待事件/児童相談所・市町村の体制を強く深く!
東京・目黒区で3月、親から虐待を受けた5歳の女児(当時)が死亡した。「あしたはできるようにするから」「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」とノートに書きつづった言葉は、あまりにも痛々しい。朝4時に起きてひらがなも覚えさせ、勉強ができないと食事も満足に与えず、暴行を繰り返したという。両親は、保護責任者遺棄致死罪で警視庁に逮捕されたが、児童虐待事件は「二度と繰り返してはならない」などという決意だけでは解決できない根の深い難しい問題だ。
児童虐待は増えている。児童相談所が受けた相談対応件数は、2016年度で12万2575件に及び、2000年度に比べて約7倍、最近は通報しやすくなったこともあるが、間違いなく急増している。相談経路は家族(8%)、近隣知人(14%)、警察等(45%)、学校等(7%)。児童虐待による死亡者も2010年度に98人、2015年度に84人、なかでもきわめて悲しいことだが、ゼロ歳児死亡が約半分、とくに「ゼロ日児(生まれた日に死亡)」が2割に及ぶ。
背景には貧困、家族関係の変貌、就労の変化、外国人等ニューカマーの増加、ストレス社会等々、広くて重苦しい問題がある。現代社会の歪みだ。「児童虐待から考える」の著者・杉山春氏によれば、「児童虐待」の現場を歩いて見ると、社会の変貌や家族の変容が明確に顕れ、投影されているという。「貧困とその連鎖」「母子家庭の貧困の増加と根深さ」「安定した就労の困難さ」「家族としての凝集力の弱体化」「孤立化の進行」「離婚の増加」「性行動の活発化・性産業への一般女性の安き参入」「ネット、SNS等メディアの変化」「外国人女性等のニューカマーの増加」「ストレス過多の社会・人間関係」・・・・・・。多くの複合的要因がある。さらにそうした社会で生きる親の側にも「育てる力が乏しい親、それを支えられない社会」「助けを求めることを知らない親たち」「親としての過剰な『生真面目さ』」「"育児は母親だけの義務"という古い規範への過剰な従属」など、自らを追い詰める要因が見られ、かつ親自身が子どもの頃に虐待やネグレクトを受けた者が多くいる。八方ふさがりの行き詰まりだ。「残酷な親」とイメージするのは、表面的な一面にしか過ぎないという。
NO.122 無関心・無知・ポピュラリズムを脱せよ/多様で自在のスポーツ・文化の力は大
大災害の多い大変な夏となった。気象の変化は明らかで、今年の一過性ととらえてはならない。そのことは、国民一人一人が実感するところまで来た。災害は多く、異常気象のなかで、洪水に対する「タイムライン」「ハザードマップ」「マイタイムライン」のより具体的な対策が急務であり、私自身、「命を守る公明党」として、従来よりレベルを上げた防災・減災対策、「防災・減災ニューディール」に力を注いでいる。
この夏、もう一つ実感したのが、「スポーツの力」だ。アジア大会も盛り上がっているが、なんといっても100回を記念しての高校野球のインパクトは大きかった。決勝戦、横綱・大阪桐蔭に挑むのが、秋田の公立高校・金足農業だった。対照的でともに素晴らしかった。秋田や大阪はもとよりだが、全国的に近年、これだけ盛り上がった高校野球大会はなかったのではないか。「勢いのある国づくり」が大事だが、スポーツ・文化・芸術の力は大きい。
今年の8.15終戦記念日。平成最後の終戦記念日となった。街頭に立った私は、「夏空白花」(須賀しのぶ著)を引いて話した。じつは昭和20年8月15日の翌日、早くも戦争で中断していた高校野球を復活させようと志した人がいた。政治的にも、経済的にも、悲惨な状況にあった国民にも、高校野球など今やるべき時ではない。野球場は芋づくりの場と化しているではないか。多くの激しい抵抗があった。しかし、翌年の8月15日のその日、ついに復活。青空に白いユニフォームが、花がパッと咲いたように開会式が行われた。平和とは庶民の喜びの花が咲くことだ。桜梅桃李、それぞれの持ち味を発揮すること、自在に自由に多様性を認めて花を咲かせることだ。
世界は今、大きな構造変化にさらされている。1つは難民・移民の問題、もう1つは先進諸国で顕著になっている格差の広がりだ。英国のEU離脱もEU諸国でのいわゆる右派の台頭、トランプ大統領誕生も、そうした構造変化が社会を覆い、不安・不満が充満していることが背景にある。
NO.121 大地震、大水害、高潮など大災害/「ステージが変わった」――腹の決まった防災対策を!
北海道胆振東部地震、台風21号によりお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災されたすべての方々に心よりお見舞いを申し上げます。
大災害が起きる大変な夏となった。6月には大阪北部地震、7月初めには西日本豪雨、9月初めに台風21号、そして9月6日には平成30年北海道胆振東部地震。いずれも近年見られなかった巨大災害、しかも様相が全く異なっている。それに加えて、連日35度を超える暑さで、熱中症から死亡する人まで出る厳しい自然の大変化。まさに災害列島日本であることを見せつけられた夏となった。徹底したハード、ソフトの対策と、今までとはステージを一段階アップした対策、予算組み、避難現場で逃げる"行動回路"を築き上げなければならない。
6日未明に発生した北海道胆振東部地震は、震度7を記録した。震度7は北海道では初めてのことで、厚真町では山体が崩れるような大規模な土砂崩れが発生、北海道全体が停電するという"ブラックアウト"が起き、札幌市内では液状化現象による被害が発生した。まずは人命救助、そして生活インフラの復旧、新千歳空港をはじめとしての交通網復旧に全力をあげる。大阪北部地震の様相とは違い、広大な地方における直下地震の恐ろしさ、地盤が、押されて上下にずれる「逆断層型」の直下地震の恐ろしさだ。
9月初頭の台風21号は、「強風」「高潮」。ルートは昭和36年の第2室戸台風と全くといっていいほど酷似し、強い勢力を維持したまま四国、関西を直撃した。強風は車も看板、トタン等をなぎ倒し、大阪府の民家・マンションの窓ガラスを軒並み破り、ビル風等の地形もあって、なんと瞬間風速は80m/sを記録した所もあったという。いよいよ"スーパータイフーン"も想定しなければならなくなった。高潮は通常より3mも上昇し、関西空港を水浸しとし、連絡橋にタンカーが激突、復旧は簡単ではない。東京湾でも、羽田空港や荒川・江戸川等の高潮被害は深刻に想定しなければならない。通常より3mも海面が上昇するというのはゼロメートル地帯が広がる東京下町では大変なことだ。
NO.120 豪雨の激甚化への対応強化を/マイ・タイムラインの行動回路急げ!
7月の西日本豪雨はきわめて厳しい大災害となった。「阪神淡路大震災、東日本大震災に次ぐ、平成の三大災害だという認識で対応すべきだ」――当初から私はそう言ってきた。現実に被害は甚大だ。8月2日現在、死者220人、行方不明者9人、住宅被害47074棟(うち全壊5074棟)、土砂災害1518件、河川堤防の決壊37件。きわめて厳しい状況のなか、捜索活動、救援活動が続き、行政・ボランティア等の力が猛暑のなかで発揮されている。一刻も早い復旧・生活再建に努めたい。
今回のような雨の降り方はかつてなかった。「特別警報」は、私が国交大臣の時、法改正によってつくった制度だが、長崎県から岐阜県まで西日本を縦断してなんと11府県に「特別警報」が出された。つくられた当時から「50年に1度、いまだ遭遇してないような豪雨」を「特別警報」としたが、1年に1回1県で起きる位が昨年までのことだ。今回はまさに広域、しかもどの府県も総雨量が400mmを超える豪雨となり、高知県馬路村では1800mm超、岐阜県郡上市では1200mm超を記録するすさまじい降り方だ。「雨の降り方が激甚化・集中化・局地化している」と警告してきた私だが、「線状降水帯」「バックビルディング現象」の広域化にも備えることが急務となってきた。
広島、岡山、愛媛でとくに被害が大きかった。しかも広島は「土砂崩れ」、岡山は「破堤しての大洪水(天井川であること、バックウォーター現象が起きたこと)」、愛媛では「土砂崩れ」と「洪水」が顕著だ。広島では4年前に土砂災害があった安佐北・安佐南の両区を中心に砂防堰堤の整備を急ピッチで進めているが、今回は別の地域で豪雨に見舞われた。流木等も含め「透過型砂防堰堤」の建設が土石流の危険地域では一刻も早く必要となる。倉敷市では天井川のために水がはけず、家屋1階には土砂が考えられないほど入り込んだ。ここでは何といっても河川の水位を下げること、堤防を強化することだ。日本の河川工学では力ずくでなく「水をなだめる」ことを総合的に行う。「堤防を強化する」「川底を掘る」「川幅を広げる」「遊水池等へ逃がす」「ダムで貯水する」等の組み合わせだ。これを各河川について"異常な降水時代"であることを認識して、積極的に乗り出すことだ。今のダッシュが肝要だ。
今回、私がとくに主張しているキーワードは「タイムライン」と「マイ・タイムライン」だ。「タイムライン」は、避難の発令や仕方等を5日前、3日前、24時間前、6時間前・・・・・・と区切り、役所・警察・消防、学校・病院・老人ホーム等の福祉施設、鉄道・バス等の交通施設、企業・・・・・・などの関係者が事前に動くことを決めておくものだ。2012年10月、米ニューヨークにハリケーン・サンディーが襲いかかったが、これを採用したニューヨークは甚大な被害を免れた。それを教訓として私が国交大臣時代、まず東京の荒川からタイムラインを始めた。今や全国の国管理の河川109水系についてはこれができた。これからの問題は2つ。1つはタイムラインの参加機関を増やし厚くする。病院・介護施設・保育所などの弱者対応としてキメ細かいタイムラインの取り決めをすること。2つには、まだタイムラインが十分に出来ていない中山間地の中小河川の氾濫にどう備えるか(これは一気に増水し、氾濫し、流木が凶器となる)ということだ。その意味で、これを今年「タイムライン本格化の年」と定めて、各自治体と河川関係者が徹底してやることだ。
NO.119-2 南海地震の経済被害1240兆円/防災・減災対策の強化緊要
6月18日、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1、最大震度6弱の地震が発生した。5名の死者、400名を超える負傷者が出る大きな災害だ。これまで社会インフラの耐震化を進めてきたが、今回、改めて大都市における地震対策の重要性が認識された。特に、ブロック塀の脆弱さ、交通網遮断による通勤・帰宅困難者問題、水道・ガスなどの生活インフラの補強、そして密集市街地の火災対策だ。私はこれまで、国土交通大臣の時も含め、常に「防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化の強化」を主張し推進してきた。学校や公共施設の耐震化、都市の防災対策、津波に対する防潮堤や津波タワーをはじめ、あらゆる対策を進めてきたが、今回は改めて大都市地震対策の緊要性を突きつけられたと言えよう。
同じ6月、土木学会が衝撃的な報告書を出した。「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書(H30.6.7)」だ。「国難」をもたらす巨大災害の被害推計で、南海トラフ地震で20年間の経済被害を累計すると1,240兆円に及ぶ、との発表に多くの人が驚いたと思う。この報告書の冒頭部分では、1755年ポルトガルの首都を襲った「リスボン大地震」により国力が衰退し、そしてポルトガルの時代が終わった史実が記されている。日本は今、巨大災害に備えておかなければならない。日本がつぶれかねない。そういった危機感あふれる報告であった。
報告書は、「国難」と呼びうる致命的事態を回避し、巨大災害に遭遇してもその被害を回復可能な範囲にとどめうる対策、すなわち国土のレジリエンス確保方策を示そうとするものだ。対象災害は、首都直下地震、南海トラフ地震、三大湾の巨大高潮、三大都市圏の巨大洪水。その災害を軽減するための対策として、主に道路、河川、港湾、海岸のインフラ整備が挙げられている。今回の報告書の特徴は、「被害額として長期的な経済被害を推計」している点だ。