政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.102 ワーク・ライフ・バランスで生産性向上/働き方改革で人的資源の活用を

2017年2月24日

足立区視察②.jpg「一億総活躍社会」の実現が重要なテーマになっている。誰もが生きがいを持ってその能力を存分に発揮できる社会をつくることができれば、わが国が直面する人口減少・少子高齢化の課題克服にもつながる。

そのなかで大きな柱が、画一的な労働制度を見直して、一人ひとりの事情に応じた多様で柔軟な働き方を可能とする「働き方改革」だ。過酷な超過勤務が社会問題化している今、長時間労働を是正し、休暇も取れるゆとりある働き方を実現しなければならない。

そのためには、仕事と家庭・私生活が両立する「ワーク・ライフ・バランス」が大事だ。一部の企業や官公庁で取り組みが始まっているが、さらに社会全体に広がっていくよう、力を入れていかなければならない。

ワーク・ライフ・バランスに問題がある働き方が広がっているのは、終身雇用や新規学卒者一括採用など、わが国独特の雇用慣行が原因の一つとなっている。一度会社に就職したらその会社の中に一生があって、仕事をしながら経験を積んでいくことによって生産性が上がっていた時代が過去にはあった。しかし今、その成功体験が硬直的な雇用慣行となって、企業と労働者を縛ることになっている。企業が低収益に苦しむようになって不採算部門を抱えたとしても、解雇が制限されているために、能力が発揮されない余剰人員が生じてしまう。労働者も転職は高いリスクを伴うので、会社の経営が厳しくなれば、賃金抑制や長時間労働による労働強化も受け入れてしまう。ワーク・ライフ・バランスを失う状態になっても、会社にしがみつくことになっているのだ。

保育ママ視察①.jpg人は幸せを感じるときに効率よく仕事をし、高いパフォーマンスを発揮する。しかし、ワーク・ライフ・バランスを失った働き方が進むと、多様性や創意工夫を発揮したイノベーションが生まれにくくなる。その結果、企業の生産性は低下し、社会の成長力が弱まり、さらに経済が低迷していくという悪循環に陥ってしまう。非正規労働の拡大、低賃金の問題など、社会の格差が広がる原因にもなる。企業も労働者も、これまでの意識を捨てて改革に取り組まなければならない。

NO.101 「パリ協定」受け省エネ・再エネを推進/石炭の高効率化、水力は有力

2017年1月27日

2016年11月4日、「パリ協定」が発効された。1997年に採択された京都議定書に代わり、全ての国が温室効果ガス削減に取り組む国際的な枠組みだ。批准国が2020年以降の温室効果ガスの自主的削減目標を示し、世界全体で産業革命前からの世界平均気温の上昇幅を2度未満に抑えることをめざす。また、各国に自主的な温室効果ガス削減目標の提出と5年ごとの見直しを義務付け、さらに5年ごとに世界全体の取り組みを検証する仕組みも設けている。「パリ協定」上の目標として、日本は2030年度までに温室効果ガス排出を2013年度比で26%削減することを目標としている。さらに、5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」において、わが国として2050年度に80%削減との高い目標もかかげている。きわめて高いハードルだ。

新エネルギー②.jpg公明党はこれまでも、省エネ・再エネの最大限の導入、石炭火力の高効率化、原発に依存しない社会を目指す環境・エネルギー戦略を強く進めてきた。その大きな柱は3つだ。

第一に省エネだ。1979年の省エネ法制定当時から積極的に取り組んできたが、2013年の改定時にもよりきめ細かな対策となるよう力を注いできた。

第二は、石炭火力発電の高効率化だ。大事なベースロード電源として、世界最新鋭の技術の導入を促進し、発電効率の超高効率化を進めることだ。

第三は再エネの積極的導入だ。再エネ導入の際の課題を精査した結果、固定価格買取制度(FIT)の認定申請が太陽光に偏っていることや、国民負担が増大していること、電力システムの改革が必要なことなどが分かった。公明党としてFITの新認定制度を作るなどし、再エネの最大限の導入と国民負担抑制の両方が成り立つように制度全体を見直し、昨年4月に施行した。

日本のエネルギー計画は、2014年に政府は「第4次エネルギー基本計画」としてエネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)を策定した。エネルギーミックスにより、電力供給の電源構成は2013年度から2030年度に、LNG43%→27%、石油15%→3%、石炭30%→26%、原子力2%(原発事故前の2010年は25%あった)→20~22%、再エネ11%→22~24%とすることを目標としている。この中で、①省エネの推進によりエネルギー消費量を17%削減する②石炭火力発電の発電効率の向上を図る③再生エネルギーの発電量を2倍にする――の3点を挙げている。公明党の主張と同趣旨である。

まず、第一に大事なのは省エネの取り組みだ。製造業などの産業部門、流通・サービスなどの業務部門、自動車や交通の運輸部門、そして家庭部門の4部門に分け、それぞれの部門ごとにきめ細かな省エネ対策を行うとした。これにより、2030年度に2013年度比で17%の電力需要の削減をめざす。この目標を達成するには、オイルショック後並みの省エネ努力が必要となる。我が国としては、「省エネ先進国」として、さらにもう一段取り組みを進化させていかなければならない。

二つあるが、一つは、これまで製造業を中心に成果を上げてきた省エネ取り組みを、サービス業や流通業などに展開していくことだ。省エネ取り組みが停滞している事業者には、よりきめ細やかな指導をしていく。もう一つは、個々の事業者の取り組みだけではなく、複数の事業者の共同による省エネを積極的に支援する。例えば中小事業者の省エネポテンシャルを引き出していく。更には、家電の販売店、ハウスメーカーや地域の工務店などを通じた消費者への働きかけなど、幅広い関係者を巻き込んだ省エネの動きを作っていく必要がある。運輸部門では、荷主であるメーカーや小売業者が、運送事業者と協力・連携しながら省エネを進めていく仕組み作りをしていく。

第二に、ベースロード電源として重要な石炭火力発電の高効率化だ。日本のベースロード電源は石炭火力発電と原子力発電だったが、震災後、原子力発電は25%から2%程度になっている。ベースロード電源として石炭火力発電の重要度は増大している。

NO.100 渋滞解消に知恵と技術を総動員/首都圏などで数多く実例

2016年12月 9日

首都高①.jpg道路の渋滞解消は大きな課題だ。そう言われて久しい。はじめて日本を訪れて成田空港から東京都心に車で移動した海外のビジネスマンが最初に驚くのが、かつては、日本の高速道路の渋滞だった。現在でも、渋滞損失は移動時間の実に約4割を占めており、これは年間で約280万人分の労働力に匹敵という。また、渋滞による損失は年間12兆円に上るという試算もある。渋滞は、車を運転する者にストレスをもたらすだけでなく、経済的なロスがきわめて大きいのだ。こうした問題意識から、私は国土交通大臣在任中に、渋滞対策のための施策の幅を広げ、現場で強力に展開してきたが、このところ目に見えて成果が見えてきている。

例をあげれば、昨年3月に首都高速中央環状線の大橋~大井間の約9.4㎞が開通し、首都圏3環状の一つである中央環状線約47㎞が全通した。これにより、中央環状線内側の交通量が5%減少し、渋滞はなんと5割も減少した。周辺の交通の流れも大きく変わった。新宿から羽田空港への混雑時の所要時間は、40分から19分に大きく短縮し、所要時間のばらつきも30分から15分に半減した。これは、これまでのネットワーク整備のための投資の効果が、最後の1区間の追加投資で一気に花開いたものだ。今年2月の新東名高速いなさ~豊田東間の開通でも、東名高速の交通集中渋滞がほぼ解消された。

次の例は、東名高速海老名JCT(ジャンクション)と首都高速板橋JCTだ。海老名JCTは、東名高速と圏央道をつないでおり、首都圏でも有数の渋滞箇所として知られていた。通常、高速道路の合流地点では、本線が2車線であれば合流する側を1車線にして合流させる。しかし、交通量を分析して発想を転換し、合流する側を2車線、本線を1車線とすることとしたのだ。昨年10月28日の日中から車線の塗りかえ作業をし、翌々日30日から運用開始したところ、何と渋滞発生はなくなった。一方、板橋JCTも、中央環状線の内回り滝野川入口から5号線上りへの合流部分は、合流部の300メートル手前から2車線が1車線にせばめられ、渋滞発生ポイントとなっていた。そこで、今年の2月に1車線両側のゼブラゾーンを廃止し、合流部まで2車線とした。すると、合流部の渋滞は解消した。これらは、インフラの利用状況を分析して発想を転換し、車線の塗りかえという時間もコストもわずかな投資で劇的な改善が図られたものだ。

NO.99 進めよ「ケア・コンパクトシティ」/激変の社会に新しい都市づくり

2016年11月24日

20140708柏の葉街路.jpg「国土のグランドデザイン2050――対流促進型国土の形成」――。私が国土交通大臣として2年前、提起したものだ。そこには日本の未来への危機感があった。急激な人口減少・少子化があり、異次元の高齢化の進展がある。2025年には、団塊の世代がついに75歳以上になる。世界的な都市間競争の激化、切迫する巨大災害、エネルギー制約と環境問題、ICTの劇的な進歩など、大きな変化を想定しての国土づくり、都市づくりが必須となる。国土を構造的にどう作り直していくかということだ。

基本コンセプトとして示したのは「コンパクト+ネットワーク」だ。経済活動とともに医療、介護、子育て、商業、行政など生活に不可欠なサービスがサスティナブルに供給される。そのためには都市構造は最低限の密度を備えているべきだという至極もっともな考え方だ。多くの県庁所在都市では、過去40年の間に人口が約2割ふえた。しかし都市の面積は2倍になり、密度としては薄まっている。その人口がこれから減っていくから、密度は更に減り、都市構造を支えきれなくなる。しかも高齢者が多くなり、2025年には75歳以上が約2200万人、認知症の人は約700万にもなる。当然、生活に不可欠なサービスは、身近な所で提供されることが求められる。急性期の病気よりも、慢性疾患を多く抱えた高齢者が多くなることを考えれば、コンパクトシティはより望まれるといってよい。それなくしては「2025年、高齢者が医療・介護難民になる」という指摘もある。

勿論、コンパクトシティといっても周辺部が切り捨てられるのではない。農業や林業も重要だし、そこでの生活を考えると、各種サービスが提供される「小さな拠点」を整えることが重要だ。まちなか相互や小さな拠点との間を公共交通中心のネットワークでつなげば、生活の利便性を確保しながらサスティナブルな地域構造を実現できる。これがコンパクト+ネットワークの本質だ。そして、"地方消滅"といわれる危機を脱するために、個性あるコンパクトシティと隣接の個性あるコンパクトシティの連携を図る。そこに違いがあるからこそ"対流"が起きる。地域が活性化するよう連携革命、交流革命がダイナミックに行われるようにしたい。それが「対流促進型国土形成」だ。

この「国土のグランドデザイン2050」を世に出して、2年以上経った。コンパクト+ネットワークのコンセプトへの理解が広がり、地方自治の現場で着実に仕事を進めてくれている。約300の市町村でコンパクトシティ構造に誘導するための計画づくりを進めていると聞く。

NO.98 洪水、防災対策の強化が急務/台風・降雨は明らかに変化

2016年10月19日

雨の降り方がおかしい。台風の動きがおかしい。雨は間違いなく局地化・集中化・激甚化しているが、今年は更におかしくなっている。台風7号、9号、10号、11号は、今まで太平洋から直撃したことのない北海道、東北(とくに岩手県)を暴風域を伴ったままで襲い、多くの死傷者、被害をもたらした。年に3つの台風が北海道に上陸することも、東北地方の太平洋側に上陸することも、気象庁の統計開始以来、初めての出来事だ。台風16号は九州に上陸して東に進み、太平洋沿いに大雨を降らした。地球温暖化が原因とは断定できないが、日本が気候変動に見舞われ、年間降水量の少ない北海道(オホーツク地域では全国平均1,600㎜に比して800㎜)でも、全国並みの水防災対策が必要となってきたと捉えるべきだろう。

常総②.jpg一昨年8月の広島の土砂災害や、昨年9月の関東・東北豪雨(鬼怒川等の氾濫)等を踏まえ、国土交通大臣であった私は、新たなステージに立っての一段と強い水防災対策に取り組んできた。

対策はハード対策とソフト対策の両方だ。ハード対策としては、堤防整備・河道掘削等の流下能力向上対策がまず大事になる。河川のコントロールは、「川幅を広げる」「川底を掘る」「堤防を上げる」「遊水池等に逃がす」「ダムで調節する」等の組み合わせによって行う。今回の北海道を見ても、これだけの豪雨が集中するとなると、堤防や遊水池整備など、従来とは違った対策が必要だ。さらに、浸透・パイピング対策、侵浸食・洗掘対策等を施すことだ。国土交通省は、こうしたハード対策として、優先的に対策が必要な国の河川約1,200kmについて、平成32年度を目途に、概ね5年間で整備することを決め、動いている。そして、「どこで何をやるか」を関係県市町村にも説明を行った。また、越水した場合に決壊までの時間を少しでも引き延ばし、避難の時間を確保するよう、堤防構造を工夫する対策を全国約1,800kmについて実施することとした。この対策も概ね5年間で実施する。私の地元にある荒川でも危機管理型ハード対策として堤防天端をアスファルト等で保護する保護対策や堤防裏法尻の補強の工事が開始されている。

次はソフト対策だ。考え方は「施設の能力には限界があり、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を変革し、社会全体で洪水氾濫に備えることだ。被害を軽減する、住民等の避難行動を支援する住民目線のソフト対策だ。まず、住民等の行動につながるリスク情報の周知が不可欠となる。各自治体のつくるハザードマップの改良や、立ち退き避難が必要となる家屋が流されるおそれが高い区域等の公表。さらに私が進めてきたタイムラインの策定だ。各関係機関とも連携して、「台風の3日前にはどう動く」「1日前にはどう動く」「12時間前にはどう動く」などという取り決めがタイムラインで、米国のハリケーン・サンディ以来、わが国でも取り入れてきたものだ。現在、国の河川の沿川730市町村のうち濃淡はあるにしろ589市町村で整備ができている。内容とスピードアップが大切だ。

伊豆大島③.JPGさらに避難行動のきっかけとなる情報をリアルタイムで提供する試みが始まった。あの地震の際の緊急地震速報の洪水版だ。水害リスクの高い地域を中心にしてスマートフォンに配信する試みだが、この9月から鬼怒川と肱川で始まった。また避難勧告の出し方、連携は首長が最も悩むところだ。気象庁や国土交通省と連携しなければ、その責任の重さから、ひとり首長だけでは決断ができない。もっともっと磨き上げる必要がある。

防災・減災、ハード対策・ソフト対策――雨の降り方は新たなステージに入ったと認識し、覚悟を決めた対策に踏み込む時だ。

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